ランドローバー・ディフェンダー110 V8(4WD/8AT)/ルノー・メガーヌR.S.ウルティム(FF/6AT)/ポルシェ911ダカール(4WD/8AT)
エンジンにたかぶる 2024.02.18 JAIA輸入車試乗会2024 電動化やむなし。しかし、車歴の締めくくりはこだわりのエンジン車で「内燃機関ガチ勢」と呼ばれるのも悪くない。そこで「ランドローバー・ディフェンダー110 V8」と「ルノー・メガーヌR.S.ウルティム」、そして「ポルシェ911ダカール」を選択し、オイルの香り漂う走りを味わった。胸にしみるような何か
ランドローバー・ディフェンダー110 V8
タフでいかにも頑丈そうなルックスのディフェンダーに搭載されている5リッターV8ガソリンエンジンは、1998年に「ジャガーXJ8」でデビューした「AJ26」型をルーツとする最新バージョンだという。「レンジローバー」に採用されるBMW製のV8系とは異なるもので、四半世紀にわたりジャガー・ランドローバー(JLR)で育まれてきた伝統のパワーユニットだ。
最高出力525PS/6500rpm、最大トルク625N・m/2500-5500rpmというスペックには、いまや本格クロカンモデルも500PSオーバーか、と何とも言えない気持ちになる。JLRにはほかに600PSを超える前述のBMW系パワーユニットも存在する。ただし、2450kgというディフェンダーの車両重量に対して、525PSが非力だとは思わない。
たとえば今回のような70km/h制限の自動車専用道路では、1000rpmちょっとでの高速巡行が可能だ。そのときのキャビンは安楽そのもの。いま自分がドライブしている車両が、砂漠もガレ場もものともしない本格オフローダーだとは思えないほどで、まるでラグジュアリーSUVのステアリングを握っているのかと錯覚する。
実際、レンジローバーほど内装は豪華ではないが、デザインや質感は高レベル。機能性重視のしつらえではあるものの、安っぽさや子供っぽさを感じることはない。今回試乗した車両にはウインザーレザーシートやヒーター付きの「スエードクロスステアリングホイール」、トータル出力700Wのアンプと14のスピーカーにサブウーハーを加えた「MERIDIANサラウンドサウンドシステム」などが装備されていて、十分にラグジュアリーと呼べる仕上がりである。
取説を開かなくても直感的に操作できるコックピットのスイッチ配置や、自在にアレンジできる荷室もディフェンダーのセリングポイントだ。ただし、センターコンソール上部にあるハザードランプスイッチには手が届きにくく、「なんでこんなところに?」と、乗るたびに思う。ハザードランプはその名のとおり危険を知らせ注意を促す緊急用なので、欧米ではあまり使うことがない=操作性が重要視されていないのだろうか。
そんなことはともかく、5mに迫る全長と2m近い全幅、そしてその全幅の数値に近い全高を有するボディーサイズは圧巻である。それを軽々と高速域まで運ぶV8スーパーチャージャーの仕事もまた見事。エンジンの基本設計年次が古くても、綿々と磨き続けられ生き残った価値あるものは、いつ乗っても胸にしみるようなエモーショナルな何かを残してくれる。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm/ホイールベース:3020mm/車重:2450kg/駆動方式:4WD/エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ スーパーチャージャー(最高出力:525PS/6500rpm、最大トルク:625N・m/2500-5500rpm)/トランスミッション:8段AT/燃費:--km/リッター/価格:1588万円
脳内物質があふれ出る
ルノー・メガーヌR.S.ウルティム
ルノースポール(R.S.)を名乗る最後のモデルとして登場したメガーヌR.S.ウルティムは、ルノー・スポールのテスト/開発ドライバーにして、ニュルブルクリンク北コースの市販FF車最速記録(当時)のアタックドライバーを務めたロラン・ウルゴン氏のサイン入りシリアルプレートや、「ULTIME」のマットブラックデカール、専用デザインハンズフリーカードキーなどが特別に採用される、いわばフェアウェルモデルである。センターディスプレイも9.3インチのマルチメディアEASY LINK(スマートフォン用ミラーリング機能付き)に変更されている。販売台数は全世界で1976台。その数は、ルノー・スポールの設立年にちなんだものだ。
1976年設立のルノー・スポールは、ご存じのようにルノーのスポーツモデルの開発やモータースポーツ活動を担ってきたが、今後はその役割をアルピーヌが継承する。往年のアルピーヌファンにはうれしいニュースかもしれないが、ルノー直轄のスポーツ部門たるルノー・スポールの名称が消えることに対する寂しさもある。
フロントに横置きされるのは最高出力300PS/6000rpmの1.8リッター4気筒直噴ターボエンジンで、これまでのモデルと同じユニットになる。小径タービンを用いたターボチャージャーの軸受けにセラミックボールベアリングを用いることで応答性を高めたというマイナーチェンジ時に施された改良によって、回して楽しいのはもちろんのこと、各ギアでの粘りのある柔軟なパワーとトルクの出し方にルノー・スポールのノウハウとこだわりを見たような気がする。
今回の試乗では、ワインディングロードを走る時間に恵まれなかったが、過去の経験から言わせてもらうなら、「EDC(エフィシエントデュアルクラッチ)」と称するキレのある6段DCTを駆使して駆けぬければ、どこであっても気分はニュルブルクリンクの北コースである。
60km/h未満(レースモードでは100km/h)の低速では逆位相、60km/h以上の高速では同位相となる後輪操舵システム「4コントロール」は、アマチュアレベルのドライビングスキルをちょっとしたレーサークラスにまで引き上げてくれる(ような気がする)。苦手なタイトコーナーでもノーズがスパッとインに入り、クリッピングポイントでアクセルペダルを踏み増せば、ぐいぐいとボディーを引っ張ってくれる。
まるで運転がうまくなったかのような気持ちのいい錯覚。659万円という車両本体価格をポンと出せる方はさすがに限られると思うが、ドーパミンがドバドバと分泌されるような走りを味わうと「それぐらいの対価は必要か」と納得してしまうあたり、すでに脳内物質があふれ出てフロー状態になっている証拠かもしれない。
多くのスポーツEVは、メガーヌR.S.よりも速くレスポンスにも優れる。しかし、どんなにパワフルなモデルであっても、ここまでの恍惚(こうこつ)感に浸れないのはどうしてなのだろう。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1875×1465mm/ホイールベース:2670mm/車重:1470kg/駆動方式:FF/エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(最高出力:300PS/6000rpm、最大トルク:420N・m/3200rpm)/トランスミッション:6段AT/燃費:11.3km/リッター(WLTCモード)/価格:659万円
絶妙なシナジー
ポルシェ911ダカール
今から20年以上前の冬に「A6アバント」のサスペンションを引き上げ、オフロードテイストをプラスした「アウディ・オールロードクワトロ」を北欧の街角で見かけて以来、この手のモデルがどうにも気になって仕方がない。当時発売されたばかりのオールロードクワトロは、それはもう“普通じゃないオーラ”を全身にまとっていた。
SUV専用モデルではなく、標準車両がありつつそこからハイリフト化し、大口径タイヤを組み込んだフォルムにグッとくるという少し特殊な志向に、今回ジャストミートしたのがポルシェ911ダカールである。世界的なSUVブームに乗っかったと思えなくもないが、1984年のパリダカールラリーで総合優勝した「953」こと「911カレラ3.2 4×4パリダカール」という“原点”があるとなれば、こちらは血統書付きと言ってもいい。
全世界限定2500台のみとなる911ダカールは、実際に目にすると「911カレラ」のスポーツサスペンション仕様車の車高をたった50mm引き上げただけとは思えないほどのインパクトである。誰の目にもただものではないと映るはずだ。ちなみに標準で装備されるリフトシステムによって、フロントエンドとリアエンドをさらに30mm上げることもできる。
エンジンはなんてことのない「911カレラGTS」と同じ最高出力480PS、最大トルク570N・mの3リッター水平対向6気筒ツインターボ。GTSのパワーユニットをして普通扱いとは失礼千万だが、「ターボ」や「GT3」と層の厚いパワーユニットのラインナップを誇るポルシェにとってこちらは、まあ平たく言えば一般向けの範疇(はんちゅう)である。しかし、911ダカールとの組み合わせは申し分なく、これ以上でも以下でもないと思わせる絶妙なシナジーをみせる。
エンジンは簡単に吹け上がり(さすが伝統のフラットシックス)、車高が高いぶん運転が楽だ(輪止めも段差もさほど気にならない)。911カレラGTSより少しうるさい走行音も、演出の範囲である。911を「日常でも使えるスポーツカー」とするリポートを目にすると、これまでは「どこが?」と一人で悪態をついていたが、911ダカールなら文句なく街なかでも郊外でもストレスなく移動と走りを楽しめる。
ついカーマニアの性(さが)で役物のエンジンに目が行ってしまうけれど、GTSの480PSはこんなにも饒舌(じょうぜつ)で濃厚なテイストだったのかと再認識した。器が異なれば感想も変わってくる。
こうした従来の911では考えられないリッチで個性あふれる走りを味わえるのが世界でたった2500人とは、あまりにももったいない。フェラーリの創設者にしてコマンダトーレと呼ばれるかのエンツォ・フェラーリは、限定車の台数を決める際に、そのクルマを欲しいと思う人の数からマイナス1台したというが、もしそれを当てはめようとするのなら、ポルシェは911ダカールを3万台以上つくらなくてはならないはずだ。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4530×1864×1338mm/ホイールベース:2450mm/車重:1605kg/駆動方式:4WD/エンジン:3リッター水平対向6 DOHC 24バルブ ターボ(最高出力:480PS/6500rpm、最大トルク:570N・m/2300-5000rpm)/トランスミッション:8段AT/燃費:11.3リッター/100km(約8.8km/リッター、WLTPモード)/価格:3099万円
(文=櫻井健一/写真=田村 弥/編集=櫻井健一)

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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