アウディS3セダン(4WD/7AT)【海外試乗記】
熟成の極み 2024.05.24 アウトビルトジャパン アウディのハイパフォーマンスコンパクトモデル「S3」がマイナーチェンジ。いち早くドイツの自動車専門メディア『アウトビルト』のスタッフが試乗し、視覚的にも技術的にもブラッシュアップされたS3の走りを確かめた。※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。
0-100km/h加速タイムを0.1秒短縮
アウディのチーフデザイナーであるマルク・リヒテは、その名前に光(リヒテ)があるから、ライト関連のデザインにもこだわったのだろう(笑)。と、そんな冗談はさておき、実際にアウディS3のランプまわりを担当したのはザール・ムンターダである。
ライトエクスペリエンスデザインの責任者である彼は、“光の法王”とでも称すべき存在だ。このクルマには個別に調整可能なデイタイムランニングランプが装着されていて、最大4つの異なるライトシグネチャーを選択できる。車両のロック/アンロック時には、シックで小さな「ハロー&グッドバイ」を示すライトショーが行われるのも特徴だ。
エクステリア全体では、より低くよりワイドに見えるようにデザインされている。そうした新しい外装やライトメイクもユニークだが、S3のキモとなるのはやはりエンジンだ。2リッター直4ターボエンジンは、フェイスリフト前から存在するものではあるが、よりパワフルになった。
最高出力の333PSという数値は、ファンにとって最も重要なファクターだろう。ただ、そのパワーとリアアクスルに備わるトルクスプリッターの技術は、すでに「フォルクスワーゲン・ゴルフR」に設定された「20周年エディション」でもおなじみである。アウディS3とゴルフRは性能面でしばしばシンクロする。
メカニズムはゴルフ譲りではあるものの、パフォーマンスは申し分ない。トップスピードは依然として250km/hでリミッターがかかるが、0-100km/h加速タイムは従来の4.8秒から4.7秒に短縮された。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
リアビューは控えめな印象
冒頭に戻り、もう一度エクステリアデザインをじっくりと見ていこう。フロントの六角形グリルは健在だ。ただ、従来型よりもわずかに縦幅が狭められワイドになった。その新しい味つけはフロントスポイラーにもみられる。
「アウディA8」のフェイスリフトで初めて登場した小さなL字型の加飾がフロントグリルに採用されているのも、新しいS3の特徴だ。リアから見ると、2分割のディフューザーとリアコンビランプがリニューアルされていることにも気づくだろう。
試乗車のリアバンパー下部からはアクラポヴィッチの新しいチタン製エキゾーストパイプが顔をのぞかせていた。しかしこれは、有償のオプションアイテムである。
S3が日常的なスポーツカーでありたいと願っている以上、ラゲッジスペースはやはり重要だ。380リッターの容量を誇る「A3スポーツバック」とは異なり、S3では「セダン」も「スポーツバック」もその容量は325リッターとなる。リアシートを倒せば、最大1145リッターまで拡大可能である。これらの数値はすべて従来モデルと同じだ。
こうした数値を頭に入れながら車両を見たせいだろうか、S3のリアビューは、そのスポーティーさとは裏腹に控えめに感じる。
インテリアは小変更にとどまる
2つの液晶スクリーンがコックピットを支配するインテリアはあまり変わっていない。ダークカラーをベースとし、シルバーのダブルステッチや「S」ロゴなどがアクセントになっている。
ボトムがフラット化されたステアリングホイールにはクロームメッキ仕上げのシフトパドルが新たに採用され、アルミルックのペダルも装備される。ヘッドレスト一体型のスポーツシートには、横方向のサポート力を高める大型のサイドボルスターが備わる。これらはもちろんS3用のアイテムである。マイクロファイバーやカーボン、アルミニウム、テクニカル構造(アウディではこう呼ぶ)の内装材が用意されるのもS3のインテリアにおける特徴だ。
ホイールは18インチサイズが標準仕様で、S3をさらにスポーティーにする19インチホイールも2種類用意されている。ちなみに、ホイールの裏側には大型のブレーキが隠されている。パワーとパフォーマンスが向上すれば、それに伴って制動に対する要求も高くなる。ブレーキディスクは従来よりも4mm厚くなり、ブレーキキャリパーには新しいダブルピストンが採用されている。
オプションは魅力的だが……
前述したように、標準のS3ではまだおとなしすぎるという人はサウンドのスペシャリスト、アクラポヴィッチのチタンエキゾーストシステムを選ぶことができる。ただ、こうした魅力的なオプションアイテムを選択していくと、スポーツバックが5万5600ユーロ、セダンが5万6400ユーロというS3の価格は、すぐに7万5000ユーロ~8万ユーロ(約1240万円~1320万円)へと跳ね上がってしまう。
結論
アウディS3は、フロントヘッドランプの小さな光をエンターテインメント化したことも含め、明らかにスタイリッシュでダイナミックになった。それは現行S3の最終進化形といえる熟成である。
(Text=Dennis Petermann/Photos=アウディ)
記事提供:AUTO BILD JAPAN Web(アウトビルトジャパン)
拡大 |

AUTO BILD 編集部
世界最大級のクルマ情報サイトAUTO BILDの日本版。いち早い新車情報。高品質なオリジナル動画ビデオ満載。チューニングカー、ネオクラシックなど世界のクルマ情報は「アウトビルトジャパン」でゲット!
-
【ニュース】高性能を誇るBMWのラグジュアリーエステート「M5ツーリング」が復活! その魅力とは? 2024.9.6 高性能サルーン新型「BMW M5」に続き、そのワゴンバージョンたる新型「M5ツーリング」が登場。ユーティリティーからスリルまで幅広いニーズをパーフェクトに満たす“スーパーワゴン”とは、どんなクルマなのか?
-
MINIクーパーSE(FWD)【海外試乗記】 2024.8.21 電気自動車でも内燃機関車でも、常に「クーパー」と呼ばれるようになった新型MINIのハッチバック。価格にデザイン、パワーユニット、装備、そしてドライビングテストリポートと、新しくなったMINIクーパーの全情報をお届けする!
-
スズキ・スイフト(FF/5MT)【海外試乗記】 2024.8.20 世界で900万台以上が販売されてきた大人気モデル「スズキ・スイフト」。7代目となる新型は、海外でどのように評価されているのか? これまでの成功をさらに発展させることを目指し、スズキが投入した小さな巨人に、『AUTO BILD』のスタッフが試乗した。
-
スマート#1ピュア(RWD)/#1ブラバス(4WD)【海外試乗記】 2024.8.20 続々とラインナップを拡大している、スマートブランドのフル電動SUV「スマート#1」とはどんなクルマなのか? その価格とデザインからパワーユニット、イクイップメント、試乗した印象まで、すべての情報をお届けしよう。
-
【ニュース】電動ルノー・トゥインゴの最新情報 2024.8.15 ルノーの電気自動車(BEV)を手がける新会社アンペアが、2025年にコンパクトBEVとして「トゥインゴ」を復活させる。初代トゥインゴを想起させるデザインや価格、そしてパワーユニットまで、現時点でのすべての情報をお届けする。
-
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。 -
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――ロータス・エメヤR編
2025.12.3webCG Movies往年のピュアスポーツカーとはまるでイメージの異なる、新生ロータスの意欲作「エメヤR」。電動化時代のハイパフォーマンスモデルを、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんはどう見るのか、動画でリポートします。 -
タイで見てきた聞いてきた 新型「トヨタ・ハイラックス」の真相
2025.12.3デイリーコラムトヨタが2025年11月10日に新型「ハイラックス」を発表した。タイで生産されるのはこれまでどおりだが、新型は開発の拠点もタイに移されているのが特徴だ。現地のモーターショーで実車を見物し、開発関係者に話を聞いてきた。 -
第94回:ジャパンモビリティショー大総括!(その3) ―刮目せよ! これが日本のカーデザインの最前線だ―
2025.12.3カーデザイン曼荼羅100万人以上の来場者を集め、晴れやかに終幕した「ジャパンモビリティショー2025」。しかし、ショーの本質である“展示”そのものを観察すると、これは本当に成功だったのか? カーデザインの識者とともに、モビリティーの祭典を(3回目にしてホントに)総括する! -
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】
2025.12.3試乗記「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。































