新型「レクサスGX」から次期「トヨタ・ランドクルーザープラド」を予測する
2023.06.26 デイリーコラムひとまわり大きくなる!?
SUVの人気は世界的に高まり、日本車でも車種数が増えている。国内で販売される小型・普通乗用車の約30%をSUVが占めており、その割合はミニバンを上回る。
今のSUVは、大半がごく普通の乗用車と共通のプラットフォームを使うシティー派だ。後輪駆動をベースにしたプラットフォームと、悪路走破時の駆動力を高める副変速機を装着したオフロードSUVは少ない。
その悪路向けSUVの主力車種になる「ランドクルーザープラド」が、近々フルモデルチェンジを受ける。販売店に尋ねると「新型ランドクルーザープラドの情報については、メーカーから何も聞いていない」というが、2023年の10~12月には発表されそうだ。
新型ランドクルーザープラドは、どのようなクルマになるのか? それを知る有力な材料が、2023年6月9日に公開された新型「レクサスGX」だ。歴代GXは、日本では販売されない海外専用車だったが、ランドクルーザープラドをベースに開発されてきた。新型GXを見れば、新型ランドクルーザープラドの概要も想像できる。
新型GXのボディーサイズは、全長が4950mm、全幅は1980mm、全高は1870mmで、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2850mmだ。新型ランドクルーザープラドも、これに近いサイズになる。トヨタブランドだから、全長と全幅はレクサスGXよりも若干コンパクトになるだろうが、全長は4850mm以上で全幅も1900mmを超える。
3列目には要注意
注目されるのは2850mmのホイールベースだ。現行型の2790mmに比べて60mm長く、この数値はキングサイズとされる「ランドクルーザー」や「レクサスLX」と等しい。
つまり、以前のランドクルーザープラドは“ランドクルーザーのコンパクト版”だったが、新型は並列に近い関係になる。プラットフォームはレクサスGXやランドクルーザーと同じ「GA-F」で、ボディーの成り立ちも、ランドクルーザーのオーバーハング(ボディーの、ホイールより前または後に張り出した部分)を少し短く抑えたタイプだ。悪路を含めて運転のしやすさを向上させる。
外観デザインの基本はレクサスGXと共通だ。フロントマスクはランドクルーザーに近いが、フロントグリルのスリットは、現行型を踏襲して縦基調になる。レクサスGXと同じく角張った形状で、全幅もワイド化されて1900mmを超えるから存在感は強い。直線基調のボディーは、四隅の位置が分かりやすく、ボディーが大柄な割に運転しやすく感じるだろう。
インパネなど内装の質感は、レクサスGXほど豪華ではないが、水平基調で機能的だ。デコボコの激しい悪路で、ドライバーの体が左右に揺すられていても、正確に運転できるように配慮されている。
シートの配列は、現行型と同じく2列と3列を用意する。全長やホイールベースの拡大で室内空間も少し広がるが、現行型ランドクルーザープラドから新型に乗り換えるユーザーは3列目の居住性に注意したい。現行型では2列目にスライド機能が装着され、3列目に乗員が座る時には前側に寄せて、3列目の足元空間を拡大できた。
しかし新型レクサスGXおよび現行型ランドクルーザーとレクサスLXには、2列目のスライド機能が備わらない。従って2列目の足元空間を少し狭めて3列目のスペースを広げるという調節もできず、多人数乗車時の使い勝手が少し悪化する心配がある。確認しておきたいところだ。
非ハイブリッドでますますタフに
車両の性格は、現行型と同様に悪路指向を徹底的に強める。ランドクルーザープラドは、悪路で立ち往生すると乗員の生命が脅かされる過酷な環境でも使われるクルマだから、ハイブリッド車は用意しない。いかなる環境で、どのように使っても故障しないことが最優先とされ、エンジンは信頼性の高い従来型を踏襲する。つまり、2.7リッター直列4気筒ガソリンエンジンと、2.8リッター直列4気筒クリーンディーゼルターボエンジンの2種類だ。ちなみに現行型ランドクルーザーも、ハイブリッドは搭載していない。
駆動方式は、副変速機を装着したセンターデフ式フルタイム4WDだ。サスペンションは前輪が独立式のダブルウイッシュボーンで、後輪は車軸式の4リンクになる。この基本メカニズムはレクサスGXと共通だ。上級グレードには、現行型やレクサスGXと同様、電子制御式ショックアブソーバーを装着する可能性も高い。チューニングは前述のとおり悪路走破性を強める目的から、レクサスGXとは異なってくる。
現行型と同様、舗装路/悪路の走行状態に応じてスタビライザー(ボディーの傾き方を制御する足まわりのパーツ)の作動を制御する「KDSS」も継続採用される。これは「レクサスGXオーバートレイル」「ランドクルーザーGRスポーツ」と同様、電子制御式の「E-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System)」に進化することも考えられる。
ボディーの基本的なつくりはレクサスGXと同様だから、構造用接着剤も多用されてボディー剛性を高める。悪路走破力は現行型と同等に優れ、舗装路における走行安定性、ステアリング操作に対する車両の反応、乗り心地などを向上させる。
内容の割には“買い得”に
衝突被害軽減ブレーキをはじめとする安全装備と、運転支援機能の進化にも注目したい。それらは現行型ランドクルーザープラドにも採用されているが、新型では、自車が右左折する時でも直進車両や横断歩道上の歩行者を検知して、衝突被害軽減ブレーキを作動させる。
「プロアクティブドライビングアシスト」も備わり、先行車や周囲を走る自転車などに近づいた際は、自動的に減速するようになる。ドライバーがブレーキペダルを踏もうとした時には、絶妙なタイミングで軽い減速が開始される感覚だ。衝突被害軽減ブレーキの前段階として、ドライバーが危険な状況に近づくのを防ぐ。
なおランドクルーザープラドの価格だが、道路巡回車など業務用のニーズも多いから、ベーシックなグレードも用意されるはず。大幅な値上げにはならず、2.7リッターのガソリンエンジン車には、390万円前後で購入可能なグレードも設定される。ホイールベースを含めてプラットフォームがランドクルーザーと同じタイプに“上級化”されることも考えると、買い得度が強い。
2.8リッターのクリーンディーゼルターボ搭載車は、2.7リッターガソリンに比べて価格が60万円ほど高く、最上級グレードは約600万円に達する。つまり、新型ランドクルーザープラドの価格帯は400万~600万円で、ランドクルーザーは510万~800万円だから価格帯の一部は重複する。レクサスGXは最も安価なグレードでも800万円を超えるだろう。
販売店では新型ランドクルーザープラドについて以下のように述べている。
「受注が増えるのは必至で、既に付き合いのあるセールスマンに『注文が可能になったら速攻で入れてくれ』と頼んでいるお客さまも多い。抽選販売になるかもしれない」
購入したいなら、今から販売店に問い合わせておきたい。
(文=渡辺陽一郎/写真=峰 昌宏、トヨタ自動車/編集=関 顕也)

渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。 1985年に出版社に入社して、担当した雑誌が自動車の購入ガイド誌であった。そのために、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、車買取、カーリースなどの取材・編集経験は、約40年間に及ぶ。また編集長を約10年間務めた自動車雑誌も、購入ガイド誌であった。その過程では新車販売店、中古車販売店などの取材も行っており、新車、中古車を問わず、自動車販売に関する沿革も把握している。 クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。
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