トヨタ・ランドクルーザープラドTZ-G(4WD/6AT)
良心的なリファイン 2017.11.06 試乗記 トヨタの本格オフローダー「ランドクルーザープラド」がマイナーチェンジ。ただしその変化は、モデルライフ半ばの化粧直しだけにあらず。試乗してみると、走りにもランクルらしい改良の成果が表れていた。![]() |
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まるでスポーツカーのよう
現行プラドは今回で2度目のマイナーチェンジ。前回はディーゼル追加と同時に実施されたが、興味深いのは、その後のプラドも国内では売り上げの半数がガソリンということだ。
聞けば“ヨンク族”にはもちろんディーゼルが圧倒的人気でも、国内のプラドにはそれと同じくらい“高級3列シーター”としての需要があり、そこでは価格が手ごろなガソリンが好まれるとか。私はてっきり「いやもう8、9割がディーゼルっすよ!」だと思っていたのだが、聞いてみないと分からないものだ。
さて、今回のプレスリリースに記されるマイチェンの主な内容は、外観のリフレッシュと「Toyota Safety Sense P」の全車標準化の2つだが、厳密にはほかにも細かく改良されている。
たとえば、インテリアではナビが大画面化されたと同時にセンターパネルを刷新。副変速機の切り替えも、以前のシーソースイッチから、大型のダイヤル式に変わった。またステアリングホイールも新デザインである。外観は見るからに今風イケメン顔になったと同時に、立体的になったボンネットで車体前端の見切りも明らかに改善。さすがランクル一族だけに、いつものトヨタとはちがって(?)ひとつひとつにウンチクと良心がある。
走行メカは基本的に変更なしだが、ひとつだけ、マニアは見逃せない手直しが入った。それは今回試乗した最上級「TZ-G」限定で、リアにトルセンLSDがついたことだ。ちなみに、プラドのリアデフは全車に電動デフロックがオプション設定されるが、TZ-Gでもそれを選択するとトルセンLSDと置き換わる。
そのココロは「デフロックまでは必要なく、それなりのペースで走る林道や雪道でのトラクション性能の向上」だという。ご想像のとおり、今回は林道や雪道をブッ飛ばすことなんてことはできなかったが、ドライ舗装路でもトルセンLSDの効果を実感できた“気がした”のは事実である。
本領は悪路にあるプラドながら、舗装路を「コンフォート」モードで走ると「クラウン」のように快適だ。そして「スポーツS+」モードにすると、ほとんどロールしないまま曲がっていくが、そのときのリアからの“蹴り”が以前より強まったように感じた。その瞬間のプラドは、ちょっとした低重心スポーツカーくらいのイケイケ走りも可能である。
まあ、そんな特殊な走りをしなくても、プラドで出かけたくなるシーンを想像すれば、トルセンLSDの恩恵は確実にありそうだ。こんなシブい改良もまた、トヨタ……ではなく、ランクルらしい良心である。
(文=佐野弘宗/写真=峰 昌宏/編集=関 顕也)
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【スペック】
全長×全幅×全高=4825×1885×1835mm/ホイールベース=2790mm/車重=2320kg/駆動方式=4WD/エンジン=2.8リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ(177ps/3400rpm、450Nm/1600-2400rpm)/トランスミッション=6AT/燃費=11.2km/リッター(JC08モード)/価格=536万3280円

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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