レクサスRX350h“バージョンL”(4WD/CVT)
この燃費は骨身にしみる 2023.10.17 試乗記 「レクサスRX」に追加設定された2.5リッター直4ハイブリッドを搭載する、4WDの「RX350h“バージョンL”」に試乗。RXのラインナップにおけるど真ん中にして本命の呼び名も高い“プラグインじゃないほうのハイブリッド”の走りを確かめた。大本命がついに登場!
このRXに新たに追加されたモデルは、車名数字から想像されるように、2.5リッター自然吸気エンジンの「A25A-FXS」を核とするシリーズパラレルハイブリッドを搭載する。2.5リッター直4ハイブリッドといえば、レクサスおよびトヨタではミドルクラス以上の定番中の定番パワーユニットだ。厳密には各車でユニットや電池、エンジンチューンなどに細かいちがいはあるのだが、日本で販売中のものだけでも、レクサスでは「NX」や「ES」、トヨタなら「ハリアー」に「RAV4」「クラウン」「アルファード/ヴェルファイア」「カムリ」が同系列のパワートレインを使っている。
いろいろなところで報じられているとおり、RX350hそのものは、北米などでは現行RXの導入当初からラインナップされている。ただ、新しいRXが2022年6月にグローバル発表された当時は、半導体や部品の不足による新車供給難の真っただ中。市場の混乱を避ける意味もあって、日本ではあえて導入を遅らせた……というのが真相のようだ。
振り返ってみれば、このRX350hの直接的に前身といえるモデルは、先代RXには存在しない。それもあって、日本市場では車格をイメージしやすい「RX500h」(先代では「RX450h」相当)と「RX350」(同じく「RX300」)、そして新時代を象徴するプラグインハイブリッド車(PHEV)の「RX450h+」を優先したのだろう。
しかし、このRX350hは新しいRXでは純エンジンのRX350とならぶエントリーモデルの位置づけであり、FFなら20km/リッターの大台を超えるWLTCモード燃費は現行RXで最良。ガソリン価格高騰の昨今は、この燃費はとくに骨身にしみる。というわけで、このRX350hには「RXの大本命、ついに登場!」と銘打ちたくなるところである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
半テンポ遅れるドッコイショ感
RX350hに用意されるトリムグレードはRXの基準仕様ともいえる“バージョンL”のみ。駆動方式は4WDに加えて、純エンジンのRX350同様にFFも用意される。今回の試乗車は4WDだった。
トヨタ製2.5リッターシリーズパラレルハイブリッドの実力はもはやおなじみだ。これまでの経験からしても、このRX350hも“必要十分プラスアルファ”の動力性能を披露することは容易に想像ができた。実際、このクルマは日本の交通環境では普通に走る。さすが入念な静粛対策もあってか、エンジンのオンオフによるショックも気にならないし、ロードノイズも十二分に抑えられている。
……のだが、今回のRX350hの走行感覚は、記憶のなかにある2.5リッターシリーズパラレルハイブリッドの爽やかなそれとは、ちょっと異なっていた。電動パワートレインらしく、本来は中低速域でのレスポンスやトルク感も得意分野のはずだが、今回のRX350hでは、加速も減速もどことなく半テンポ遅れるドッコイショ感があるのは否めない。
その原因はなにか……と想像をめぐらせると、試乗車の車検証重量で2050kgというウェイトにいきついた。同様のパワートレインを積むレクサス/トヨタでRXの次に重いのは、「NX350h」と「クラウン クロスオーバー」だが、それでも車両重量は4WDで1.8t前後。今回の試乗車はそれらより200kg以上重い。さらにFFでも1.9t台に達している。実際のところ、同じ「3.5リッター級」をうたうRXなら、2.4リッターターボの純エンジン車であるRX350のほうが、エンジンサウンドは少し耳につくものの、より小気味よく走ってくれるのは事実である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
足まわりに熟成の余地あり
シャシーについてはFFが固定減衰式、4WDが電子制御連続可変式というショックアブソーバーを使い分けるのは、純エンジンのRX350と同様である。ちなみに、4WDのみとなる上級のRX450h+やRX500hも電子制御アブソーバーが標準装備となっている。
正確なステアリング、いかにも鉄のカタマリを思わせる剛性感は、最新の「GA-K」プラットフォームに共通する美点だ。ステアリングから伝わってくる接地感もそれなりに濃厚で、ロール感が自然なのも同様といっていい。
それは基本的にひとつ下のNXと似た味わいなのだが、NXよりは明らかにゆったりとした重厚感=上級感が演出できている。ドライブモードを「ノーマル」か「エコ」にしておけば、たしかに乗り心地も柔らかめで、路面からの突き上げもほどよく丸い。最近のレクサスは総じて正確で俊敏な身のこなしを強調するタイプが多いが、さすがは長らくレクサスの屋台骨を支えてきたRXだけに、落としこむべき世界観も明確に見えているのだろう。
ただ、全体には細かい上下動が抑えきれていないところが、このRX350hには少しある。高速でも直進性そのものは良好なのだが、前後左右ともに“動いてはグイッと戻される”といった細かいユラユラがおさまらない。伸び側の減衰が足りていない感触といえばいいか。
減衰が引き締まる「スポーツ」モードにすると上下動は少し減るものの、そのぶんコツコツとした路面のアタリは強まるし、気になるユラユラも完全に解消されるわけではない。こうしたクセはこれまで乗ったRXにも多かれ少なかれあったのだが、このRX350hではそれが強調されてしまっている。これなら上下動の大きさはもっと許容しても、ゆったりバウンスさせるほうが“らしい”し、味つけの方向性を見れば、開発陣もそれを分かっているように思える。しかし、今のところは“熟成の余地あり”と申し上げたい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
コスパで選ぶか走りで選ぶか
WLTCモードによるカタログ燃費は、純ガソリンのRX350が11.2km/リッターなのに対して、今回の350hは18.7km/リッター(ともに4WDの場合)と大差をつける。RX350hの本体価格はFF、4WDともに700万円台で、同じ“バージョンL”で比較するとRX350より90万円前後高い。ガソリン価格が高騰している昨今、指定のハイオク価格をたとえば185円と想定すると、この価格差も5万kmちょっとでモトが取れる計算である。
もちろん、そんな単純なコスパだけでレクサスを買う向きはいないだろう。ということは、動力性能は少し控えめでも、ハイブリッドならではの静粛性や滑らかな走行感覚、あるいはガソリンスタンドで漏れてしまうタメ息の度合いが少しでも減じられることに90万円前後の価値を見いだせるか……が、RX350hを選ぶかどうかの分かれめになる。
……というのが、RX選びの一応の基本路線なのだが、現実はそう簡単ではない。この原稿を書いている2023年10月中旬現在、レクサスRX公式ウェブサイト内の「工場出荷めどのご案内」によると、RX350hのそれは注文から3.5~4.0カ月で、じつはRXで最短納期となっている。それに続くのがRX450h+の4.0~4.5カ月。RX350とRX500hにいたっては「詳しくは販売店にお問い合わせください」とあり、実質的にはいまだに受注停止中と思われる。
つまり、今すぐRXを注文したくて、しかもPHEVのメリットを生かせる環境にないなら、現状ではRX350h一択にならざるをえない。ただ、個人的には、条件が整えば、動力性能や乗り心地面でもRX450h+のほうが好ましい。あるいは、どうしても2.5リッターハイブリッドのレクサスSUVに乗りたいのなら、ひとつ下のNX350hが走りは爽快だし、納期もさらに短い。ただし、このご時世である。RX350hを決定版と呼ぶにはもうひとがんばり……と思いつつも、この体躯でこの燃費を見せられると、無視するのはむずかしい。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
レクサスRX350h“バージョンL”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×1920×1700mm
ホイールベース:2850mm
車重:2010kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:190PS(140kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:243N・m(24.8kgf・m)/4300-4500rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:250PS(184kW)
タイヤ:(前)235/50R21 101W/(後)235/50R21 101W(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:18.7km/リッター(WLTCモード)
価格:796万円/テスト車=866万9500円
オプション装備:ルーフレール+パノラマルーフ<チルト&アウタースライド式>(20万9000円)/デジタルインナーミラー(4万4000円)/デジタルキー(3万3000円)/置くだけ充電(1万3200円)/輻射ヒーター<運転席、助手席>(2万2000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(27万9400円)/アクセサリーコンセント(4万5100円)/寒冷地仕様(2万0900円)/ドライブレコーダー<前・後方>(4万2900円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1009km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:365.2km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:15.6km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】 2026.3.14 英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。
-
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)【試乗記】 2026.3.11 「プジョー3008」の電気自動車版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。
-
ジープ・アベンジャー アップランド4xeハイブリッド スタイルパック装着車(4WD/6AT)【試乗記】 2026.3.10 「ジープ・アベンジャー」のラインナップに、待望の「4xeハイブリッド」が登場。既存の電気自動車バージョンから、パワートレインもリアの足まわりも置き換えられたハイブリッド四駆の新顔は、悪路でもジープの名に恥じないタフネスを披露してくれた。
-
三菱デリカD:5 P(4WD/8AT)【試乗記】 2026.3.9 デビュー19年目を迎えた三菱のオフロードミニバン「デリカD:5」がまたもマイナーチェンジを敢行。お化粧直しに加えて機能装備も強化し、次の10年を見据えた(?)基礎体力の底上げを図っている。スノードライブを目的に冬の信州を目指した。
-
ホンダCB1000F SE(6MT)【レビュー】 2026.3.7 ホンダから満を持して登場した、リッタークラスの4気筒マシン「CB1000F」。往年のCBをほうふつさせるスタイルと、モダンなパフォーマンスを併せ持つネイキッドスポーツは、先行するライバルを追い落とすことができるのか? ホンダ渾身(こんしん)の一台の実力に触れた。
-
NEW
ホンダの「スーパーONE」はどんなカスタマーに向けたBEVなのか?
2026.3.18デイリーコラムホンダが2026年に発売を予定している「スーパーONE」は「N-ONE e:」をベースとした小型電気自動車だ。ブリスターフェンダーなどの専用装備でいかにも走りがよさそうな雰囲気が演出されているが、果たしてどんなカスタマーに向けた商品なのだろうか。 -
NEW
モト・グッツィV7スポルト(6MT)【レビュー】
2026.3.18試乗記イタリアの名門、モト・グッツィのマシンのなかでも、特に歴史を感じさせるのがロードスポーツの「V7」だ。ファンに支持される味わい深さはそのままに、よりスポーティーにも楽しめるようになった最新型の実力を、上級グレード「V7スポルト」に試乗して確かめた。 -
NEW
第105回:「フェラーリ・ルーチェ」のインテリア革命(後編) ―いきすぎたタッチパネル万能主義に物申す!―
2026.3.18カーデザイン曼荼羅巨大ディスプレイ全盛の時代に、あえて物理スイッチのよさを問う! フェラーリのニューモデル「ルーチェ」のインテリアは、へそ曲がりの逆張りか? 新しい価値観の萌芽(ほうが)か? カーデザインの有識者とともに、クルマのインターフェイスのあるべき姿を考えた。 -
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)/RAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】
2026.3.17試乗記「トヨタRAV4」が6代目へと進化。パワートレインやシャシーの進化を図ったほか、新たな開発環境を採用してクルマづくりのあり方から変えようとした意欲作である。ハイブリッドの「Z」と「アドベンチャー」を試す。 -
クルマの内装から「物理スイッチ」が消えてタッチパネルばかりになるのはどうしてか?
2026.3.17あの多田哲哉のクルマQ&A近年、多くのクルマの車内では、物理的なスイッチが電気式のタッチパネルに置き換えられている。それはなぜなのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんに理由を聞いた。 -
いまこそ、かき回したい! 新車で買えるおすすめMT車はこれだ!
2026.3.16デイリーコラム改良型「トヨタ・ヤリス」に、新たに6段MTモデルが設定された。現実的にMT車はレアであり、消滅する可能性もある時代だが……。これを機に、いま新車で買えるMT車のなかで、特におすすめできるモデルをピックアップしてみよう。






















































