ホンダ・アコードe:HEVプロトタイプ(FF)
出足は上々 2024.03.07 試乗記 ホンダが世界に誇るミドルサイズセダン「アコード」の新型が、間もなく国内でも発売される。新たなインフォテインメントシステムの搭載などトピックは満載だが、とりわけ注目すべきは新開発のハイブリッドパワートレインだ。プロトタイプの仕上がりをリポートする。今でもホンダの代表モデル
昭和オヤジ世代の若い時分には憧れだったホンダ・アコードが、今やめっきり見かけないクルマになってしまったのはこれまでにも紹介してきたとおり。だが、国内では影が薄いアコードは今でも海外では基幹モデルであり、例えば既に新型に切り替わっている北米では2023年におよそ20万台(「シビック」とほぼ同じ)を売り上げている。先日、その新型に搭載されている新しいハイブリッドシステムを体験する「スポーツe:HEVテクニカルワークショップ」と銘打った取材会が行われた。ワークショップとはいえ、注目はもちろんこの春に日本でも発売される新型アコードである。
1976年デビューの初代(3ドアハッチバック)から数えると、新型アコードはもう11代目になる。プロトタイプゆえ詳しいスペック等は明らかにされていないが、既に米国で発売されているモデルと同じと見れば、一見ファストバックのようなボディーは先代からさらに大きくなっており、全長はほぼ5m(およそ70mm延長)、ホイールベースは2830mmと堂々の体格である。何しろ「レジェンド」がなくなった今(新たな旗艦モデルが登場するまでは)、アコードがホンダのフラッグシップモデルである。
いいとこどりのe:HEVシステム
ご存じ「e:HEV」とはホンダ独自の2モーター式ハイブリッドパワートレインのこと。エンジンが発電に徹して駆動はモーターのみが受け持つのがシリーズ式(日産の「e-POWER」が代表格)、エンジンとモーターを併用して駆動するのがパラレル(同じくトヨタの「THS」など)、それに対して基本はモーター駆動だが、エンジンの効率が良い条件下では高速域でエンジン直結モードを持つシリーズ・パラレル切り替え式とでもいうべきシステムがe:HEVである。高速域は苦手な一般的なハイブリッドシステムの“いいとこどり”が特長だ。2リッター直噴アトキンソンサイクルユニットと組み合わせた仕様はその前に“スポーツ”の文字が付くらしい。もともとは2013年に登場したアコード ハイブリッドに搭載された2モーター式ハイブリッドシステムの「スポーツハイブリッドi-MMD」の進化版といっていいが、この辺のネーミングをもっと整理しておけば、という気がしないでもない。
新型アコードのe:HEVパワートレインのうち、2リッター4気筒直噴アトキンソンサイクルエンジンそのものは「シビック」や「ZR-V」のe:HEVに先行して搭載されているものと同じで高剛性クランクシャフトや2次バランサーシャフトなどを特徴とする。最高出力と最大トルクは147PS/6100rpm(シビックは141PS/6000rpm)、182N・m/4500rpmである。
グローバルモデルならではの苦労
いっぽうでトランスミッションは大きく異なる。新開発の平行軸配置2モーター内蔵電気式CVTは、その名のとおりモーターとジェネレーターを同軸上ではなく横に並べて配置したもので、ユニット全長を抑えることができるという。この新ユニット導入の背景にはグローバルモデルたるアコードならではの苦労がある。というのも、これまではモーター出力ギアとエンジン側ギアが同じカウンターギアにかみ込む設定で、駆動力を確保するためにローギアードにすると、ロックアップ時(高速巡航時)にエンジン回転数が高くなるというジレンマがあったという(モーターの最高回転数も規制されて最高速も低くなる)。
新型はモーター軸とエンジン軸用のカウンターギアを別個に設け、仕向け地ごとにギア比を最適に設定できるようになったという。例えば北米や日本向けはオーバーオールのロックアップギアレシオが中東向けよりも高い。さらに新型アコードには採用されていないが、トレーラーなどをけん引する需要がある市場向けにはロックアップギアをロー/ハイの2段装備するトランスミッションも用意されているという。平行軸配置によってその場合でも全長を抑えることができたらしい。燃費はもちろん、最高速やトレーラーけん引時の駆動力まで考えなければいけないのだから、世界中に投入するモデルの開発は一筋縄ではいかない。
もちろん駆動用バッテリーもさらに軽量コンパクト化され(先代比で体積は-9%、重量で-14%)、駆動用モーターも構造を見直して最大トルクは335N・mに向上(ZR-V用は315N・m、最高出力は184PSで同じ)、最高回転数も1万3000rpmから1万4500rpmに向上しているという。さらに細かいところでは後席下のIPU(インテリジェントパワーユニット≒バッテリー)とフロントに積まれるPCU(パワーコントロールユニット)を結ぶ高電圧DCケーブルも銅撚線からアルミ撚線に置き換えられている。アルミニウムで大丈夫なの? と反応しがちだが、実はアルミ自体は銀、銅、金に続いて電気伝導率が高い金属であり(銅の約60%)、しかも軽く(比重は銅の約3分の1)、近年価格が高騰している銅に比べてコストが低い。同じ重量ならば銅線の2倍の電流を流せるらしい。結果新型アコードではケーブルだけで先代の4kgから2.6kgに軽量化できたという。いやはや、電動化すればエンジン車よりも部品点数が格段に減って簡単につくれるようになると言ったのは誰だっただろうか?
確かにスポーティーで軽快
雨のクローズドコースを制限速度付きで3ラップだけ、という試乗なので、新型アコードe:HEVのほんの表面をなでただけという感じだが、第一印象は上々だった。そもそもシビックやZR-Vに積まれている新世代の2リッター4気筒エンジンは評価が高く、エンジンが始動しても耳障りではなく、むしろ積極的に使っても健康的な気持ち良い音とともに滑らかに回るユニットだ(先代よりもエンジンモードを維持する設定という)。強力になったモーターのトルクやパドルで制御できる回生ブレーキ(減速度はこれまでの4段階から6段階に増やされている)、さらにシビック同様ステップシフトのように回転が上下するおかげで、確かにスポーティーで軽快感にあふれている。
新型には新たに6軸センサーを採用したアダプティプダンパーや操舵時に前輪荷重を増やす「モーションマネジメントシステム」なる機構(マツダの「GVC」と同様と思われるが詳細は不明)が採用されているというが、路面の平滑なクローズドコースではまったく文句のないフラットで滑らかな乗り心地に終始したのでその効果のほどは分からない。上等な走行感に比べて、インテリアはずいぶんとビジネスライクじゃないか、というような細部については正式発表後に突っ込んでみたい。
(文=高平高輝/写真=本田技研工業/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ホンダ・アコードe:HEVプロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4975×1860×1450mm
ホイールベース:2830mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:147PS(108kW)/6100rpm
エンジン最大トルク:182N・m(18.6kgf・m)/4500pm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-8000rpm
モーター最大トルク:335N・m(34.2kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)235/45R18 96W XL/(後)235/45R18 96W XL(ミシュランeプライマシー)
燃費:--km/リッター
価格:--円
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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