次期型「ロードスター」じゃなかった! 「マツダ・アイコニックSP」の正体は「RX-9」か?
2023.11.01 デイリーコラムオープントップじゃありませんでした
東京モーターショー改め記念すべき第1回のジャパンモビリティショー。そこに並ぶコンセプトカーのなかで、スポーツカー好きの視線がひときわ熱いクルマといえばマツダの「ICONIC SP(アイコニックSP)」である。詳細に関してはショーでの取材記事に目を通していただくとして、ひとことで言ってしまえば「こんなクルマを将来発売したいな」とマツダが考えている美しい、そしてロータリーエンジン搭載のスポーツカーだ。
ところでこのアイコニックSP、モーターショー……じゃなくてモビリティショー開幕前は「『ロードスター』の次期型じゃないか?」なんてうわさされていた。しかし、それは誤報っぽい。いざショーが始まりアンベールされて実車を見れば、ロードスターというよりも「RX-7」の雰囲気が漂うのだ。
確かに世の中、クローズドボディーでコンセプトカーをつくっておいて、市販時にはオープンでしたという例も存在する。現行型の「アウディTT」なんて、正式発表前の2014年にデトロイトショーでコンセプトモデルが登場したときはスポーツカーじゃなくて、ウエストラインから下はほぼ後に販売する市販車と同じだけどキャビン形状(と車名)はシューティングブレークだったくらいだから。
でも、アイコニックSPは担当デザイナーの「ルーフから継ぎ目なくつながるBピラーは歴代RX-7に継承されてきた要素」という説明を聞くと、ルーフを外したオープンモデルとして市販するとは考えにくい(オープンではなくクーペのロードスターをつくるなら話は別だけど)。
同様に「ドライバーのヒップポイントは、前後も高さもクルマの重心位置とほぼ同じになっている。これも初代からRX-7が守ってきたこと」と説明されると、「ここでも“RX-7”という車名が出てきたな」とつい気になってしまう。これはどうしたって「RXシリーズ」の将来像を示唆していると考えたほうが自然だ。
ロータリースポーツへの道を画策するマツダ
そしてパワーユニット。想定しているのは充電可能な「2ローターRotary-EVシステム」ということで、つまりはロータリーエンジン。担当デザイナーも「ロータリーだからこの低いボンネットが実現できる」と言うし、クルマそのものが(駆動力を生み出すのではなく発電用とはいえ)ロータリーエンジンありきなのである。
ロータリーエンジンを積むロードスターという選択はあるのか?
そういう商品は考えにくく、となるとアイコニックSPはロードスターとは結びつかない。それにしても、このモデルに関して「ロードスターの次期型」だと言い始めたのは一体誰なのだろう?
ちなみに編集部は「『RX-9』でしょうか?」と言うけれど、4180mm(デザイナーいわく「4.2mを下回ることにこだわった」)という歴代のどのRX-7よりも短い全長を考えるとRX-9というのは考えにくいような気がする。
ところで、そんなアイコニックSPを見て、また関係者と話をしていて感じるのはマツダが「なんとかしてロータリーエンジン搭載のスポーツカーを市販したい」と考え、あの手この手でその道を模索しているということだ。この車両自体は市販を前提としたものではないが、関係者と話をしていると「市販化」という言葉が何度も出てくる。
2ローターはすぐにでもつくれる?
いっぽうでロータリーエンジンのネックはご存じのように燃費面にあるが、アイコニックSPに搭載を想定しているプラグインハイブリッドならまあまあ解決できる。先日発表された「MX-30ロータリーEV」のエンジンを排気量800㏄シングルローターの「8C」から2ローターにバージョンアップしたもの(16C?)と考えてよさそうで、ハイブリッドとしては優れた燃費とはいえなくても、ロータリーエンジンとしては望外の燃費というわけだ。プラグインだから日常範囲の近距離はエンジンを止めたままガソリンを使わず走れるから、いろいろ都合がいい。
たぶんロータリー信者は「直接駆動力に使わないならロータリーエンジンの意味がない」と言うだろう。その気持ちは十分に理解できる。だけれど、それはマツダにとってもその先にある野望。まずは(動力を直接生み出す構造ではないとしても)ロータリーエンジン搭載のスポーツカーを出すことが、ロータリーの火を絶やさないために大切ではないだろうか。
そんな、市販車直系のプラグインハイブリッドとした搭載パワートレインからも、アイコニックSPは意外と現実的なロータリースポーツカーなのだ。少なくとも、「RX-VISION」などこれまでモーターショーで公開したロータリーエンジン搭載のスポーツカーよりは現実が見えている。
余談だが、MX-30ロータリーEVを発売するにあたり、マツダは大きな投資をして新設計した8C用にロータリーエンジン生産ラインを刷新した。最先端の工作機械も導入されている。しかしそのラインは、補修用として今もなお毎年数百基が組まれる「13B」(2021年には400基も生産された!)をつくるなど8C以外にも対応する。当然2ローターの16C(?)だってつくれることだろう。
(文=工藤貴宏/写真=webCG/編集=藤沢 勝)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
あなたの「パジェロ」の理想形は? これから出てくる“新・三菱パジェロシリーズ”を大予想 2026.6.15 三菱自動車が、新型「パジェロ」の市場投入と、パジェロのシリーズ展開を正式に発表。そこで考えられる、新たなパジェロシリーズの姿とは? サイズ感や基本構造など、具体的な製品のイメージを予想してみよう。
-
ここがヘンだよCEV補助金! ―電気自動車のヘビーユーザーが不透明な補助金制度に物申す― 2026.6.12 普通車の「ホンダ・スーパーONE」は130万円で、軽自動車の「N-ONE e:」は58万円。ジープやテスラは120万円超なのに、BYDはたったの15万円! CEV補助金の支給額は、いったいどうやって決まるのか? EVのヘビーユーザーが、不透明な制度に苦言を呈す。
-
「ホンダN-BOX」が累計販売台数300万台を最速で突破 愛された理由と未来を考える 2026.6.11 ホンダを代表する軽自動車「N-BOX」シリーズが累計販売台数300万台を達成した。これは「ホンダ・フィット」を大幅に更新する最速の記録。もはや国民車と呼べるN-BOXシリーズの歴史を振り返り、その未来を考える。
-
「RAV4」「CX-5」「CR-V」の新型がそろい踏み 国産ミドルサイズSUVの長所と短所 2026.6.10 国内メーカーのミドルサイズSUVのモデルチェンジが相次いでいる。とりわけトヨタの「RAV4」、ホンダの「CR-V」、マツダの「CX-5」は、各メーカーの北米における最量販車種であり、失敗の許されないモデルだ。それぞれの長所と短所を探ってみた。
-
ざわめきとともに「フェラーリ・ルーチェ」発進! 業界を揺るがす名門フェラーリの秘めたる野望とは? 2026.6.8 2026年5月末に披露されるや、世界的に物議を醸したフェラーリ初の電気自動車「ルーチェ」。意外すぎるルックスの新型車が目指すところは? フェラーリの事情をよく知る西川 淳が“異端の跳ね馬”の核心に迫る。
-
NEW
開発車両の公道テストに“目立つカムフラージュ”をなぜ使う?
2026.6.16あの多田哲哉のクルマQ&Aごくたまに公道で、派手なカムフラージュ柄で擬装している開発車両に出会うことがある。かえって目立つようなカラーリングが採用されているのはなぜなのか? 元トヨタのチーフエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
ホンダZR-V e:HEVクロスツーリング(4WD/CVT)【試乗記】
2026.6.16試乗記「ホンダZR-V」といえば、スポーティーな走りが魅力のコンパクトSUVだが……人気ジャンルの一台にもかかわらず、その存在感はちょっと薄めだ。今回の一部改良でアピールを強めることはできたのか? 特別仕様車「クロスツーリング」に試乗して確かめた。 -
ホンダ・スーパーONE(FWD)【試乗記】
2026.6.15試乗記ホンダからアグレッシブなキャラクターの新型電気自動車(BEV)「スーパーONE」が登場。往年の「シティ ターボII」を思わせるコンパクトなBEVは、先達(せんだつ)に負けない刺激を持ち合わせているのか? 気になる走りを、箱根のワインディングロードで確かめた。 -
あなたの「パジェロ」の理想形は? これから出てくる“新・三菱パジェロシリーズ”を大予想
2026.6.15デイリーコラム三菱自動車が、新型「パジェロ」の市場投入と、パジェロのシリーズ展開を正式に発表。そこで考えられる、新たなパジェロシリーズの姿とは? サイズ感や基本構造など、具体的な製品のイメージを予想してみよう。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.14ミスター・スバル 辰己英治の目利きミスター・スバルこと辰己英治さんが、ホンダの世界的な人気モデル「CR-V」に試乗! かつてはスバルで「フォレスター」の走りも鍛えたことがある彼の目に、ライバルであるホンダのミドル級SUVはどのように映るのか? その走りを批評してもらう。 -
ディフェンダー110ハードトップX-DYNAMIC SE D350(4WD/8AT)【試乗記】
2026.6.13試乗記写真を見ていつもの「ディフェンダー」とはどこか違うと思われた方は鋭い。このクルマは1ナンバー、つまり商用車登録の「ディフェンダー・ハードトップ」である。全長約5mのボディーに備わるシートは前の2座のみ。広大な荷室を使いこなす生活を思い描いてみた。



































