「ホンダS660」が400万円!? 国産中古車高騰の理由から今後の動向を読み解く
2021.11.12 デイリーコラム“趣味のクルマ”が軒並み高騰
「趣味性が強い日本車」の中古車相場が高騰している。いや、比較的フツーなモデルの高年式中古車も、コロナ禍や半導体不足に伴う新車の供給不足のせいで微妙に高騰しているわけだが、趣味的なモデルの相場高騰はその比ではない。
具体的には、R34型「日産スカイラインGT-R」の人気グレードかつ低走行な個体は「3000万円以上」が相場になっており、初代「ホンダNSX」や最終型「マツダRX-7」なども、上物には1000万円以上のプライスタグが付いている。
そういったネオクラシック系だけでなく「新しい系」においても、「ホンダS660」は生産終了の関係で最終限定車は400万円以上が相場となり、「トヨタ・ランドクルーザー200」(現行の「300」ではなく先代である)や「スズキ・ジムニー/ジムニーシエラ」あたりも、新車の供給遅れのせいで中古車相場が上振れしている。
こういった具体例を挙げていけばきりがないわけだが、知りたいことのひとつは「なぜ今、国産中古車の相場はこんなにも上がっているのか?」ということだ。
これはR34型GT-Rなどの「ネオクラシック系」とホンダS660などの「新しい系」で分けて考える必要がある。ネオクラシック系については「25年ルールの解禁」と「希少価値」が絡まり合うことで、果てしない上昇スパイラルに入ってしまった――というのが相場高騰の理由だ。
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始まりは“海の向こう”の輸入解禁
25年ルールについては、すでにご存じの方も多いだろう。アメリカ合衆国は法律により右ハンドル車の輸入ができないわけだが、製造から25年が経過したものについては、「趣味の骨董(こっとう)品」的な扱いとなることで、例外的に右ハンドル車……すなわちスカイラインGT-Rや「トヨタ・スープラ」などのジャパニーズ・ドメスティック・スポーツカーも輸入できるようになるというルール。これが発動することにより、R34GT-RやFD、80スープラなど、映画などを通じてアメリカでの人気が高まったモデルの相場が爆騰してしまったというのが、まず初めにあった。
そして25年ルールの解禁で北米に(札束でもって)引っ張られていく車両が増えると、当然ながら日本国内におけるその滞留数は減少または枯渇する。とはいえ、国内でのそれらネオクラシック系スポーツモデルの人気が下がるわけでもない。むしろ昨今の「レトロな物ほど人気が高い」という傾向と相まって、人気は上昇トレンドを描き続けている。
となれば「流通量減少×需要増=平均価格の上昇」という、鉄壁にしてシンプルな計算式が成り立ってしまうわけだ。
この種の中古車相場高騰の話をすると、ほぼ必ず「一部の有力にして悪質なショップが値をつり上げているに違いない」と言い出す者が出てくるが、そうではない。いや、そういった“悪”も一部にいる可能性を否定はできないが、基本的に相場は常に「神の見えざる手」によって決まるものだ。ひとつやふたつぐらいのショップがどうにかしたところで、全体を思いのままにコントロールすることなどできないのである。
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それでも売れるクルマは売れる
一方、ジムニーやS660などの「新しい系」については、新車の供給不足および供給の遅延または終了が相場高騰の根本的な理由なわけだが、こちらについてはいわゆる「転売ヤー」の存在が、相場の上昇を招いているという側面も強い。
クルマの場合、コンサートチケットなどと違って個人の転売ヤーが暗躍しているわけでないが、中古車販売店などの法人が、転売というか「供給不足期間におけるプレミアム粗利の獲得」を目的に、太いパイプがある新車ディーラーから人気モデルを買いあさる場合も多いのだ。ムカつくが、法を犯しているわけではないので止めることはできないし、よそでは買えないモデルがそこにあれば、ムカつきながらも欲しくなってしまうのが人情であるという、微妙な問題点がそこにはある。
だがそもそも、以上のような高騰系中古車は本当に売れているのだろうか? 高い値段をつけたはいいが、完全に売れ残ってしまった……なんてことはないのだろうか?
これはもちろんケース・バイ・ケースではあるのだが、結論としては「普通に売れている」というのが答えになる。
新車価格より高額な「新しい系」の中古車は、それでも即納を求めるユーザーが普通に購入している。そして1000万円から3000万円ぐらいの「ネオクラシック系」も、もちろん「毎日バンバン売れる」というわけではないのだが、じんわりと、だが確実に、中古車販売店の店頭から姿を消している。お金は「あるところにはある」という話である。
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ネオクラシック系は“夢のクルマ”に
そして真に気になる問題は、「で、この相場高騰はいつ終わるの?」ということかもしれない。
結論から申し上げると、「新しい系」については新車の供給スケジュールが完全に正常化されたタイミングで、中古車の相場高騰は終わる。とはいえそれはランドクルーザーの場合で数年後、ジムニーの場合でも1年以上先であろうから、まだまだ遠い未来の話ではあるのだが……。
そしてスカイラインGT-RやRX-7、NSXなどの絶版ネオクラシックスポーツについては――相場がさらに上がることはあっても、現実的な価格にまで下がる可能性は「将来的にもほぼゼロ」と考えるのが、おそらくは正解だ。
それらのモデルをぜひ手に入れたい考える富裕な愛好家と投機家は、日本国内だけでなく北米にも多数存在し、なんなら最近はアジア各国にも多数いらっしゃる。そういった面々が急にスカイラインGT-Rなどに興味を失ったり、同時多発的に破産し、クルマを買うどころの騒ぎではなくなったりする可能性は、ほぼゼロであるからだ。そして、需要は減らないのに供給量はゆっくりと減り続けるため、「下がる理由」がどこにも存在しないのである。
唯一、平均価格が爆下げになる可能性が考えられるのは、前述した「世界の富裕層が同時多発的に破産する」という事態が起きたときだ。リーマンショックの5倍ぐらいのショックに世界が襲われたなら、そのようなことが起きる可能性もなくはない。
ただし、それが起きたときには私のような非富裕層も同じく、クルマを買うどころの騒ぎではなくなっているはず。
そのため、結論はまったく変わらないのである。
(文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ、荒川正幸、webCG/編集=堀田剛資)

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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