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第304回:この洗練には及ぶまい

2025.02.24 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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モチーフは悪魔で確定?

毎年冬、神奈川・大磯ロングビーチ大駐車場で開催される報道関係者向けとなる日本自動車輸入組合(JAIA)の大試乗会。近年は超ド級マシンの出展はなくなったが、まだ乗れてないとか、このままだと永久に乗る機会がなさそう、という輸入車に試乗させていただき、知見を得る貴重な機会になっている。ありがたや~。

今回、私のリクエストその1は、ロータス初の電動SUV「エレトレ」だった。自分の好みの対極に位置するこのスーパーBEV、いったいどんなもんなのか。

「なんじゃこりゃ~!」

まず車重がなんじゃこりゃ。空車重量(イギリス本国発表値)が2715kgもあるんだから!

かつて、というかつい最近まで、軽量スポーツの代名詞だったロータス。初代「エリーゼ」って確か600kg台だったよね!? それが約3tのSUVを出すなんて! 天使が開き直って悪魔になったとしか言いようがない。まさに堕天使。

実際、フロントフェイスは悪魔そのものだった。この口、この目……。モチーフは悪魔で確定だろう。

生産拠点は中国・武漢である。つくったのは実質的に親会社の吉利(ジーリー)らしい。カーマニア的には、あらゆる点が悪魔っぽい。

2025年2月某日、神奈川・大磯ロングビーチ大駐車場で開催された日本自動車輸入組合(JAIA)の報道関係者向け試乗会に参加した。今回は「テスラ・モデル3」(写真)と、ロータス初のSUVにして電気自動車「エレトレ」のステアリングを握った。
2025年2月某日、神奈川・大磯ロングビーチ大駐車場で開催された日本自動車輸入組合(JAIA)の報道関係者向け試乗会に参加した。今回は「テスラ・モデル3」(写真)と、ロータス初のSUVにして電気自動車「エレトレ」のステアリングを握った。拡大
「実用的で多用途、そして広々としたファミリー向けハイパーSUVを求める新世代ロータスカスタマーに向けたモデル」とアピールされる「エレトレ」。クールなイケメンフェイスはどことなく悪魔っぽい?
「実用的で多用途、そして広々としたファミリー向けハイパーSUVを求める新世代ロータスカスタマーに向けたモデル」とアピールされる「エレトレ」。クールなイケメンフェイスはどことなく悪魔っぽい?拡大
「エレトレ」のコックピット。運転席と助手席の前方には天地の薄い12.6インチの液晶メーターパネルが組み込まれている。
「エレトレ」のコックピット。運転席と助手席の前方には天地の薄い12.6インチの液晶メーターパネルが組み込まれている。拡大
今回試乗した「エレトレR」のボディーサイズは全長×全幅×全高=5103×2019×1630mm、ホイールベース=3019mm。そこにはライトウェイトスポーツで知られたロータスのイメージはない。
今回試乗した「エレトレR」のボディーサイズは全長×全幅×全高=5103×2019×1630mm、ホイールベース=3019mm。そこにはライトウェイトスポーツで知られたロータスのイメージはない。拡大

最新のテスラで脳内をアップデート

で、悪魔の乗り味はどうだったのか。

速かったです。

なにしろエレトレの高性能バーション「エレトレR」の最高出力は918PSだ。速くないわけがない。アクセルを床まで踏みつけたら、何かが後方にスッ飛んでいった。なんだろうと思ったら、センターコンソール部に置いてあった、ロータスのエンブレム型のキーフォブだった。このキーフォブ、固定できるようにしたほうがいいと思います。じゃないとスッ飛んでってどっかいっちゃうので。

そのほか、今どきのスーパーBEVらしい装備もいろいろあったけど、全部忘れてしまいました。約2200万円という価格を含め、悪い夢は早く忘れたほうがいいみたいな感じでした。二度と思い出すことはないでしょう。「エキシージ」はよかったなぁ~。

続いて乗ったのは、「テスラ・モデル3パフォーマンス」。なにしろ話題のテスラなので、たまには試乗して脳内をアップデートしなきゃと思いまして。

テスラというと、カーマニア的には、エレトレRなんかよりはるかに大物の悪魔と認識されている。そもそもイーロン・マスクが現代の悪魔だし。私は大好きだけど。

モデル3パフォーマンスに乗るのは、たぶん7年ぶりぐらいだろう。あの時は、アクセル全開でムチウチになった。それは、カーマニアが最も嫌う、デリカシーのかけらもないハイパワーBEVの加速そのものだった。首が弱くてスイマセン。

最先端機能が満載された「エレトレ」のコックピットは、デザインも質感もラグジュアリーカー的。ロータスに新時代が訪れたことを印象づける。
最先端機能が満載された「エレトレ」のコックピットは、デザインも質感もラグジュアリーカー的。ロータスに新時代が訪れたことを印象づける。拡大
「エレトレR」のアクセルを床まで踏みつけたら、センターコンソールに置いてあったロータスのエンブレム型キーフォブが後方にスッ飛んだ。
「エレトレR」のアクセルを床まで踏みつけたら、センターコンソールに置いてあったロータスのエンブレム型キーフォブが後方にスッ飛んだ。拡大
「ロータス・エレトレR」に続いて乗ったのは、「テスラ・モデル3パフォーマンス」(写真)。同車のステアリングを握るのは、たぶん7年ぶりぐらい。
「ロータス・エレトレR」に続いて乗ったのは、「テスラ・モデル3パフォーマンス」(写真)。同車のステアリングを握るのは、たぶん7年ぶりぐらい。拡大
つるっとしたフォルムが目を引く「テスラ・モデル3パフォーマンス」のサイドビュー。車両本体価格は725万9000円ナリ。写真のボディーカラーは「ディープブルーメタリック」と呼ばれる有償色。
つるっとしたフォルムが目を引く「テスラ・モデル3パフォーマンス」のサイドビュー。車両本体価格は725万9000円ナリ。写真のボディーカラーは「ディープブルーメタリック」と呼ばれる有償色。拡大

テスラの操作性は洗練の極致

あれから7年。モデル3はフルモデルチェンジの気配もなく、つるっとしたまま存続している。

ところが乗ってビックリ。中身は大幅に進化していた。

テスラは元からボタンがほとんどなかったけど、いつのまにかウインカーレバーがなくなり、ついにはシフトレバーもなくなっていた。Dレンジに入るのも自動になってたんですね! 「オートシフト・フロムパーキング」を選択するとクルマが周囲の状況などから「次は前進だな」と判断するんだそうです。ハァ~。

そういうのって、カーマニア的には悪魔の所業でしょ? でもモデル3は、身のこなしや操作性が洗練の極致。テスラは電費もイイ。少なくともエレトレRに比べたらこれは天使だ!

走りだして、「テスラおそるべし」の思いはさらに強まった。

7年前、ムチウチになったフル加速を試みても、ぜんぜん首が痛くならない。タイムは落とさずに、加速が断然デリケートになったようだ。テスラはうたい文句どおり、着実にアップデートされている。

テスラスーパーチャージャーという独自の充電ネットワークを含めると、「やっぱBEVならテスラだな」と思わざるを得ない。相変わらずテスラがBEVの最先端であり、スタンダードなのだ。さすが天才イーロン・マスク。

BYDがどんだけ伸ばしてきても、この洗練には及ぶまい。BEVを買う予定ゼロですが。

(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)

内燃機関ガチ勢のカーマニア的にはBEVや自動運転は悪魔の所業だが、「モデル3」は、身のこなしや操作性が洗練の極致。尊敬せざるを得ない。
内燃機関ガチ勢のカーマニア的にはBEVや自動運転は悪魔の所業だが、「モデル3」は、身のこなしや操作性が洗練の極致。尊敬せざるを得ない。拡大
テスラは元からボタンがほとんどなかったけど、進化した「モデル3」ではいつのまにかウインカーレバーがなくなり、ついにはシフトレバーもなくなっていた。
テスラは元からボタンがほとんどなかったけど、進化した「モデル3」ではいつのまにかウインカーレバーがなくなり、ついにはシフトレバーもなくなっていた。拡大
大人4人がゆったりと乗れ、荷物もしっかり積める。快適性や実用性の高さでも「モデル3」に死角はない。トランクの開き方も、実にダイナミックでカッコイイ。
大人4人がゆったりと乗れ、荷物もしっかり積める。快適性や実用性の高さでも「モデル3」に死角はない。トランクの開き方も、実にダイナミックでカッコイイ。拡大
テスラスーパーチャージャーという独自の充電ネットワークを含めると、「やっぱBEVならテスラだな」と思わざるを得ない。相変わらず私にとってはテスラがBEVの最先端なのだ。
テスラスーパーチャージャーという独自の充電ネットワークを含めると、「やっぱBEVならテスラだな」と思わざるを得ない。相変わらず私にとってはテスラがBEVの最先端なのだ。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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