「プリウス」は1年半! 人気車ばかりの大所帯、トヨタの最新納期情報
2023.03.08 デイリーコラムいまだ不透明な部品の供給問題
コロナ禍ではクルマのさまざまな素材、パーツ、ユニットなどの供給が滞り、クルマの生産に影響を与えている。一般の報道では「半導体の不足」とされるが、メーカーの開発者は「筆頭は半導体だが、不足する品目は多岐にわたる」と言う。
そのために国内の販売台数も影響を受けた。コロナ禍直前の2019年は、国内で約520万台の新車が販売されたが、2022年はその約80%の420万台にとどまる。
トヨタの国内販売台数も同様だ。2022年は軽自動車を含めて128万9132台(レクサスを含む)だから、2019年の161万0169台に比べると、ちょうど80%だ。
一方、スズキとダイハツは、両社とも87%で落ち込みが少ない。軽自動車は薄利多売の商品とあって、複数の車種で共通化できるパーツやユニットを多く使う。小型/普通車に比べて納期が全般的に短く、スズキとダイハツは軽自動車が中心だから、コロナ禍の影響も比較的小さかった。
そのために2022年は、国内で販売された新車の39%を軽自動車が占めた。2019年は37%だが、コロナ禍で小型/普通車が納期を遅らせた結果、軽自動車の販売比率が従来以上に高まった。
メーカーの開発者に半導体などの供給に関する今後の見通しを尋ねると、以下のように返答された。「新型コロナウイルス問題が終息に向かい、供給不足も解消されそうだが、実際は先行きが見えない。供給が平常に戻ったと思ったら、再び遅延することもあって安心できない」。
つらいのは小型/普通車が中心のトヨタで、販売店では「受注を停止している車種が増えて、時期によっては売るクルマがなくなる」という。
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受注停止中でも順番待ちは発生する
トヨタ車の納期を見ると、1年近くに達する車種が多い。そのような車種の受注をさらに続けると、納期が大幅に長引いてしまうから、仕方なく受注を停止させる。
また例えば1年後にフルモデルチェンジなどを控える車種では、納期が1年半に延びると、納車されるのは次期型になる。しかし1年後にフルモデルチェンジする新型車の内容や価格は確定していない。そうなると受注を停止せざるを得ない。
このような事情について、トヨタの販売店では以下のように述べた。「フルモデルチェンジを控えた『アルファード』は、2022年の中盤から受注を停止している。『ランドクルーザー』『ランドクルーザープラド』『カローラ クロス』なども同様に停止している」。
受注を停止すると、顧客の反応はどうか。「アルファードのように長期間にわたって受注を停止すると、お客さまはクルマを買う意欲を失ってしまう。これはコロナ禍が終息した後まで、新車の売れ行きに悪影響を与える。また受注を再開したら、注文をスグに入れてくれ、と希望されているお客さまも多い。つまり販売店では、すでに順番待ちができている。受注を再開しても、しばらくは順番を待つお客さまの納車が続くから、納期が本格的に短縮されるまでには時間を要する」。
主な車種の納期はどのような状態か。「『プリウス』は一般のお客さまが購入される2リッターエンジン車の場合、納期は1年半近くを要する。『クラウン』は意外に短く、売れ筋の2.5リッターハイブリッド車は約6カ月、2.4リッターターボハイブリッドが8カ月だ。『ノア/ヴォクシー』は、ノーマルエンジン車は約8カ月だが、ハイブリッド車は1年以上に達する。『シエンタ』は納期が落ち着き、ノーマルエンジン車なら約3カ月と短い。ハイブリッド車も6カ月に収まる」。設計の新しい車種でも、納期はさまざまだ。
以前から納期が安定して短い車種はあるか。「ダイハツ製OEM車の『ルーミー』と『パッソ』は、以前から納期が3カ月程度だ。遅延することは少ない。ただしダイハツ製OEM車でも、『ライズ』になると、ノーマルエンジン車が約6カ月でハイブリッド車は10カ月前後まで延びる」。
KINTOという手があるものの……
納期を短縮する妙案はないが、定額制カーリースの「KINTO」を使うと、車種によっては短くなる。例えばノアの納期は、前述のとおりノーマルエンジン車が8カ月でハイブリッド車は1年以上だが、KINTOなら1カ月半から2カ月だ。購入する場合に比べて、大幅に短縮できる。
その代わりKINTOでは、使用期間を満了したら、車両を必ず返却せねばならない。買い取って自分の所有にはできない。盲導犬を含めて動物も同乗させられず、走行距離が規定を超えると精算が発生する。納期は短いものの、KINTOはすべてのユーザーが使えるサービスではない。
そしてトヨタ車に限らず、今のように納期が遅延すると、ユーザーは乗り換えができないから1台の車両を長く使う。その結果、最初の登録から13年を超えると、自動車税や自動車重量税が増税されてしまうのだ。
古いクルマの増税は、もともと悪い制度だが、今は新車の納期が遅延している。コロナ禍による所得の減少で、新車に乗り換えられないユーザーも増えた。増税は今こそ廃止すべきだが、長年にわたって「税金を下げろ」と唱えてきた自動車工業会は、この増税については何も言わない。古いクルマを増税して新車が多く売れるなら、自動車業界のメリットになるからだ。
コロナ禍のためではあるものの、自動車メーカーが納期を遅延させ、なおかつ13年を超えた車両の増税を肯定したのでは、ユーザーに対して背信的な態度と受け取られても仕方がないだろう。
(文=渡辺陽一郎/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。 1985年に出版社に入社して、担当した雑誌が自動車の購入ガイド誌であった。そのために、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、車買取、カーリースなどの取材・編集経験は、約40年間に及ぶ。また編集長を約10年間務めた自動車雑誌も、購入ガイド誌であった。その過程では新車販売店、中古車販売店などの取材も行っており、新車、中古車を問わず、自動車販売に関する沿革も把握している。 クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。
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