これは「ランクル ミニ」登場の伏線か!? 「ランドクルーザー“250”」の価格が「ランドクルーザー“300”」と横並びな理由
2024.05.03 デイリーコラム不思議な価格設定と“300”との相関関係
「トヨタ・ランドクルーザー“250”」が正式発表され、価格やグレード構成まで明らかになった今の正直な気持ちを言えば、頭の中は「???」である。
その理由は、“250”の価格帯。同車は実質的に「ランドクルーザー プラド」の後継モデル(海外では名前を変えず、新型も「ランドクルーザー プラド」を名乗る地域もある)であり、トヨタによると「時代とともに高級・豪華路線にシフトしたので、原点回帰をキーワードに質実剛健を追求」するとしてネーミングチェンジしたはずだ。
しかしその価格帯は520万から735万円と、高級・豪華路線だったプラド時代よりむしろアップしている! 参考までに「ランドクルーザー“300”」の価格帯が510万円から800万円(「GRスポーツ」を除けば760万円)……って、思いっきり価格設定がかぶっとるやないか!
おっと、あまりの興奮ゆえに言葉が荒れてしまったが、とにもかくにもランクル“250”の価格は不思議だ。ボトムグレードがランクル“300”より高いって、どういうことなの?
……なんて話をすると、詳しい人はきっとこう言うに違いない。「プラドあらため“250”は、車体はサイズも大きくなって“300”と同等だし、ラダーフレームも『GA-F』で“300”と同じもの。もう“300”の弟分じゃないのさ」と。
なるほど、言いたいことはわからなくもない。では取りあえず、ランクル“250”を軸にGA-Fプラットフォームのモデルを並べてみようじゃないか。
●ランドクルーザー“250”
- 車体サイズ:全長×全幅×全高=4925×1940~1980×1925~1935mm
- 価格帯:520万~735万円
- パワートレイン:2.7リッターガソリン、2.8リッターディーゼルターボなど全車4気筒(海外向けは2.4リッターガソリンターボとそのハイブリッド、2.8リッターターボディーゼルのマイルドハイブリッドも設定)
- トランスミッション:8段AT/6段AT
- スタビライザー機構:SDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism=スイッチ操作でロック/フリーを操作できるスタビライザー)を上級グレードに搭載
●ランドクルーザー“300”
- 車体サイズ:全長×全幅×全高=4950~4985×1980~1990×1925mm
- 価格帯:510万~800万円
- パワートレイン:3.5リッターガソリンターボと3.3リッターディーゼルターボで全車6気筒
- トランスミッション:10段AT
- スタビライザー機構:E-KDSS(Electronic Kinetic Dynamic Suspension System=電子制御可変スタビライザー)を上級グレードに搭載
●レクサスGX550“オーバートレイル”
- 車体サイズ:全長×全幅×全高=4970×2000×1925mm
- 価格帯:1235万円
- パワートレイン:3.5リッターガソリンターボのみで全車6気筒
- トランスミッション:10段AT
- スタビライザー機構:E-KDSS(Electronic Kinetic Dynamic Suspension System=電子制御可変スタビライザー)を搭載
●レクサスLX600
- 車体サイズ:全長×全幅×全高=5100×1990×1885~1895mm
- 価格帯:1250万~1800万円
- パワートレイン:3.5リッターガソリンターボのみで全車6気筒
- トランスミッション:10段AT
- スタビライザー機構:E-KDSSやSDMの搭載はないが車高調整機能を採用
ちなみに、北米にはGA-Fプラットフォーム採用車種としてランクル“250”の隠れ兄弟である「4ランナー」や、北米向けのトラック「タコマ」「タンドラ」、そしてトヨタ最大のSUVである「セコイア」なんかもあるのだが、それらまで含めると話がややこしくなるので、ここでは割愛しよう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
上下の関係から横並びの関係へ
それにしてもレクサスは高いなあ……という話はさておき、おもしろいのは、このランクル&レクサス4兄弟のうちで、4気筒エンジンを積むのはランクル“250”だけだということ。うがった見方をすれば、そこにはランクル“300”に対する上下関係を明確にしておこうという狙いがあるとしか思えないし、同じアーキテクチャーかつ基本的には同じサスペンションながら、スタビライザーの機構が違ったり、実はサスペンションストローク量が違ったりする(“250”のほうが短い)など、微妙に変化があるのもおもしろいところ。パワーステアリングもランクル“300”は油圧式(これは耐久性や信頼性を考えての選択とのこと。グレードによっては電動アクチュエーター付きもあり)だが、“250”は電動式(燃費面だけでなく悪路走行時のキックバックの少なさにもメリットがある)だ。
普通に考えれば、そのあたりが“250”のライトデューティーな部分なのだろう。ライトといっても、それは「“300”と比べれば」の話であって、世間一般的には十分すぎるほどヘビーデューティーなのだが。
いずれにしたって“250”と“300”の価格帯がオーバーラップしている理由はよくわからない(4気筒より6気筒エンジンのほうが高コストなので、仮にどちらも6気筒だったなら理解できる気がする)。が、筆者が思うに今回の車名変更の背景には、どうしても“300”との上下関係をイメージしてしまう「プラド」の名前をやめたかったという意図があったのではないだろうか。ライトデューティー系ランクルのポジションを上げるために。
“300”とプラド改め“250”は、これまでの上下関係をやめて横並びの関係にする。ラグジュアリーな“300”に対して“250”は質実剛健テイストとして、きっちりとキャラクターを分けた存在に。そして車体サイズと価格帯を引き上げる。それは、両者の関係の縦から横への変化といっていいだろう。
それが今回のモデルチェンジで、車名がプラドから“250”へと変わった理由なのだと筆者は考えている。そんな“250”のターゲットは「“300”よりもワイルドに、“70”よりは快適でモダンに」という人になるのではないだろうか。
ところで、プラドがキャラ変して価格帯が上がったことで、これまでのプラドのような「手が届きやすいランクル」のポジションはどうするのか? それは近い将来の登場が既定路線となっている「ランクル ミニ」の役割なのでは。もしかすると、一般消費者にとってランクルの本命はそれなのかもしれない。
ちなみに、ちまたではランクル ミニは、GA-Fアーキテクチャーではなく「ハイラックス」系のラダーフレームを使うとか使わないとかいう話が飛び交っているが、果たして?
(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
「BYDラッコ」がアジアにはばたく!? ニッポンの軽自動車規格が海外勢に奪われる日NEW 2026.10.30 中国のBYDが、軽BEVの「ラッコ」を日本以外でも販売すると発表! 日本独自のスモールカー規格は、はたして海外でも受け入れられるのか? 本家・日本のメーカーが、海外展開に及び腰だった理由とは? BYDが食指を動かす、軽自動車の秘めた可能性を探る。
-
メルセデスのトップからのまさかの転身 BMW日本法人の上野金太郎社長にインタビュー 2026.10.29 メルセデス・ベンツ日本からビー・エム・ダブリューのトップへ。いわば巨人の四番から阪神の四番のような異例の転身を遂げた上野金太郎社長。両ブランドの文化や製品の違い、今後の販売戦略などについて話を聞いた。
-
「ミッションS」だけではない? 2035年に向けたポルシェの新戦略を探る 2026.10.28 ポルシェは2026年10月7日、新中期戦略「Sportwagenschmiede'35」を発表した。新型パワーユニット搭載の「ミッションS」をはじめとするニューモデルで、経営状態の立て直しを目指す。その注目すべき内容を詳しく解説する。
-
ホンダが次世代ハイブリッドの名称を「Honda Hybrid」に決定 命名の理由とその背景を探る 2026.10.26 本田技研工業が2027年からグローバルで用いる次世代ハイブリッドシステムの名称を発表した。その名は「Honda Hybrid」である。「i-MMD」から「e:HEV」へと変更されて6年。慣れ親しんできた名称が変更される理由と、その背景を探る。
-
「マツダRX-7」の復刻部品を生産!? ミクニの挑戦は旧車オーナーの福音となるか? 2026.10.23 ミクニが「マツダRX-7」向け復刻部品の開発検討を開始した。古い自動車部品の供給は、なぜここまで困難を極めるのか? ミクニの挑戦は世のロータリーオーナーにとって福音となるか? 日本の自動車文化に潜む課題と、その解決に挑む企業と人をリポートする。
-
NEW
メルセデスのトップからのまさかの転身 BMW日本法人の上野金太郎社長にインタビュー
2026.10.29デイリーコラムメルセデス・ベンツ日本からビー・エム・ダブリューのトップへ。いわば巨人の四番から阪神の四番のような異例の転身を遂げた上野金太郎社長。両ブランドの文化や製品の違い、今後の販売戦略などについて話を聞いた。 -
NEW
ボルボEX90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(後編)
2026.10.29あの多田哲哉の自動車放談ボルボの新世代EV「EX90」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが試乗。ちょっと気になったところと、クルマとしての魅力を感じたポイントについて熱く語る。 -
写真で解説する「メルセデス・ベンツ・エレクトリックGLC」
2026.10.28画像・写真メルセデス・ベンツの新たなフル電動SUV「エレクトリックGLC」がデビュー。2026年10月28日に国内での注文受け付けがスタートした。一体どんなクルマなのか、その見どころを写真とともに解説する。 -
「ミッションS」だけではない? 2035年に向けたポルシェの新戦略を探る
2026.10.28デイリーコラムポルシェは2026年10月7日、新中期戦略「Sportwagenschmiede'35」を発表した。新型パワーユニット搭載の「ミッションS」をはじめとするニューモデルで、経営状態の立て直しを目指す。その注目すべき内容を詳しく解説する。 -
日産フェアレディZ NISMO(FR/9AT)【試乗記】
2026.10.28試乗記「日産フェアレディZ」のマイナーチェンジモデルが登場。改良の主眼はZが受け継いできたヘリテージのさらなる深化と性能の強化だという。もはやお値段1000万円(!)に迫らんとする「NISMO」の9段ATモデルを試す。 -
第134回:アウディデザイン水掛け論 ―これが未来のアウディか? 「ヌヴォラーリ」と他のモデルに見る不整合―
2026.10.28カーデザイン曼荼羅微妙に迷いが見えていたアウディのデザインに、新しい潮流が? これまでとは異なるモチーフが取り入れられた「ヌヴォラーリ」の造形は、次世代のフォーシルバーリングスを指し示すものなのか? カーデザインの識者と、アウディデザインの未来について考えた。






































