「ホンダN-BOX」が新車販売台数で2024年度の第1位に その快進撃の原動力を分析する
2025.04.24 デイリーコラム売れ続ける「ホンダN-BOX」
「ホンダN-BOX」の2024年度(2024年4月~2025年3月)における販売台数は21万0768台となり、登録車を含む新車販売台数において国内第1位を獲得した。N-BOXが年度別の新車販売台数ナンバーワンとなったのは4年連続であり、軽四輪車の新車販売台数においては10年連続で首位の座に君臨している。ホンダN-BOXはなぜこんなにも売れ続けるのか? あらためて快進撃の秘密を考えてみたい。
まずは最新ラインナップの整理から。現行モデルとなる2023年10月に発売された通算3代目のホンダN-BOXは、当初、標準モデルの「N-BOX」とカスタム系といわれる「N-BOXカスタム」をラインナップ。2024年9月に“道具感”を際立たせた新グレード「N-BOXジョイ」が追加された(参照)。2025年4月17日には一部改良モデルが発表され(参照)、進化の歩みを止めていない。
シリーズ全体では下記のラインナップとなっている。
【標準モデル】
- N-BOX:173万9100円(FF車)/187万2200円(4WD車)
- N-BOXファッションスタイル モノトーン:183万8100円(FF車)/197万1200円(4WD車)
- N-BOXファッションスタイル2トーン:189万8600円(FF車)/203万1700円(4WD車)
【カスタム】
- N-BOXカスタム:192万3900円(FF車)/205万7000円(4WD車)
- N-BOXカスタム コーディネートスタイル モノトーン:216万9200円(FF車)/230万2300円(4WD車)
- N-BOXカスタム コーディネートスタイル2トーン:222万9700円(FF車)/236万2800円(4WD車)
- N-BOXカスタム ターボ:212万9600円(FF車)/226万2700円(4WD車)
- N-BOXカスタム ターボ コーディネートスタイル モノトーン:228万1400円(FF車)/241万4500円(4WD車)
- N-BOXカスタム ターボ コーディネートスタイル2トーン:234万1900円(FF車)/247万5000円(4WD車)
【ジョイ】
- N-BOXジョイ モノトーン:184万4700円(FF車)/197万7800円(4WD車)
- N-BOXジョイ2トーン:192万7200円(FF車)/206万0300円(4WD車)
- N-BOXジョイ ターボ モノトーン:204万4900円(FF車)/217万8000円(4WD車)
- N-BOXジョイ ターボ2トーン:212万7400円(FF車)/226万0500円(4WD車)
【福祉車両】
- N-BOXスロープ:191万5000円(FF車)/203万6000円(4WD車)
- N-BOXカスタム スロープ:215万3000円(FF車)/227万4000円(4WD車)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
全方位で進化を遂げた3代目
結果として2024年度も安定の「軽自動車販売台数ナンバーワン」の座に輝いたホンダN-BOXだが、2024年5月には単月での首位の座を「スズキ・スペーシア」に譲り渡すという椿事(ちんじ)が発生。このときwebCGを含む各メディアは「ついに首位から陥落!」「N-BOX、いよいよ販売不振か?」「新型N-BOXの問題点とは?」的にはやし立てた。だが翌6月からN-BOXは涼しい顔で(?)単月首位に返り咲き、その後も2025年3月まで単月首位であり続けた。
ホンダ N-BOXが快進撃を続ける理由は2つあると考える。ひとつは「クルマ全体の平均点が高い」ということだ。
ホンダは3代目N-BOXの開発にあたり、「パッケージ」「動力性能」「デザイン・質感」「安全性」「ブランド」「乗り心地・静粛性」から成る六角形のレーダーチャートを開発の指標とした。そしてこれら6項目の点数で描かれる六角形が「全方位的に大きくなることを目指した」と、3代目モデルの開発責任者から聞いた。
もちろんこういったことは、チャートの種類や項目は違ったとしても、どのメーカーも指標にしているところではあるのだろう。だがホンダは、すでに軽スーパーハイトワゴンとして完成の域にあった2代目の各部を、まるで乾いた雑巾を絞るかのようにさらに洗練させ、六角形の面積を確実に広げた。
その結果、例えばWLTCモード燃費の部分で競合に若干負けていたとしても、「でも総合的にはやっぱりN-BOXだよね」とユーザーに思わせることと、実感させることに成功した。だから、売れるのだ。売れ続けるのだ。
間違いのない選択肢
ホンダN-BOXが快進撃を続けているもうひとつの理由は──これは以前webCGの記事で清水草一さんも似たことを書いていらっしゃったが──「慣性の法則がはたらいている」ということなのだろう。
慣性の法則(運動の第1法則)とはご存じのとおり、「物体に外部から力がはたらかないとき、または、はたらいていてもその合力が0であるとき、静止している物体は静止し続け、運動している物体はそのまま等速度運動(等速直線運動)を続ける」というものだ。
クルマに限らずさまざまなモノやサービスなどには、基本的には慣性の法則に似た力がはたらく。売れているモノは「売れてるから」というシンプルな理由だけで、消費者から選ばれ続けるのだ。もちろん、その際に「フルモデルチェンジの内容がイマイチだった」「より魅力的な競合が出現した」などの外部からの力がはたらくと、等速度運動は終わってしまう。また「飽き」や「飽和」などによって等速度運動が終わることもあるだろう。
だが3代目ホンダN-BOXには今のところ、「外部からの力」がはたらいていない。すなわち2023年10月のN-BOXがN-BOXたるキープコンセプトとされたフルモデルチェンジは、内容にも方向性にも瑕疵(かし)はなく、だれもがN-BOXだとわかるデザインを採用しながら、着実な進化を遂げた。スペーシアや「タント」といった競合は個性も実力も十分であるものの、消費者にN-BOXからの代替を決意させるほどの明確な優位性があるわけではない。
だからこそ自然の摂理としてホンダN-BOXは売れ続け、国民車と呼ばれている。そして今後も、何らかの明確に優位なゲームチェンジャー的競合車が登場するまでは、「間違いのない選択」として売れ続けることになるのだろう。
(文=玉川ニコ/写真=本田技研工業、スズキ/編集=櫻井健一)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
-
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代NEW 2025.9.17 トランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。
-
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起 2025.9.15 スズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。
-
新型スーパーカー「フェノメノ」に見る“ランボルギーニの今とこれから” 2025.9.12 新型スーパーカー「フェノメノ」の発表会で、旧知の仲でもあるランボルギーニのトップ4とモータージャーナリスト西川 淳が会談。特別な場だからこそ聞けた、“つくり手の思い”や同ブランドの今後の商品戦略を報告する。
-
オヤジ世代は感涙!? 新型「ホンダ・プレリュード」にまつわるアレやコレ 2025.9.11 何かと話題の新型「ホンダ・プレリュード」。24年の時を経た登場までには、ホンダの社内でもアレやコレやがあったもよう。ここではクルマの本筋からは少し離れて、開発時のこぼれ話や正式リリースにあたって耳にしたエピソードをいくつか。
-
「日産GT-R」が生産終了 18年のモデルライフを支えた“人の力” 2025.9.10 2025年8月26日に「日産GT-R」の最後の一台が栃木工場を後にした。圧倒的な速さや独自のメカニズム、デビュー当初の異例の低価格など、18年ものモデルライフでありながら、話題には事欠かなかった。GT-Rを支えた人々の物語をお届けする。
-
NEW
内燃機関を持たないEVに必要な「冷やす技術」とは何か?
2025.9.16あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジンが搭載されていない電気自動車でも、冷却のメカニズムが必要なのはなぜか? どんなところをどのような仕組みで冷やすのか、元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】
2025.9.16試乗記人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。 -
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起
2025.9.15デイリーコラムスズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。 -
BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】
2025.9.15試乗記フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。 -
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス(後編)
2025.9.14ミスター・スバル 辰己英治の目利き万能ハッチバック「フォルクスワーゲン・ゴルフ」をベースに、4WDと高出力ターボエンジンで走りを徹底的に磨いた「ゴルフR」。そんな夢のようなクルマに欠けているものとは何か? ミスター・スバルこと辰己英治が感じた「期待とのズレ」とは? -
スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】
2025.9.13試乗記「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。