第754回:ただの電動アシスト自転車にあらず! ホンダの「スマチャリ」で街へこぎ出そう!
2023.07.20 エディターから一言 拡大 |
ホンダが、普通の自転車を電動アシスト自転車に変身させる後付けユニットを発表! 他の電動アシスト自転車とはどこが違い、どんな可能性を秘めているのか? そこにホンダらしさはあるのか? 社内の新事業創出プログラムから生まれた「SmaChari(スマチャリ)」が、いよいよ道を走りだす。
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普通の自転車が電動アシスト自転車に変身!
ホンダが自転車用の電動アシストユニットをつくった。電動アシスト自転車ではない。汎用(はんよう)前提の“システム”を開発したのである。それはつまりどういうこと? はい。いうなればそれは、アナタの自転車をわりとカンタンに電動アシスト自転車にしてしまうモーター&バッテリーが、普通に売り出されるようなものである……本質的には。ま、でもちょっと違うのできちんと説明しよう。
『webCG』でも「ホンダが自転車を電動化・コネクテッド化する新サービスを発表」というニュースで報じているとおり、本田技研工業が新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」によって生まれた新しいサービスを、これからスタートさせる。その名も、スマチャリだ。
スマチャリは、電動アシストユニットに制御ソフトウエア、スマートフォンによるアプリケーションと、電動アシスト自転車のあるステキな生活を送るためのあれこれが、オールインワンかつワンセットになっているシステムのこと。これらすべての製造開発と、「欲しい!」と手を挙げた企業への技術提供(有償)という裏方的な役まわりを、ホンダが積極的に担うという。「HONDA」のロゴこそユニットのどこにも刻まれていないが、文字どおりのスポーツサイクル版「Powered by HONDA」と言って差し支えないだろう。スマチャリは単に電気モーターを自転車に積めるようにアレンジしただけの代物ではなく、ちょっと大仰に言えば、広義の汎用性と発展性が盛り込まれた、まったく新しいサービスなのである。
とはいえ、即物(俗物?)的な乗り物ライターである筆者にとっては「で、つまり何に乗らせてくれるの?」が最も重要な関心事。壮大でコンセプチュアルなビジネスモデルよりも、どんな楽しいノリモノに乗せてくれるのか、ばかりにココロが吸い寄せられていく。そして取材当日、試乗会場にはスポーティーなクロスバイクがズラリと並んでいた。さまざまなスポーツサイクルに搭載できる可能性がある電動アシストユニット、スマチャリが装着された第1号車「RAIL ACTIVE-e(レイルアクティブイー)」だ。
さっそく試乗しよう!
あまりに自然で“収まり”がいい
目の前にあるのはスタイリッシュなバーハンドルタイプのスポーツサイクル。フレームには分かりやすく「KhodaaBloom(コーダーブルーム)」と記されており、このバイクが国内の老舗メーカー、ホダカのいちブランドであることを示している。スマチャリ第1弾のベース車両に選ばれた「RAIL ACTIVE」は、アルミフレームに700×32Cのタイヤを組み合わせたオーソドックスなクロスバイクだ。ちなみに、ベース車両の価格は6万9960円で、重さは9.9kg。3つのサイズと4つのカラーが用意される、エントリーユーザー向けのモデルである。
そのRAIL ACTIVEに電動アシストユニットを加えた完成車が、今回の主役、RAIL ACTIVE-eということになる。ダウンチューブ(ヘッドチューブとボトムブラケットを結ぶ斜めのフレーム)に足された円筒形バッテリーに違和感はほとんどないが、そりゃそうだ。もともとその搭載スペースは、飲料用のボトルケージが装着されるダボ穴(2カ所)の定位置なのだから。ドリンクホルダーにドリンクが差してあるようにしか見えないのは当たり前、さすればその自然さも当たり前なのだった。
「もっと大きくて大げさになるんじゃ?」と想像していたクランク横の駆動ユニットも、極力コンパクトにまとめられており、期待したほど(←性格わるい)の後付け感はなかった。ちょっと上から言ってしまうが、「開発エンジニアのみなさん、ガンバったなー」である。自転車に詳しくない人が見たら、ボトルルックのバッテリー以外、その存在にすら気がつかないかもしれないレベルのスッキリ具合。ユニット類のバツグンな“収まり”は、スポーツサイクル好きにもきっと響くだろう。
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システム操作はスマホのアプリで
いざ走り始めれば、クロスバイクが本来的に持っているスポーティーさを妨げない、キモチのいい軽快な走りが印象的だ。もちろん、スマチャリ装着による+約5kgはスポーツサイクルにとって小さくない重量アップ。しかしバッテリーと駆動ユニットの2つの重量物が車体のセンター部分にコンパクトにレイアウトされているので、スタンディングで積極的に車体を左右に振ったりしないかぎり、重さはそれほど意識しないで済む。
駆動ユニットはフロントのチェーンリングに電気モーターのパワーを伝える“クランク合力型”を採用している。クランクの軸となるボトムブラケットが一般的な規格であれば、多くの自転車に装着可能だという(装着は今後も基本的に販売店でのみ行われる)。RAIL ACTIVE-eトータルのウェイトが15kgであることを考えると、わずか50%増しで追加マウントできるパワーユニットの“リアリティー”は、限りなく高いといえる。
スマートフォンのアプリ上では、乗り手の好みに合わせて4段階でアシストの出力とレスポンスがセッティングできる仕組みだ。加えて言うなら、スマートフォンがなければこのシステムは起動さえままならない。というのもこのアプリには、電動アシストシステムそのものの保守や管理に始まり、果ては盗難の抑制にもつなげられる機能まで含まれている。テレビのリモコンみたいなものか。スマチャリと一心同体のデバイスがスマートフォン(のなかのアプリ)なのは、今の時代にフィットしているだろう。
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「AIモード」の賢さに脱帽
試乗会場で何パターンも試したアシスト設定のなかでも、ダントツで扱いやすかったのが「AIモード」だった。このモードは、先ほど述べたアシストの出力/レスポンスを、状況に合わせて自動で調整するというもの。ペダリング状態や走行シチュエーションに合わせて自然なアシストが得られることをうたっているが、実走しても、ほとんどの局面でナチュラルな爽快フィーリングを味わうことができた。というか、あらゆる状況においてこれ一択でいいと思ってしまうほどの出来栄えなので、特殊な状況を除いては、個人的にはセッティングで迷うことはないと感じた次第。
そのことが分かりやすいのは、ブレーキングののち小さなUターンからゆっくりと加速するシチュエーション。車体がまだ起きていない不安定な状態にもかかわらず、トルクの出方が優しくかつスムーズなので、「スピードアップするぞ!」の気構えがまったく要らない。任意のアシスト設定(固定)で、パワーおよびレスポンスを最弱の「レベル1」にすれば明らかに力が足りず、最強の「レベル4」にすればスムーズネスに欠ける加速になってしまう、そんな立ち上がり時に、シームレスな加速感をアシストレベルの適時可変で実現できるのがAIモードだ。
パワー&レスポンスレベルの組み合わせによっては、もしかしたらベターなフィーリングが得られるのかもしれないが、それとて刻一刻と変わる走行状況に応じて随時乗り手がチョイスするのはあまり現実的ではないだろうし、そもそも気忙(きぜわ)しすぎる。“ほぼ正解”をAIモードは瞬時に用意してくれるのだから、そりゃもう、AIモードに頼ったほうが楽チンなのだ。おかげでアシストされていることを忘れそうになることもしばしばだった。でもそれって、ある意味アシストシステムの理想形のはず。その出来のよさに、「一番機にしてこの完成度なのか!?」と驚いた。
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“汎用”であることのアドバンテージ
RAIL ACTIVE-eの22万円という価格をみなさんはどう感じるだろうか? 筆者は全然高くない、むしろリーズナブルとさえ感じる。トレックやキャノンデールなど、スポーツ系ブランドからリリースされる趣味性も性能も高いeバイク全般のハイプライスを鑑みればなおさらだ。他の乗り物に目をやっても、原付の「ホンダ・スーパーカブ50」が25万円弱、一番安い50ccスクーター「タクト」でさえ18万円弱である。
プライスゾーンだけで言えば、国内大手メーカー製のスポーティー系電動アシスト自転車がライバルかもしれない。具体的には、成熟の域に達しつつある「ヤマハPASブレイス」(19万3600円/26インチ)や「パナソニック・ハリヤ」(16万円/26インチ)あたりか、はたまた新しめの「ブリヂストンTB1e」(17万4000円/27インチ)、パナソニックの新型「ゼオルトL3」(19万5000円/700C)などなど。
でも、それらと単純に比較できないのはやっぱり、スマチャリそのものが汎用ユニットだということ。現時点ではシステム単体での発売時期は未定で、不確定の要素も多い。しかし将来的には「次はこっちの小径車に付けちゃおうかなー」という軽ノリで“お引っ越し”ができてしまうであろうスマチャリは、自転車好きにとってこの上なく愉快なアイテムになる可能性を秘めている。複数台所有の方もきっと多いと思うので、マッチングがイマイチと思ったら他の愛車に装着してしまってオーケーということだ。
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令和の“バタバタ”になり得るか!?
今回のプロジェクト実現のため、ホンダとタッグを組んで第1号車の製作と販売にあたるのが、スポーツサイクル専門ショップを全国展開する「ワイズロード」(株式会社ワイ・インターナショナル)だ。マーケティング部の青木亮輔さんにお話を伺った。
「まずはRAIL ACTIVE-eでスマチャリの将来性を確かなものにしていこうと思っています。電動アシストユニット単体での販売時期は現時点で未定ですが、それでも遠くない将来、ユニットそのものに単品プライスをつけて売られるタイミングがくるでしょう。その際はユニット自体の管理もアプリケーション上で正確に行えるので、企画と販売を請け負うわれわれサイクルショップと乗り手のお客さんは常につながることが可能ですし、全体的なフォローアップについては、ホンダが積極的に動いてくれます。既成のたくさんの自転車を電動化、コネクテッド化できるスマチャリシステムの新しさ、面白さを、サイクリストたちの間でもっともっと共有していきたいですね」
全国33カ所で店舗展開するワイズロードでのRAIL ACTIVE-e試乗と予約受け付けは、2023年7月21日に開始される。モノは試し、の軽いキモチでぜひたくさんの人に乗ってみてほしい。そして「たまにはこういうのも悪くないな」と思ってしまったらしめしめ、かつてあの“バタバタ”から会社を興した本田宗一郎氏も、草葉の陰でほくそ笑んでいるはずである。
(文=宮崎正行/写真=webCG/編集=堀田剛資)
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宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
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