ヒョンデ・アイオニック5 N(4WD)
ほえるEV 2024.05.04 試乗記 BMWに「M」、メルセデスに「AMG」、レクサスに「F」があれば、韓国のヒョンデには「N」がある! Nモデルとして日本初上陸を果たした「アイオニック5 N」は、システム最高出力650PSを発生する超ド級の電気自動車(EV)だ。サーキットと一般道で仕上がりを試した。凝りに凝ったバーチャルシステム
スピードとともにドライで精悍(せいかん)な排気音が高く大きく盛り上がっていく。右パドルでシフトアップすると、パンという音と同時に明確なシフトショックも感じるし、さらにそのままリミッターに当たるまで踏むと、バラバラという音と一緒に前後に揺動する振動も伝わってくる。運転しているドライバーでさえ、いったい何に乗っているんだっけ? と混乱するぐらいだから、何も知らされずに助手席に乗せられた人にはまったく分からないはずである。
もちろんヒョンデ・アイオニック5 Nは内燃エンジンもギアボックスも持たない100%EVであるから、これらはすべてバーチャルであり、演出されたものである。EVなのにエンジン車のような音を発するものや、モーター駆動のハイブリッドなのにギアボックスを備えているかのようなシフトアップ感を演出するクルマはこれまでにもあったが、アイオニック5 Nの細部へのこだわりというか、徹底的な再現ぶりには驚いた。EVでもここまでできるということを見せつけられた思いである。しかもヒョンデの高性能サブブランドのNモデルであるからには雰囲気だけではなく、実際に驚くほど速く、ドリフトさえ自在である。正式発売前にサーキットを中心に事前試乗会を開催したということは、それだけアイオニック5 Nの出来栄えに自信を持っている証しだろう。
Nって何だ?
EVと水素燃料電池車を引っ提げて2022年に日本市場に再上陸したヒョンデの代表モデルがアイオニック5だが、これに「N」の文字がつくとまったく普通のEVではない。Nはヒョンデのソウル近郊の開発拠点であるナムヤン(南陽)と開発テストの舞台であるニュルブルクリンクにちなんだネーミングで、2015年にスタートした同社の高性能ブランドである。ご存じのとおりWRCのトップカテゴリーでトヨタとタイトルを争うラリー1マシン「i20 Nラリー1ハイブリッド」にもNの文字がついている。アイオニック5 NはそのNブランド初のEVモデルである。
ベース車はもちろんアイオニック5だが、戦闘的な前後の専用エアロパーツによってスタンダードモデルより長く(ホイールベースは同じ3000mm)、幅広く低く仕立てられている。前後アクスルに搭載されるモーターは、フロント用が238PS、リア用は412PSの最高出力を発生。最大トルクはそれぞれ370N・mと400N・m、トータルでは650PSと770N・mというものすごさだ。ただしこれは「N Grin Boost(NGB)」と称するブースト機能使用時(10秒間)のスペックで、通常は609PS/740N・mとなる。“Grin”とは英語で、ステアリングホイール右上の赤いボタンを押せば思わず笑いがこぼれるということらしい。このほかにも「N eシフト」や「Nアクティブサウンド+」などいちいち機能に名前がついているのが特徴的だ。
スタンダードのアイオニック5(AWD車)は合計305PSだったから倍以上の出力で、パフォーマンスは最高速260km/h、0-100km/h加速は3.4秒(NGB使用時)というから、まさにスーパースポーツ級である。ちなみに駆動用リチウムイオン電池の容量は84kWh(標準モデルのAWDは72.6kWh)、一充電走行距離はまだ発表されていない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ドリフト自在でへこたれない
サーキットとその近辺の一般道という事前試乗会だったが、EVでサーキットを(5周ぐらいとはいえ)思い切り走ってよし、という試乗会は珍しい。何しろごく一部を除いて、瞬発力は強力だが、それが長続きしないのがEVの弱点であり、サーキットで全開走行をするとほんの数ラップでシステムの温度が上がり、セーフモードに入ってしまうものがほとんどである。ところがこのアイオニック5 Nはサーキットでも、水をまいたパドックでドリフトを試すために(ほぼ後輪駆動になる「Nドリフトオプティマイザー」なる機能もあり)振り回したときも、まったくそんな気配も見せなかった。
聞けばニュルブルクリンク北コースを2周走れるという(40km以上の全力走行に耐えるということ。独『シュポルトアウト』誌の独自テストでは7分45秒を記録したという)。さらにもうすぐ韓国ではアイオニック5 Nをベース車としたワンメイクレースも始まるという。バッテリーのみならずシステム全体の温度制御とタフネスには自信たっぷりで、それをアピールするための舞台設定というわけだ。さらに冷却性能を最大化する「Nレースモード」では「スプリント」と「エンデュランス」というサブモードを選択できる徹底ぶりだ。
多機能すぎる?
一般道を走らせた限りでは乗り心地も悪くない。EVでは車重に対応するために固めた足まわりのせいで、突き上げとピッチングを抑えきれないクルマが多いが、電子制御可変ダンパーを備えたアイオニック5 Nは、もちろん締まった足まわりながら、ラフな突き上げを感じさせない。Nモデル化にあたって大幅に強化したボディー構造のせいか、スタンダードモデルよりもむしろ上等な乗り心地に感じられた。
もちろん選択モード(ステアリングホイール左上のボタンで選択。「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の基本モードあり)によっては(そのほかにNモードでカスタム1&2を設定可能)、EVらしいほぼ無音走行も可能だ。ちなみにNアクティブサウンド+(バーチャルサウンド)では3種類の音質、室内だけか車外にも発するか否か、そしてそのボリュームまでもタッチスクリーンでコントロールできる。
短時間ですべて試すには多機能すぎるし、ちょっと煩雑な感じもするが、細かなセッティングをあれこれと試したいモータースポーツ好きには歓迎されるかもしれない。サーキットで走らせてもおもちゃっぽさを感じさせない頑健さが備わっているアイオニック5 Nは限定50台の「ファーストエディション」も通常モデルも900万円前後になる見込みである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ヒョンデ・アイオニック5 N
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4715×1940×1625mm
ホイールベース:3000mm
車重:2210kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:238PS(175kW)/4600-1万rpm
フロントモーター最大トルク:370N・m(37.7kgf・m)/0-4000rpm
リアモーター最高出力:412PS(303kW)/7400-1万0400rpm
リアモーター最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/0-7200rpm
システム最高出力:650PS(478kW)
システム最大トルク:770N・m(78.5kgf・m)
タイヤ:(前)275/35ZR21 103V XL/(後)275/35ZR21 103V XL(ピレリPゼロ)
一充電走行距離:--km
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1316km
テスト形態:ロード&トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

高平 高輝
-
日産キックスG(FF)【試乗記】 2026.9.9 日産が満を持して投入したコンパクトSUVの新型「キックス」。Cセグメントに迫るサイズとなったこのモデルは、競合ひしめくマーケットで存在感を示せるのか? 上級グレード「G」の試乗を通し、ライバルに対するアドバンテージを探った。
-
マツダCX-5 L(FF/6AT)【試乗記】 2026.9.8 マツダの最量販SUV「CX-5」の最新モデルに試乗。計画外のフルモデルチェンジによって誕生した3代目は、走りや操作系などに、従来のマツダにはない新しい試みが見られる一台となっていた。失敗の許されない基幹モデルの仕上がりを報告する。
-
日産エルグランドG e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.9.7 「日産エルグランド」が16年ぶりのフルモデルチェンジを敢行。すでにプレミアムミニバンのジャンルは後発のライバルに席巻されている現状だが、日産はそのライバルとは別のアプローチ=走りの楽しさで復権を目指すという。その成否やいかに。
-
ランボルギーニ・レヴエルトSV(4WD/8AT)【海外試乗記】
2026.9.5 ランボルギーニの歴史において「SV」の2文字は特別な意味を持つ。その称号が与えられた、ハイブリッドの最新マシン「レヴエルトSV」の走りやいかに? イタリアのテストコースで試乗した西川 淳がリポートする。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.9.2 BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。
-
NEW
BMW X3 20 xDriveオリジナル(4WD/8AT)/X3 20d xDriveオリジナル(4WD/8AT)【試乗記】
2026.9.12試乗記「BMW X3」に新たなエントリーグレードの「オリジナル」が登場。装備の厳選によって価格抑制を図ったとのことだが、人気のディーゼルエンジン搭載車では、なんと基準車から100万円近く引き下げたというから見逃せない。安かろう悪かろうのはずはないと思いつつも、その仕上がりをチェックした。 -
徹底比較! 新型三菱パジェロ VS. トヨタ・ランドクルーザー
2026.9.11デイリーコラムいよいよ登場した新型「三菱パジェロ」。日本での公道デビューはもう少し先となるが、現状で公開されている情報から読み取れることはなにか? クロカン界の王者「トヨタ・ランドクルーザー“250”/“300”」との比較を通し、その実像に迫る。 -
思考するドライバー 山野哲也の“目”――レクサスRZ550e“Fスポーツ”編
2026.9.11webCG Moviesレーシングドライバー山野哲也がステアバイワイヤ採用のEV「レクサスRZ550e“Fスポーツ”」に試乗。ほかのクルマではなかなか味わえない走りの特徴について、プロの目線でリポートします。 -
1年目の通知表 新型「ホンダ・プレリュード」の販売実績は想定どおり?
2026.9.10デイリーコラムホンダが新型「プレリュード」を発売してから1年。デビュー1周年記念モデルともいうべき特別仕様車「2027リミテッドエディション」も登場した。現在までの販売実績を確認しながら、その人気や評判を探ってみた。 -
日産キックスG(FF)【試乗記】
2026.9.9試乗記日産が満を持して投入したコンパクトSUVの新型「キックス」。Cセグメントに迫るサイズとなったこのモデルは、競合ひしめくマーケットで存在感を示せるのか? 上級グレード「G」の試乗を通し、ライバルに対するアドバンテージを探った。 -
「レガシィ」登場からブーム到来、そして終焉へ 国産ステーションワゴン興亡史(後編)
2026.9.9デイリーコラム国産ステーションワゴン興亡史の後編。国産ワゴンの金字塔「スバル・レガシィ ツーリングワゴン」が1989年にデビューしたものの、やがて市場の人気はミニバンに流れ、退潮傾向が鮮明に。各社とも個性的なモデルの投入で最後の踏ん張りを見せるのだが……。
















































