スバル・クロストレック プレミアムS:HEV EX プロトタイプ(4WD/CVT)
ストロングスタイルで勝負 2024.10.17 試乗記 「スバル・クロストレック」にハイブリッドモデルの「S:HEV」が登場。もちろん自慢の水平対向エンジンとシンメトリーAWDはそのままに豊かなパワーと優れた燃費を実現した、スバルが言うところの「ストロングハイブリッド」である。プロトタイプモデルの仕上がりをリポートする。フルハイブリッドのクロストレック
「これであともう少しだけ燃費が良ければ言うことなしなのに」
たとえ熱心なスバリストであっても認めざるを得ないスバルの弱点はもうその一点と言っていい。自慢の水平対向エンジンとシンメトリーAWD技術の裏返しともいえる短所なのが痛しかゆしだが、いかに走行性能に秀でていても、このご時勢にあっては肩身が狭い。電気自動車もあるよ、とはいっても売れなければ(登録されなければ)カウントされない。燃費が良く、そして売れるモデルの投入が急務だったスバル待望の本格的ハイブリッドモデルがクロストレックS:HEVである。
それまでの「XV」改め、国内でもクロストレックを名乗ることになった現行型は2022年末の発売。日本向けは2リッター4気筒ボクサーエンジンにモーターを組み合わせたいわゆる「e-BOXER」のみの設定だ(「インプレッサ」には純エンジン車もあり)。e-BOXERももちろんハイブリッドではあるが、モーターの最高出力/最大トルクが13.6PS/65N・m、駆動用リチウムイオンバッテリーの容量が0.6kWhではおのずと限界があり、実用燃費は芳しいものではなかった。
現行型クロストレックのWLTCモード燃費は15.8km/リッターというものだが、ご存じのように普通に走ると平均燃費はだいたい10km/リッターがいいところで、純ガソリンモデルとの大きな違いはなかった。じんわりと踏み込めば低速ではモーターだけの走行も可能とはいえ、ちょっとでも踏み増すとすぐにエンジンが始動するし、アシストもごく短時間であり、一般的なマイルドハイブリッドと同レベルのものだった。
e-BOXERとはケタ違い
それに対してようやくというか、満を持してというか、新たに追加されたS:HEVでは駆動用モーターの最高出力と最大トルクは119.6PSと270N・mというからまさしくケタ違い(ちなみに現行型「プリウス」の2リッター用モーターは113PS/206N・m)。バッテリー容量は1.1kWhで、さらにエンジンも自然吸気の2.5リッター4気筒ボクサーが搭載されており、エンジン単体でも160PS/5600rpm、209N・m/4000-4400rpmを生み出す。現行e-BOXERの2リッター4気筒は145PSと188N・mだから、だいぶパワフルだ。
発電用と駆動用の2基のモーターは電子制御カップリングなどとともに縦置きのトランスミッションに内蔵されている。クロストレックにはFWDモデルも設定されているがS:HEVはプロペラシャフトを持つAWDのみとなる。実は先代クロストレックには北米向けに「THS II」を下敷きにしたプラグインハイブリッド車(PHEV)が存在した。容量8.8kWhのバッテリーを搭載した2リッター4気筒+モーターのPHEV(電動走行距離27km)だったが、今回は重量やコストなどのバランスを考えて、外部充電はできないハイブリッドを選んだという
このフルハイブリッドモデルは従来のe-BOXERを置き換えるのではなく、「プレミアムS:HEV」と「プレミアムS:HEV EX」という2モデルが、従来の「ツーリング」および「リミテッド」の上位グレードとして追加される。S:HEVはストロングハイブリッドおよびスバルらしいハイブリッドを意味するらしいが、これまでのe-BOXERも継続して販売されるうえに、新型のストロングハイブリッドにも「e-BOXER」のエンブレムが装着されるので(字体はわずかに違う)、正直紛らわしいというか、もう少し何とかならなかったのかという気がする。価格はまだ発表されていないが、これまでのリミテッド(AWD)に対しておよそ35万円高、「アイサイトX」やフル液晶メーターなどを装備する最上級グレードのプレミアムS:HEV EXはその20万円高というイメージらしい。
荷室だけわずかに影響あり
新型ストロングハイブリッドとこれまでのe-BOXERとの違いを見分けるのは難しい。ボディー寸法やホイールベースはまったく同一、外観の違いは見比べないと違いが分からないエンブレムとアルミホイールのデザインのみにとどまる。「いまさらフルハイブリッドですとアピールするのもなんなので」ということらしいが、価格ははっきり上昇しながら見た目変わらず(ついでにネーミングのセンスも)、をユーザーがどう判断するかは分からない。
室内スペースへの影響もまったくなし、と言いたいところだが、荷室床下にバッテリーなどを積むためにラゲッジスペースだけはフロアが20mm高くなっており、それに伴って荷室容量は279リッターに減少している(現行e-BOXERは311リッター)。それでもパッケージングを工夫することで燃料タンク容量は48リッターから63リッターに拡大されており、さらに注目のモード燃費が約2割向上していることと合わせて航続可能距離は現行型の5割増しを主張している。海外市場だけでなく、国内でも一気に長距離を走る人には歓迎されること間違いなしだ。
今度は実感できる
試乗会といっても発売前のプロトタイプであり、試乗の舞台もシーズンオフのスキー場内に限られたため肝心の実用燃費などを確認することはできなかったが、それでも見違えるような力強さは明らかだ。スバルによれば0-100km/h加速は現行型クロストレックよりも2.1秒短縮されたという。フルハイブリッド化によって車重は50kgほど増えているというが、おそらく現行プリウス並みのパフォーマンスを備えているはずだ。
実際、ちょっと踏み込むだけで上り坂もものともせずグイッと加速する。エンジンおよびモーターのパワーの余裕はてきめんで、エンジンが始動しても滑らかに一気にスピードが乗る。前日の雨でぬかるんだ草地でもさすがはスバルという走破性を見せた。S:HEVには「EVモード」スイッチも備わるが、バッテリー残量が十分でないと受け付けないようで、試乗コースではEVモード走行を試すことはできなかった。従来のクロストレックの出来栄えを考えても、走りっぷりはおそらく文句ないはずだ。あとは本当に実用燃費が他のハイブリッドに比べて遜色ないものになっているのかだが、それはもう少しお待ちいただきたい。
(文=高平高輝/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
スバル・クロストレック プレミアムS:HEV EX プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4480×1800×1580mm
ホイールベース:2670mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:160PS(118kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:209N・m(21.3kgf・m)/4000-4400rpm
モーター最高出力:119.6PS(88kW)
モーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(ファルケン・ジークスZE001A A/S)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラック&オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
-
ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド アップランド(4WD/6AT)【試乗記】 2026.5.6 ジープのなかでも最も小柄な「アベンジャー」に、4WDのマイルドハイブリッド車「4xe」が登場。頼りになるリアモーターと高度なマルチリンク式リアサスペンションを備えた新顔は、いかなる走りを見せるのか? 悪路以外でも感じられる、その恩恵を報告する。
-
アルファ・ロメオ・ジュニア エレットリカ プレミアム(FWD)【試乗記】 2026.5.5 アルファ・ロメオのコンパクトSUV「ジュニア」にラインナップする電気自動車「ジュニア エレットリカ プレミアム」に試乗。1973年型の「GT1600ジュニア」を所有していたかつてのアルフィスタは、最新のフル電動アルファに触れ、何を感じたのか。
-
トヨタGRヤリス/GRカローラ/GRヤリスMORIZO RR プロトタイプ【試乗記】 2026.5.4 進化を続ける「トヨタGRヤリス」と「GRカローラ」の、最新バージョンに試乗。硬派な4WDスポーツならではの、サスペンションチューニングの難しさを知るとともに、100台の限定モデル「GRヤリスMORIZO RR」に、そのひとつの回答を見いだすことができた。
-
シトロエンC5エアクロス マックス ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.5.2 シトロエンのコンセプトカー「OLI(オリ)」の思想を継承する新デザイン言語を用いた2代目「C5エアクロス」が上陸。ステランティスの最新プラットフォーム「STLAミディアム」や48Vマイルドハイブリッド機構によってどう進化したのか。その走りを報告する。
-
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】 2026.5.1 英国の名門アストンマーティンのスポーツモデル「ヴァンテージ」が、「ヴァンテージS」に進化。より高出力なエンジンと進化した足まわりを得たことで、その走りはどのように変わったのか? パフォーマンスを存分に解放できる、クローズドコースで確かめた。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――ホンダ・プレリュード編
2026.5.8webCG Movies新型「ホンダ・プレリュード」に試乗した元トヨタの多田哲哉さんは、大いに感心した様子。一体、どんなところがベテランエンジニアの印象に残ったのでしょうか? 動画でリポートします。 -
NEW
新型「スカイライン」はこうなる! 各発表情報から日産の伝統的セダンの未来を探る
2026.5.8デイリーコラム日産が、正式にその存在を明らかにした新型「スカイライン」。1957年からの歴史を誇り、熱心なファンを抱える日産伝統のスポーツセダンは、次期型でいかなる姿となるのか? 日産が発表したさまざまな情報をもとに、その未来像を考察した。 -
思考するドライバー 山野哲也の“目”――ホンダ・プレリュード編
2026.5.7webCG Movies「ホンダ・プレリュード」には昔から思い入れがあったと語る、レーシングドライバー山野哲也さん。では、ハイブリッドモデルとして復活した新型に、ワインディングロードで試乗した印象は? -
第960回:レクサスは欧州人のマナーを変えた? 「ミラノ・デザインウイーク2026」の自動車ブランド出展から
2026.5.7マッキナ あらモーダ!イタリア・ミラノで世界的なデザインの祭典「デザインウイーク」が開催された。アウディ、レクサス、ルノー、イタルデザイン……と、自動車関連の出展も数多く見られた会場の様子を、伊在住の大矢アキオがリポート。今回はどんな展示が注目を集めていたのか? -
世界遺産・高野山で大型電動バス「BYD K8」の営業運行がスタート その狙いとは?
2026.5.7デイリーコラム和歌山の南海りんかんバスが、世界遺産・高野山でBYDの大型電動バス「K8」の運行を開始した。現地にPHEV「BYDシーライオン6」で向かい、実際に高野山を巡るルートで電動バスに乗車しながら観光地における電動バスの役割を考えた。 -
三菱デリカD:5 P(前編)
2026.5.7あの多田哲哉の自動車放談さまざまなクルマの開発を取りまとめてきた多田哲哉さんが今回試乗するのは、年々人気が高まりつつある三菱のミニバン「デリカD:5」。その最新型に触れて、多田さんの印象に残ったこととは?




















































