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第285回:2000万円の護送車

2024.06.03 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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カラオケルーム風の個室

「今度、『レクサスLM』にお乗りになりますか」

担当サクライ君からのメールに、いつのもように「乗る乗る~」と返信し、正座して当日を待った。

今や日本の最高級車は、実質的には「トヨタ・アルファード」だ。しかしアルファードには、「センチュリー」のような華族感はない。

思えばセンチュリーはすごかった。先代のV12エンジンは、スムーズすぎるうえにパワーがあんまりなかったので存在感ゼロ。その謙譲精神は、フェラーリ12気筒やジャガー12気筒に匹敵する個性だった。現行センチュリーはV8ハイブリッドになったが、乗り心地の素晴らしさは「ロールスロイス・ファントム」を超えていた。

アルファードは現在、センチュリーに取って代わる存在となったが、さすがに世界の名車に肩を並べるほどの部分はない。レクサスLMなら、それがあるかもしれない。

当日午後8時、サクライ君がやってきた。始めて見る実物の「レクサスLM500h“エグゼクティブ”」は、写真同様、顔がイカみたいだった。

オレ:せっかくだからまず後席から乗っていい?
サクライ:どうぞどうぞ。こちらが2000万円のエグゼクティブルームです。

スライドドアが開いた。そこにあったのは黄金の茶室……ではなく、カラオケルーム風の小さな個室だった。

2023年10月に国内導入が発表されたレクサスの高級MPV「LM500h」。LMという車名は「ラグジュアリームーバー」を意味したもので、ショーファーカーとしてのニーズが想定されている。
2023年10月に国内導入が発表されたレクサスの高級MPV「LM500h」。LMという車名は「ラグジュアリームーバー」を意味したもので、ショーファーカーとしてのニーズが想定されている。拡大
今回は、ゆとりあるぜいたくな後席が自慢の4人乗りモデル「LM500h“エグゼクティブ”」に試乗した。車両本体価格は2000万円。外板色は写真の「ソニックチタニウム」を含む、「ソニッククォーツ」「グラファイトブラックガラスフレーク」「ソニックアゲート」の全4色展開となる。
今回は、ゆとりあるぜいたくな後席が自慢の4人乗りモデル「LM500h“エグゼクティブ”」に試乗した。車両本体価格は2000万円。外板色は写真の「ソニックチタニウム」を含む、「ソニッククォーツ」「グラファイトブラックガラスフレーク」「ソニックアゲート」の全4色展開となる。拡大
「LM500h“エグゼクティブ”」の後席空間は、もはや小さな部屋だった。ゴージャスというよりも、シンプルなインテリアで、居心地の良い上質な空間をつくろうとしているようだった。
「LM500h“エグゼクティブ”」の後席空間は、もはや小さな部屋だった。ゴージャスというよりも、シンプルなインテリアで、居心地の良い上質な空間をつくろうとしているようだった。拡大
最新のレクサスに共通する「Tazuna Concept」に基づいたデザインが採用されるコックピット。メータークラスターには12.3インチ、センターディスプレイには14.1インチの液晶パネルが配置される。
最新のレクサスに共通する「Tazuna Concept」に基づいたデザインが採用されるコックピット。メータークラスターには12.3インチ、センターディスプレイには14.1インチの液晶パネルが配置される。拡大
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パーティションの窓は閉めないで!

オレ:へ~、あんまりゴージャスじゃないんだね。
サクライ:そうですか? モニターつけてみましょうか?

サクライ君が後席の巨大モニターのスイッチを入れた。すると巨大なピカチュウが2匹並んで映った。

オレ:うわ! なにこれ!
サクライ:これはテレビですね。地デジのどこかのチャンネルみたいです。

後席モニターの巨大さは「BMW i7」を圧倒している。さすがレクサス。しかしピカチュウがよく似合って見えたのも事実である。さすが動くカラオケルーム。

走りだしてすぐ、私は目まいを感じた。近い距離に大きなモニターが2台並んでテレビ番組を映しているので目が回る。モニターが巨大なぶん、前席との間にあるパーティションの窓の上下幅は小さく、護送車に閉じ込められたようだ。こりゃたまらん。私はモニターを消して運転席のサクライ君に叫んだ。

オレ:窓が小さいね!
サクライ:ですか? こうもできますよ。

パーティションの窓が閉まり、曇りガラスに変身した。ひいいいいい! これはもう完全に護送車だ。頼むから透明に戻してけろ~!

前席と後席を区切るパーティションに、アスペクト比32対9の48インチ大型ワイドディスプレイが組み込まれている。今回、走行中に巨大なピカチュウが登場するテレビ番組を視聴したが、残念ながらその写真は大人の事情で紹介できません。
前席と後席を区切るパーティションに、アスペクト比32対9の48インチ大型ワイドディスプレイが組み込まれている。今回、走行中に巨大なピカチュウが登場するテレビ番組を視聴したが、残念ながらその写真は大人の事情で紹介できません。拡大
パーティション上部には、遮音性に優れる昇降/調光ガラスを採用。調光スイッチの操作によって、ガラスの透明/不透明を一瞬で切り替えられる。
パーティション上部には、遮音性に優れる昇降/調光ガラスを採用。調光スイッチの操作によって、ガラスの透明/不透明を一瞬で切り替えられる。拡大
室内照明を最小限にして首都高をドライブ。遠くにレインボーブリッジが見える。パーティションの窓の上下幅が小さいので、乗ったことはないがなんだか護送車に閉じ込められたような気分になった。
室内照明を最小限にして首都高をドライブ。遠くにレインボーブリッジが見える。パーティションの窓の上下幅が小さいので、乗ったことはないがなんだか護送車に閉じ込められたような気分になった。拡大
「レクサスLM500h“エグゼクティブ”」のボディーサイズは全長×全幅×全高=5125×1890×1955mm。実に堂々としたたたずまいである。
「レクサスLM500h“エグゼクティブ”」のボディーサイズは全長×全幅×全高=5125×1890×1955mm。実に堂々としたたたずまいである。拡大

後席より運転席のほうがカイテキ?

LMはいつものように首都高に乗り入れ、快調にコーナーをクリアしたが、私のクルマ酔いは徐々にひどくなり、目をつぶって耐えた。辰巳PAに到着して外に出たときはフラフラだった。

オレ:このクルマ、ダメだわ……。気持ち悪くなっちゃった。
サクライ:そうですか。残念です。
オレ:交代して体験してみてよ! 護送車に乗せられた気分だから!
サクライ:了解です。

LMのステアリングを握って首都高を走り始めると、私のクルマ酔いはピタリと収まった。速いし操縦性がいいっ! ついコーナーを攻めたくなる! そういえばサクライ君もかなりコーナーを攻めていた。おかげで気持ち悪くなったが、とにかく後席より運転席のほうがぜんぜんカイテキである。

「アルファード エグゼクティブラウンジ」の後席は、もっとステキだった。パーティションがないので前がよく見え、開放感があった。対するレクサスLM500h“エグゼクティブ”の後席は、狭いカラオケルームでしかない。ならばシャンデリアやミラーボールをつけて、もうちょっと派手に盛り上げてもらいたい。

レクサスのオフィシャルウェブサイトによると、LM500h“エグゼクティブ”の納期は2.5カ月~3カ月となっている。驚くべき短さだ。LMの購入を検討した富裕層も、パーティションで気持ち悪くなったのかもしれない。

ちなみにサクライ君は「とても快適でした」。さすが庶民は頑丈だぜウフフフフ~。

(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)

担当サクライ君の運転のせいなのか後席に座って気分が悪くなったので、帰りは運転席に収まった。カーマニア的には後席より運転席のほうがぜんぜんカイテキ! これは発見だった。
担当サクライ君の運転のせいなのか後席に座って気分が悪くなったので、帰りは運転席に収まった。カーマニア的には後席より運転席のほうがぜんぜんカイテキ! これは発見だった。拡大
2.4リッター直4ターボエンジンとフロントモーター、「eAxle」と呼ばれる高出力リアモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用。371PSのシステム最高出力を誇る。
2.4リッター直4ターボエンジンとフロントモーター、「eAxle」と呼ばれる高出力リアモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用。371PSのシステム最高出力を誇る。拡大
以前『カートップ』誌の取材にて、美人秘書役(レースクイーン・林紗久羅さん)と「アルファード エグゼクティブラウンジ」の極上空間を堪能。それはまさに極楽浄土であった。アルファード最高! まぁ、隣に美人秘書がいればどんなクルマでも極楽浄土かもしれないが。
以前『カートップ』誌の取材にて、美人秘書役(レースクイーン・林紗久羅さん)と「アルファード エグゼクティブラウンジ」の極上空間を堪能。それはまさに極楽浄土であった。アルファード最高! まぁ、隣に美人秘書がいればどんなクルマでも極楽浄土かもしれないが。拡大
現在「LM500h“エグゼクティブ”」の納期は2.5カ月~3カ月と、意外にも短い。ショーファーカーをお考えの富裕層の皆さん、注目です。
現在「LM500h“エグゼクティブ”」の納期は2.5カ月~3カ月と、意外にも短い。ショーファーカーをお考えの富裕層の皆さん、注目です。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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