メルセデス・ベンツV220dエクスクルーシブ ロング プラチナムスイート(FR/9AT)
働き者もドレスアップ 2024.12.06 試乗記 メルセデス・ベンツのミニバン「Vクラス」がマイナーチェンジ。トヨタ&レクサスが火をつけたのかどうかは分からないが、新たなフロントマスクによって押し出し感がグッとアップした。ドライブした印象をリポートする。飾りじゃないのよ送迎は
ミニバン大国わが日本の「アルファード/ヴェルファイア」ほど至れり尽くせりの工夫にあふれているとはいえないが、人も荷物も満載して遠くまでガンガン走る場合には、やはり頼りになるのがメルセデス・ベンツのミニバンVクラスである。VIP用の絢爛(けんらん)豪華な移動車というよりは、ちょっぴりガサツで「ハイエース」寄りともいえるが、酷使に耐えるそのたくましさには以前から定評がある。
ロングドライブでの実用燃費(WLTCモードは12.6km/リッター、しかも軽油だ)で選ぶ人も多いはずである。実際に1998年の初代モデルから現在までの国内累計販売台数はおよそ3万台というから、底堅い需要に支えられたロングセラーモデルといえるだろう。
質実剛健、タフで頼りになるピープルムーバーとしての実力は明らかで、私も何度もお世話になったことがある。スペインの地中海沿いの高速道路を早朝のフライトに間に合うように、ぎゅうぎゅう詰めになりながら目いっぱい飛ばす車内で不安になったこともあるが、もちろん問題なかった。タイトなスケジュールでの送迎は飾りじゃないのである。
そのVクラスが大規模なマイナーチェンジを受けて、よりラグジュアリーに生まれ変わったという。新しいVクラスにはこれまでどおり標準と「ロング」、そして「エクストラロング」の3種類のボディーが用意されているが、試乗会ではこのうちロングボディーの「エクスクルーシブ」、しかも上級仕様の「プラチナムスイート」を試した。これ以上ないぐらい豪華なネーミングである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
インストゥルメントも最新バージョン
ロングボディーはホイールベース3200mmで全長は5140mm(標準ボディーは同じホイールベースだが全長は4895mm)。ホイールベース3430mmで全長5370mmのエクストラロングほどではないが、日本の道ではちょっとちゅうちょするぐらいの大きさだ。
そのボディーに付くフロントグリルはさらに大型化されたから迫力もこれまで以上。さらにエクスクルーシブは横桟グリルにスリーポインテッドスターのボンネットマスコット付きという伝統的なデザインだ。今やコンパクトハッチからSUVに至るまで全部が全部「グリルスター」になったメルセデスだが、新型「Eクラス」にも同様のグリルを採用したモデルがラインナップされるなど、少し揺り戻しが来ているのかもしれない。
プラチナムスイートは室内もいわばファーストクラス仕様で、全席ナッパレザーシートにアルミトリム、2列目には左右独立式のエクスクルーシブシートが標準で装備される(定員は7人)。フットレストやリクライニング、ヒーター/ベンチレーション、リラクゼーション機能も盛り込まれた王様シートである。またVクラスは2/3列目シートを取り外すこともできるのが特長だが、とにかく頑丈で重いシートは動かすだけでも骨が折れるのもまた知られたところ。今回も手を出さなかった。ただしラゲッジスペース容量は1030~4650リッターと広大である。
インストゥルメントも一気に最新バージョンになった。横長の一体式ディスプレイやプッシュ式スタートボタン、タッチスイッチ付きステアリングホイールや第2世代の「MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザーエクスペリエンス)」など、もう他のメルセデス各車と比べてもまったく遜色ない。
2年前に換装されていたディーゼルターボ
現行型Vクラスは2014年発売の通算3世代目であり、これまでの間に何度かマイナーチェンジを受けているが、なかでも2022年にディーゼルターボエンジンが他のメルセデス各車と同じ最新のOM654型に換装されたことが見逃せない。その際に変速機も7段から9段の「9Gトロニック」にアップグレードされている。
実はそれまではVクラス(日本仕様)のみひと世代前のOM651型2.2リッター直4ディーゼルターボを搭載していた。現在のメルセデス各モデルに広く搭載されているOM654型は排気量こそ2リッターに若干縮小されたが、オフセットクランクの採用やピストン材質の変更などによって、徹底的なフリクション低減を図り、燃費や静粛性を向上させた最新仕様である。ゆえに今回はパワートレインは従来どおり、ということになる。Vクラス用は最高出力163PS/3800-4400rpmと最大トルク380N・m/1600-2400rpmを生み出す。
ロングボディーの豪華仕様ということで車両重量は2530kgもあるが、その巨大な箱を過不足なく走らせるパワートレインのたくましさ、扱いやすさはさすがである。もちろん俊敏というわけではないが、2リッター4気筒でも歯がゆい思いをすることはまずないはずだ。ディーゼルノイズも以前の2.2リッターよりは明らかに小さく、走行中はほとんど意識することがない。ちなみに日本仕様はディーゼルターボ搭載の後輪駆動で右ハンドルのみ。スタンダードモデルは940万円だが、このエクスクルーシブ ロング プラチナムスイートは1355万円である。
ロング以上はエアサスペンション装備
最新型で注目されるのは、標準ボディー車以外の全車に「AIRMATICサスペンション」が採用されたこと(標準ボディーは機械式減衰力切り替えの「アジリティーコントロールサスペンション」)。積載量による荷重変化が大きいミニバンには願ってもない装備である。
車高調整機能も有効だが、さらにドライバーひとりの“空荷”で乗った場合でも、いかにも頑丈そうだがちょっと商用車然とした明確な突き上げは減っている。ただし、ボディーの遠くのほうで何かが震えている感じや音が伝わってくる場合もある。これだけ大きな、重い箱を走らせるのだから、セダン並みとはいかないことは納得すべきところだろう。
その代わりではないけれど、山道を走ってもやわなところや頼りなさを感じないのが特長である。コーナリングにも不安なし、どこまででも走ってみせますよ、と言いたげな安定感が実に頼もしい。やはりVクラスはどんなにゴージャスに装っても働くクルマの仲間である。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツV220dエクスクルーシブ ロング プラチナムスイート
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5140×1930×1880mm
ホイールベース:3200mm
車重:2530kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:163PS(120kW)/3800-4400rpm
最大トルク:380N・m(38.7kgf・m)/1600-2400rpm
タイヤ:(前)245/45R19 102Y/(後)245/45R19 102Y(コンチネンタル・プレミアムコンタクト6)
燃費:12.6km/リッター(WLTCモード)
価格:1355万円/テスト車=1355万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1522km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
-
BMW iX M70 xDrive(4WD)【試乗記】 2026.3.23 BMWが擁するSUVタイプの電気自動車「iX」。そのハイパフォーマンスモデルが「iX M70 xDrive」へと進化を遂げた。かつて、BMWの志向する次世代モビリティーの体現者として登場した一台は、今どのようなクルマとなっているのか? その実力に触れた。
-
BMW i5 eDrive35LエクスクルーシブMスポーツ(RWD)【試乗記】 2026.3.21 BMWの「5シリーズ ロング」は知る人ぞ知る(地味な)モデルだが、実はエンジン車のほかに電気自動車(BEV)版の「i5 eDrive35L」も用意されている。まさに隙間産業的にラインナップを補完する、なんともニッチな大型セダンの仕上がりをリポートする。
-
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2026.3.20 民生用電気自動車のパイオニアである「日産リーフ」が3代目へとフルモデルチェンジ。シャシーや電池、モーターなどすべての要素を刷新し、もはやスペック上は何の不安もない水準にまで進化している。360km余りのドライブで実際のところを確かめた。
-
モト・グッツィV7スポルト(6MT)【レビュー】 2026.3.18 イタリアの名門、モト・グッツィのマシンのなかでも、特に歴史を感じさせるのがロードスポーツの「V7」だ。ファンに支持される味わい深さはそのままに、よりスポーティーにも楽しめるようになった最新型の実力を、上級グレード「V7スポルト」に試乗して確かめた。
-
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)/RAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】 2026.3.17 「トヨタRAV4」が6代目へと進化。パワートレインやシャシーの進化を図ったほか、新たな開発環境を採用してクルマづくりのあり方から変えようとした意欲作である。ハイブリッドの「Z」と「アドベンチャー」を試す。
-
NEW
フェラーリ・アマルフィ スパイダー
2026.3.25画像・写真フェラーリが2+2の優雅なオープントップモデル「アマルフィ スパイダー」を日本初公開。フェラーリならではの純粋な走りの高揚感と、4座オープンのパッケージがかなえる多様な体験価値を提供する一台を、写真で紹介する。 -
NEW
キャデラック・リリックV
2026.3.25画像・写真キャデラック初の電気自動車「キャデラック・リリック」をベースに開発された高性能バージョン「キャデラック・リリックV」が、2026年3月25日に日本上陸。その姿を写真で紹介する。 -
NEW
今やジャパニーズBEVもよりどりみどり 国産6ブランドのBEV&PHEVにまとめて乗った
2026.3.25デイリーコラム「ニッポンのBEVはまだまだ」のイメージをぬぐうべく、国産6ブランドがタッグを組んで計8モデル(一部はPHEV)を集めたメディア向け試乗会を実施。各社が目指す未来を学ぶとともに、最新モデルの仕上がりをチェックした。 -
NEW
第106回:さよならワグナー(前編) ―メルセデス・ベンツのデザインを変えた傑物の去就―
2026.3.25カーデザイン曼荼羅長年にわたりメルセデス・ベンツのデザインを指揮してきたゴードン・ワグナー氏が、ついに退任! 彼はドイツが誇る高級車ブランドになにをもたらしたのか? カーデザインの識者とともに、希代の傑物の足跡とメルセデスデザインの今昔を振り返る。 -
NEW
スズキGSX-8T(6MT)【レビュー】
2026.3.25試乗記昨今のネオクラシックブームに乗り、いよいよスズキからも新型車「GSX-8T」が登場。しかし実車に触れてみると、既存のライバルとはちょっと趣の異なるマシンとなっていた。スタイリッシュないでたちとスズキらしい実直さが融合した、独創の一台を報告する。 -
「空力性能」を追求すると、最終的にどのクルマも同じ形になってしまうのか?
2026.3.24あの多田哲哉のクルマQ&Aスポーティーな車種に限らず、空力性能の向上は多くのクルマの重要課題。しかし、それを突き詰めれば、どれも同じような形になってしまうのではないか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんはこう考える。














































