日産ノート オーラAUTECHスポーツスペック(FF)
ほどほどが気持ちいい 2025.05.10 試乗記 「日産ノート オーラ」に新たな純正カスタマイズモデルの「AUTECHスポーツスペック」が登場。AUTECHならではの上質感を付与したうえで、さらに走行性能も磨き上げたというスポーツコンパクトだ。果たしてその仕上がりやいかに!?あらためてNISMOとAUTECHの関係
日産ファンには耳タコかもしれないが、あらためて、モータースポーツ会社であるNISMO(ニスモ=日産モータースポーツインターナショナル)と、カスタマイズや特装車で知られていたオーテックジャパンという2つの日産子会社は、2022年4月に「日産モータースポーツ&カスタマイズ(以下、NMC)」に統合された。本社は神奈川県茅ケ崎市(旧オーテックジャパン)に置かれるが、モータースポーツ拠点となるNISMO事業部は(2013年に東京の大森から移転した)横浜市に残る。
「NISMO」や「AUTECH(オーテック)」の名を掲げる市販車は昔からあったが、かつてのNISMOが手がけた市販車といえば、S14「シルビア」の「270R」やR33「スカイライン」の「400R」、R34「スカイラインGT-R」の「Z-tune」などなど、全身をゴリゴリにイジッた台数限定のコンプリートカーが大半だった。
対して、ディーラーで普通に買える純正カスタマイズカーを得意としてきたのが、オーテックジャパンである。同社は商品ごとに臨機応変にブランドを使い分けており、実際、先代や先々代の「フェアレディZ」に用意されていた「バージョンNISMO」はオーテックジャパンの作品ながら、NISMOを名乗った。
こうした経緯もあって、日産はNISMOブランドを有効活用すべく、2017年にそのロードカー部門を、ニスモカーズ事業部として当時のオーテックジャパン内に移設。今から考えると、これが現在のNMCの布石ともいえた。
というわけで、オーラも含む現行ノート系のAUTECHやNISMOは、オーテックジャパン+ニスモカーズ=現NMCらしい仕事である。発売当時は(「クロスオーバー」も含めた)AUTECHは5ナンバーのノートを、NISMOは3ナンバーのオーラをベースにするなど、緻密にすみ分けられていた。しかし、昨2024年のオーラのマイナーチェンジに合わせて、AUTECHもオーラベースに切り替えられた(クロスオーバーはノートベースのまま)。
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同じスタッフを使う2人のシェフ
NMC担当者によると、マイチェン前のノートAUTECHは、2020年末の発売当初は好調に売れたが、翌2021年6月にオーラが出てからは明らかに販売が失速したという。あらためて調査すると、あえてAUTECHを選ぶような顧客は、潜在的に“その車種でいちばん良いクルマ”を求めているわけで、オーラの普及版的イメージのあるノートでは満たされないという結果が出た。それを受けて、新しいAUTECHもオーラベースとなったわけだ。
今回の試乗車は、新しいオーラAUTECHをベースに、さらにパワートレインやシャシーも専用に調律したスポーツスペックである。従来のノートAUTECHはコスメチューンだったが、前出のフェアレディZバージョンNISMO、あるいはオーテックジャパンの最高傑作ともいわれる「マーチ12SR」を知るファンには、やはり走り(とくにシャシー)も専用でこそAUTECH……との思いが強いはずである。
ノート/オーラのNISMOとAUTECHは、どちらも開発はNMCによる。開発メンバーも大半が兼任だ。レストランでいえば、オーナーやマネージャー、コックはほぼ同じ顔ぶれである。ただ、両車では、それぞれのレシピを決めるシェフがちがう。
オーラを含むNISMOのシェフである神山幸雄さんは、1978年に日産に入社して、S13~S14のシルビアやZ32フェアレディZなどのほか、GT-RはR32からR35まですべてにたずさわった日産FR系スポーツを知り尽くした人物だ。対して、AUTECHのシェフ役の高澤 仁さんは、1982年の日産入社以降、マーチや「プリメーラ」「マキシマ」など、主にFF車の操縦安定性開発を担当。その後はオーテックジャパンに移籍して、先代のノートNISMOやオーテック30周年記念車の「マーチ ボレロA30」の運動性能開発も担当した。
NISMOよりは控えめなスポーティー感
オーラAUTECHスポーツスペックでは、タイヤ、バネ、前後のバンプラバー形状、ショックアブソーバー(フロントは外筒板厚アップ、リアはモノチューブ化)、そして車体後部の追加部材といったハードウエアに加えて、パワートレイン、パワステ、VDCの制御プログラムも専用化しているという。こうした専用化の基本メニューはNISMOとほぼ共通なのだが、その調律はそれぞれの“シェフ”による別物である。
たとえば、タイヤはどちらもミシュラン製の205/50R17サイズでありながら、銘柄はNISMOの「パイロットスポーツ4」に対して、AUTECHスポーツスペックは「eプライマシー」を履く。車体後部の追加部材も、NISMOでは左右を剛結するブレースだが、スポーツスペックのそれは振動を減衰させるパフォーマンスダンパー。また、エクステリアによる空力処理も、スポーツスペックはNISMOほど明確なダウンフォースは発生させない。こうしたところからも、両車の意図するところはなんとなくうかがえる。
オーラにも搭載されるe-POWERのような完全電動駆動車のチューニングのキモとなるパワートレインマッピングは、「エコ」モードが普通のオーラのエコと「ノーマル」の中間、ノーマルモードが同じく「スポーツ」相当(セッティング自体は専用)と、かなり活発な設定となっているが、全体的にはNISMOよりは少し控えめ。いちばん過激なスポーツモードも、NISMOのそれ(「NISMO」モード)のように、背中を蹴られたかのような衝撃は伝えてこない。
ただし、Dレンジだと、どのモードでもアクセルペダルを緩めてから減速Gが出るまでに明確なラグがある。これは電気自動車やe-POWERなどの経験から導き出された(一般ドライバーに違和感を抱かせない)日産ならではのレシピだが、少なくとも活発に走りたいときには、アクセルオフ操作でもラグ最小の減速で一体感も確実に高まるBレンジがオススメだ。
高速コーナーで輝くスポーツスペック
個人的には、あえてスポーツモードにするより、標準のスポーツモード以上にペダルが右足に吸いつくような感覚があるノーマルモードで、山道を“腹八分”で流したときの爽快感こそ、AUTECHスポーツスペックの真骨頂と思う。
コイルのバネレートは、普通のオーラ比でフロントが30%、リアが40%引き締められているので、細かい凹凸路面をさほど高くないスピードで通過するときなどは、ブルブルと硬さを感じることがなくはない。
しかし、速度が上がったり、あるいはコーナーなどでそのアシにカツが入ったりすると、みるみるしなやかになっていく。アスファルトがヒビ割れたような荒れた路面でも、しっとりとして跳ねないのはたいしたものだ。
高澤“シェフ”によれば「スポーツスペックの走りのイメージはA30の再来」という。A30とは先に紹介したマーチ ボレロA30のことだが、A30の走りは超ワイドトレッドを生かしたしなやかなロール感が最大の特色だった。このスポーツスペックでも、とくにしっかりとロールしながら路面をとらえるリアの安定感が印象的……と思ったら、リアのコイルにかぎっていえば、あの俊敏性のカタマリのようなオーラNISMOのそれよりも、レートが高いくらいらしい。フロントは逆にNISMOのほうが硬めとか。
となれば、そのコーナー出口でのリアのしっとりした接地感がどう生み出されるのかと問うと、高澤シェフは「車体剛性と全体のバランス」と答えてくれた。同じオーラのNMC物件でも、コーナーのクリッピングをえぐるように走らせると輝くNISMOに対して、AUTECHスポーツスペックでは、ジワーッと横Gが長く続くような高速コーナーでの所作が快感である。“速さと高揚感”をテーマとするNISMOに対して、AUTECHが目指すという“上質さと高揚感”というのは、メッキとブルーをあしらった内外装に加えて、こういう乗り味をいうのだろう。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=日産自動車)
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テスト車のデータ
日産ノート オーラAUTECHスポーツスペック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4085×1735×1505mm
ホイールベース:2580mm
車重:1290kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
モーター最高出力:136PS(100kW)/3183-8500rpm
モーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-3183rpm
タイヤ:(前)205/50R17 95W XL/(後)205/50R17 95W XL(ミシュランeプライマシー)
燃費:--km/リッター
価格:319万8800円/テスト車=397万9474円
オプション装備:AUTECH専用ボディーカラー<オーロラフレアブルーパール×スーパーブラック ツートン>(7万7000円)/ステアリングスイッチ+統合型インターフェイスディスプレイ+USBソケット<タイプA×2、タイプC×1>+ワイヤレス充電器+Nissan Connectナビゲーションシステム<地デジ内蔵>+BOSEパーソナルプラスサウンドシステム<8スピーカー>+ETC2.0ユニット+プロパイロット<ナビリンク機能付き>+プロパイロット緊急停止支援システム+SOSコール(42万1300円)/ホットプラスパッケージ<ヒーター付きドアミラー+ステアリングヒーター+前席ヒーター付きシート+リアヒーターダクト>+クリアビューパッケージ<ワイパーデアイサー+リアLEDフォグランプ>+高濃度不凍液+PTC素子ヒーター(8万0300円) ※以下、販売店オプション 日産オリジナルドライブレコーダー<フロント+リア>(8万5674円)/専用フロアカーペット(3万0500円)/専用ラゲッジカーペット(1万5400円)/リアナンバープレートリム<マットクロム、AUTECHエンブレム付き>(4950円)/フットレスト<AUTECHロゴ入り>(1万3200円)/キーケース<シルバー、AUTECHロゴ入り>(2300円)/セキュリティーホイールロック<AUTECHステッカー付き>(4万5100円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1910km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:361.6km
使用燃料:21.6リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.7km/リッター(満タン法)/17.0km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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