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「日産GT-R」は16年! フルモデルチェンジされないご長寿モデルのそれぞれの事情

2023.07.26 デイリーコラム 工藤 貴宏
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第2世代3モデルの合計を超えた

ついに発売された2024年モデルの「日産GT-R」が自動車メディアで大人気となっている。「2022年モデルで終了」とうわさされていたR35型GT-Rのまさかの復活(しばらく受注をお休みしていた)だけに、メディアも読者も鼻息が荒いようだ。その内容と進化は試乗記にお任せするとして、当コラムではその長寿っぷりから話題を膨らませてみたい。

それにしてもR35型GT-Rのここまでの長寿命を、登場時に一体誰が予測しただろうか。発売は2007年の12月だから、すでに15年半が経過したことになる。

R35に至るまでの「第2世代GT-R」は、R32型の発売が1989年8月で、1995年1月にR33型へバトンタッチ。さらに1999年1月に登場したR34型が2002年12月に販売を終えるまで、3代の合計で約13年半。R35は1世代でそれよりも長いのだから、尋常ではない。

どうしてフルモデルチェンジを経て新型へと切り替わらないのか? 公式な情報はないのでうわさレベルの話や臆測にすぎないが「今後のGT-Rがどうなっていくのか決めかねていて、開発のゴーサインが出ない」というのがその大きな理由なのだとか。

もし新型GT-Rが存在するとすれば、これからを見据えた日産の頂点という役割を担うことになる。だから電動化は必須だが、「ハイブリッドなのか? それとも電気自動車なのか?」「それでGT-Rにふさわしい走りを実現できるのか?」そして「みんなが欲しがる存在になるのか?」といった判断がなかなかできないようだ。いずれにせよ世界最高峰の走行性能が求められる新型GT-Rの開発には莫大(ばくだい)な費用がかかるわけで、ビジネスとしてどう考えるか……という状況になっている。

騒音規制を見事にクリアし、2024年モデルが発売された「日産GT-R」。バンパーの形が新しくなっている。
騒音規制を見事にクリアし、2024年モデルが発売された「日産GT-R」。バンパーの形が新しくなっている。拡大
R35型「日産GT-R」のモデルライフは16年目に突入。R32~R34までの第2世代「スカイラインGT-R」全体の13年半を超えてしまった。
R35型「日産GT-R」のモデルライフは16年目に突入。R32~R34までの第2世代「スカイラインGT-R」全体の13年半を超えてしまった。拡大
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余人をもって代えがたい

自動車業界を見渡すとGT-Rのような長寿モデルをほかにも見ることができる。例えば、トヨタの「ランドクルーザー」だ。

「えっ、ランクルは300系がちょっと前にフルモデルチェンジしたし、もうすぐ『プラド』もフルモデルチェンジでしょ?」

そう思う人も少なくないかもしれない。しかし、実は、クラシックなナナマル系が海外の一部地域では今なお現役で、現在も生産されているのだ(現在は日本向けの販売がないが年内に復活するといううわさも)。デビューは1984年。つまり40年選手であり、レジェンドというか、もはや「走る化石」といっていいかもしれない。

どうして今なおナナマルランクルがつくり続けられるのか。それはより新しいランクルであっても「ナナマルに変わる存在」がないからだ。

ナナマルは電子制御を極力排したシンプルな構造だから安価で壊れにくく、壊れても場所を選ばず修理がしやすい。「極地」と呼ばれるような、クルマの故障による立ち往生が命を失う危機に直結し、きちんとした整備・修理環境のない場所で務めを果たすには、そういった性能が重視される。電子制御満載で複雑な構造の300系やプラドでは、ナナマル系の代わりにはならないのだ。それどころか、そんな地域においてナナマル以外でその代わりを務めることのできる車種があるかといえば、新車としてはどこにも存在しないのである。

トヨタもそれを十分に理解している。だから今なお、ナナマルがつくり続けられているのだ。ナナマルの後継はどうすればいいか? いまナナマルを愛用している人からクルマを取り上げることなんてできない。トヨタもそこに悩み、いろんな議論を重ねていることだろう。

今もなおオーストラリアなどで販売され続けている70系の「トヨタ・ランドクルーザー」。日本では2014年から2015年にかけて期間限定で再販されたが、その後も再々販を期待する声が絶えない。
今もなおオーストラリアなどで販売され続けている70系の「トヨタ・ランドクルーザー」。日本では2014年から2015年にかけて期間限定で再販されたが、その後も再々販を期待する声が絶えない。拡大
2021年にフルモデルチェンジされた300系「ランドクルーザー」。今でも納期が数年と伝えられるほどの人気だが、ナナマルの代わりにはならない。
2021年にフルモデルチェンジされた300系「ランドクルーザー」。今でも納期が数年と伝えられるほどの人気だが、ナナマルの代わりにはならない。拡大

複雑なようで理屈は単純

ところで三菱には、「デリカD:5」というモデルがあり、その販売開始は2007年1月。2019年のはじめに大規模なマイナーチェンジを実施してリファインしているものの、R35型GT-R以上の長寿命モデルだ。

どうしてフルモデルチェンジしないのか?

最大の理由は、利益との関係である。同車はこのところ月あたり1500台弱ほどのペースで売れていて、堅実な需要があるのでモデルを廃止するほどではない。しかし、海外では販売しない国内専売車種であり、グローバルでこの販売台数ではコスト的にフルモデルチェンジ(莫大な費用がかかる)を実施するという判断ができないのだ。

この先どうするのか? 残念ながらそれは誰にも分からない。しかし、安全基準の強化などによってフルモデルチェンジしないと新車販売ができなくなる時がくるまでは、このまま引っ張り続けるのだろう。

同じく三菱には「RVR」というモデルがあり、こちらも現行型(3代目)のデビューは2010年と長生きだ。顔つきにはデビュー時から2回も大胆に手が入り、見たことのある人はあまり多くないかもしれないけれど、最新モデルは現行型「アウトランダー」にも似たダイナミックシールド顔で、なにげにカッコいい。

実は、そんなRVRは「エクリプス クロス」がデビューする際、車体サイズが近いエクリプス クロスを後継としてその使命を終えることが検討されたという。しかし、価格帯が異なることもあって、グローバルでは(そのコストパフォーマンスの高さから)RVRに堅調な需要があり、「引退させるのはもったいない」という判断で現役続行が決まったのだとか。そのクルマの役割というのは、しっかりあるものだ。

というわけで、後継モデルの方向性が定まらないGT-Rに、その独特のポジションからフルモデルチェンジが難しいランクル70、経済的合理性からフルモデルチェンジに踏み切れないデリカD:5、そしてもったいないから廃止しないRVRと長寿モデルになっている理由はいろいろとある……ようにみえる。しかしどれも、ひとことで言ってしまえば「一定の需要があるから販売終了とはいかないが、フルモデルチェンジが簡単にはいかないから」ということになるのではないだろうか。

ところで、トヨタの「ハイエース」はいつモデルチェンジするのだろうか。現行型のデビューは2004年8月だから、気がつけばもう19年選手である。

(文=工藤貴宏/写真=日産自動車、トヨタ自動車、三菱自動車/編集=藤沢 勝)

2007年1月の発売からコンスタントに売れ続けている「三菱デリカD:5」。唯一無二のオフロードミニバンだ。
2007年1月の発売からコンスタントに売れ続けている「三菱デリカD:5」。唯一無二のオフロードミニバンだ。拡大
現行型の「三菱RVR」は2010年にデビュー。「エクリプス クロス」のデビュー時に整理されそうになったが、価格の安さによって一命をとりとめた。
現行型の「三菱RVR」は2010年にデビュー。「エクリプス クロス」のデビュー時に整理されそうになったが、価格の安さによって一命をとりとめた。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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