2025年は50周年! フォルクスワーゲンの小さな巨人「ポロ」の半世紀を振り返る
2025.01.27 デイリーコラム衝撃とともにデビュー
ドイツのフォルクスワーゲンを代表する車種といえば?
そんな問いに対して多くの人は「ゴルフ」と答えるのではないだろうか。もしかすると「ビートル(正式名はタイプ1)」という人もいるかもしれないけれど。
でも、今日のテーマはそのどちらもでない。ゴルフの弟分に相当する「ポロ」である。初代ポロがデビューしたのは、初代ゴルフが登場した翌年となる1975年。つまり今年、2025年は誕生50周年という記念すべき年なのだ。
デビューから5回のフルモデルチェンジを経た現行世代は6世代目で、累計販売台数は2000万台を超える(日本での販売も30万台を超えている!)。今回は、そんなポロの歴史を振り返ってみよう。
1975年にデビューし、1981年まで販売された初代ポロ。日本には正規導入されなかったこともあって、正直に言うと1976年生まれの筆者はまったく印象がないモデル(スイマセン!)だが、いま振り返って思うのはデザインが初代ゴルフによく似ているということ。同じメーカーのクルマとして統一感を持たせていただけでなく、ゴルフとの兄弟関係をアピールしたかったに違いない。
そして車体サイズが小さいことも特筆すべきポイント。全長はわずか3.5m。つまり現在の軽自動車規格と10cmしか違わないのだ。本当に小さい。これで4人の大人と荷物が積めるパッケージングとしていたのだから、デビュー時の衝撃は大きかったことだろう。
ちなみに型式は「86」。もちろんトヨタの「AE86」よりも初代ポロのほうが先輩である。
記憶に残るコンパクト
1981年に初のフルモデルチェンジで生まれた2代目は、見るからに初代からのキープコンセプトだ。この世代はヤナセを通じて日本でも販売されている。「ハッチバック」に「クーペ」と、リアのデザインが大きく違う2つのボディー(いずれも3ドア)を展開していたのもトピックだ。
驚くのは、1994年まで長きにわたりつくり続けられたということ(R35型の「日産GT-R」よりは短いけれど)。1990年のマイナーチェンジで角型ヘッドライトを手に入れたが、1990年まで丸型ヘッドライトを使っていたのも趣がある。そういえば兄貴分のゴルフも、1992年までつくられていた「ゴルフII」は丸型ヘッドライトだったっけ。
1994年に登場した3代目は、14年ぶりのモデルチェンジだけあってデザインが大きく変わって一気にモダンになった。フォルクスワーゲン ジャパンにより日本へも本格導入され、街なかでも多く見かけたポロだ。
ハッチバックに初めて5ドアが用意されたのもトピックだが、それ以上に大きな出来事は“初の「ポロGTI」”が登場したこと。GTIはエンジン出力を高めて専用のサスペンションなどを組み合わせた高性能仕様の“ホットハッチ”で、2000年から日本にも導入されている。
それから変化球として、1998年にはトヨタの関連会社であるモデリスタがプロデュースした「ポロbyモデリスタ」も登場。なぜ、一見無関係のトヨタ関連会社がかかわったかといえば、当時は「DUO」というトヨタ系列のディーラーが運営するフォルクスワーゲン販売店があったからなのだ。
より大きくパワフルに
2001年に本国で登場した4代目は、時代が求める衝突安全基準への適合などもあって車体サイズが大きくなったのがトピックだ。全長は20cm延びて3.9m。そして全幅は1.7m弱。これは「ゴルフII」とほぼ同じサイズである。
それはフォルクスワーゲンの車種ラインナップにも変化をもたらした。同社は1998年に、ポロよりひとまわり小さな「ルポ」を用意しているが、それはポロの大型化をフォローする意味もあったのだ。ある意味、4世代目はポロの立ち位置を変えた世代といっていいだろう。
デザインも意欲的だった。なんと、前期モデルは先祖返りして丸型ヘッドライトを採用していたのだ。しかし、後期型ではそれをやめているのは、評判があまりよろしくなかったからだろうか。
ホットハッチのGTIも先代に引き続き設定。そのうえで、「クロスポロ」というSUVテイストのモデルも新たに追加している。見た目やリフトアップスタイルはSUVクロスオーバーだが、タイヤは215/40R17とスポーツモデル仕立て。実際に運転してみると峠道をスイスイ走るオンロード志向のモデルだったのが意外だった。
続く5代目は2009年に登場。注目はなんといっても、ターボエンジンと、ポロ初となる「DSG」、いわゆるデュアルクラッチ式トランスミッションの採用だ。
しかも「採用した」なんてレベルじゃない。デビューから約1年間だけ販売された初期モデルは自然吸気エンジンだったが、それ以降はすべてターボエンジンを搭載。排気量を小さくしたダウンサイジングターボとして燃費を高めるという考えに基づいたパワートレインだ。
「方向を決めたら、全力でやる」
今にして思えば、そんなフォルクスワーゲンの姿勢をまざまざと見せつけられたモデルだった。その「全振り姿勢」を、その後のEV戦略で再び見ることになるとは、この時はまったく想像もしていなかったけれど。
その重要性は変わらない
そして2017年に登場した6代目は、今も売られている現行モデル。全長はついに4mを超え、全幅も1.7mを超えて3ナンバー化。「ゴルフ3」よりも大きくなったのだ。
スタイリングは上質さが引き上げられて、なんだかゴルフっぽい雰囲気。全面液晶メーターを用意するなど一気に先進性を身につけたのも特筆すべき変化だろう。
この世代では全モデルの2ペダル化が図られて、GTIまでMTを廃止。MT好きにとっては残念だが、それも時代の流れを象徴する出来事といえるのかもしれない。
というわけでこうして駆け足でポロの歴史をたどって感じること、それはポロの役割が時代に応じて変化してきたということだ。
当初は、後に登場するルポよりも小さくて、もっと手ごろなクルマだった。しかしいつからか、「大きくなったゴルフに代わる、かつてのゴルフのポジション」へと変わってきたといっていいだろう。途中からはルポや「up!」といった“弟分”も登場し、加えて内外装の仕立ても上級化が図られ、気がつけば単なるフォルクスワーゲンのエントリーモデルから「ちょっと仕立てのいいクルマ」へとシフトが図られたのだ。
残念ながら昨今はSUVブームを背景に、ポロに代わって実質的なポロのSUVである「Tクロス」が日本でも欧州でも人気になっている。しかし、ゴルフよりも身近なハッチバックを求める人がいる限り、ポロの存在はフォルクスワーゲンにとって重要であり続けるに違いない。
ちなみにポロという車名は同名のスポーツからつけられたものだが、実は商人で冒険家のイタリア人「マルコ・ポーロ」にもちなんでいるという。冒険旅行に出かけて未知の世界を訪れたマルコ・ポーロのように、新たなユーザーを開拓していくという意味が込められていたのだとか。
(文=工藤貴宏/写真=フォルクスワーゲン/編集=関 顕也)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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