「なんだかクルマがつまらない」のはどうしてか?

2024.07.09 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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昔に比べて、最近のクルマはつまらない、どれも同じだと感じています。周りのクルマ好きも同様のことを言うのを聞いていると、自分に限った印象とも思えません。多田さんご自身はどうお考えですか? 「わくわくドキドキするクルマを……」とうたうメーカーは多々ありますが、そのためには何が重要だと思いますか?

これはもう成熟商品だからというに尽きるのですが、それでは、身もふたもないですね。

たしかに「クルマがつまらない」というご意見はよく耳にします。でも、「どんなクルマなら欲しいですか?」と問えば、汎用(はんよう)性のある、多くの人が思っているような答えはなかなか返ってきません。たまに「〇〇なクルマがいい」という具体的な例も挙がるのですが、実際に出たら購入されるかというと、そこまで求められているわけでもないという……。

かつては100km/h出すのも大変という時代があって、そのころクルマは目に見えて良くなったものです。自動車が誕生して100年以上、日本で普及して50年余り。普通の人が思うようなネガな面も、こうなったらいいなという移動の道具としての楽しみも、ほぼほぼクリアされてしまいました。

いま一生懸命メーカーが改良しているのは、環境性能だったり、衝突安全性能だったり。そこにお金を注力して良くはなっているものの、そういうところで人々がわくわくドキドキすることはありません。

別の製品を挙げるなら、例えばスマートフォン。登場から10年ほどであっという間に進化して、最近は多くの人が「正直、もう買い替えなくてもいいよなぁ」という気持ちになっていると思います。製品が陳腐化するスピードもどんどん上がってきていますね。

自動車メーカーも、クルマ自体に昔のわくわくドキドキを求めて、その手の開発会議はものすごくたくさんやってきています。そういうなかでFRスポーツカーの「86」も生まれたわけですが、それももう、10年も前のことです。

私としては、たまには、逆に読者の方に聞いてみたいのです(笑)。皆さんは、どういうクルマならわくわくドキドキするでしょうか? おそらくそれは人ごとに細分化されていて、“こうしたクルマのこんな仕様”というかたちで答えられるのかもしれません。

ちなみに、私自身が「こんなのが出てきたらワクワクするなぁ」と思うのは、最近では見られなくなってきた「軽トラのターボモデル」です。

軽トラは日本の道に合ったサイズで、小回り性や積載性などの点で最高に便利。基本FRなのでその気になれば振り回せるし(笑)、安定・安心を求めるなら4WD車もある。かつて試乗経験のある軽スポーツ「ホンダS660」に通じる運転の楽しさがあります。ビッグキャビンタイプならなお快適。ここに、あともうちょっとトルクがあれば、言うことなしなんです。

クルマ好きの皆さん、わくわくドキドキするクルマって、どんなクルマですか? そのために何が必要ですか? ぜひ聞かせてください。それを受けて、また考えをお伝えできればと思っています。

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多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。