クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

BMW M2(FR/8AT)

本気出すとコレです 2025.05.13 試乗記 高平 高輝 「BMW M2」のマイナーチェンジモデルをドライブ。変更内容はシンプルそのもので、ずばり3リッター直6ツインターボエンジンのパワーアップである。8段ATモデルの仕上がりをリポートする。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

M3と同等のパワー

近ごろは辛口のクルマがもうほとんど見当たらない、とお嘆きのスポーツドライバーの方々にお薦めしたいのがBMW M2である。今どき、M謹製の純エンジン直列6気筒ツインターボを積む後輪駆動車で、全長4.6m以下という(相対的には)コンパクトボディー、さらに8段ATだけでなく6段MTの設定もあるという、オヤジの心に刺さる実に行き届いた仕様である。

そのM2がマイナーチェンジを受けて、さらにパワーアップしたという。しかも従来型の958万円より若干高くなってはいるが、お値段はギリギリ大台以下の998万円。もちろんこれは裸の値段(この試乗車もオプション込みだと1275.5万円)だが、いまやスタンダードの新型「911カレラ」(394PS)が1853万円で、「718ケイマンGTS 4.0」(400PS)でも1262万円ということを考えると、何だかお買い得に見えてくる。最近のBMWはこの辺が巧妙である。

「M3/M4」譲りのS58型3リッター直6ツインターボの最高出力は、従来型比20PS増しの480PS/6250rpm、最大トルクも600N・m/2700-5620rpmに50N・mアップしている(6MT仕様は550N・m)。これでは兄貴分のM3に肩を並べてしまったじゃないか! と驚くが、安心してください、M3も同時期にちゃんと20PS増しにアップグレードされている。ただし、20PSアップの530PS仕様は「コンペティション」のxDrive(AWD)モデルだけで、本国では設定があるスタンダードの後輪駆動M3(6MT)は480PS/550N・mのまま、ということはまさに追いついてしまったのである。0-100km/h加速は4.0秒(MTは4.2秒、従来型8ATは4.1秒)にわずかながら向上しているという。

本国では2024年6月に発表された「BMW M2」のマイナーチェンジモデル。本邦での車両本体価格は現行型の国内導入時よりも40万円アップの998万円。
本国では2024年6月に発表された「BMW M2」のマイナーチェンジモデル。本邦での車両本体価格は現行型の国内導入時よりも40万円アップの998万円。拡大
S58型3リッター直6ツインターボエンジンは最高出力480PS、最大トルク600N・mを発生。従来よりも20PSと50N・m強力になった。
S58型3リッター直6ツインターボエンジンは最高出力480PS、最大トルク600N・mを発生。従来よりも20PSと50N・m強力になった。拡大
タイヤはフロントが275/35R19でリアが285/30R20。この試乗車はオプションのMレーストラックパッケージに含まれるトラックタイヤ「ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2」を履いていた。
タイヤはフロントが275/35R19でリアが285/30R20。この試乗車はオプションのMレーストラックパッケージに含まれるトラックタイヤ「ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2」を履いていた。拡大
現行型(2代目)「M2」は2022年に国内デビュー。国内では「M3/M4」が4WDしか選べなくなっており、大パワーのコンパクトFRクーペとして希少な存在だ。
現行型(2代目)「M2」は2022年に国内デビュー。国内では「M3/M4」が4WDしか選べなくなっており、大パワーのコンパクトFRクーペとして希少な存在だ。拡大
BMW M2クーペ の中古車webCG中古車検索

はっきりと硬派

現行型M2(2代目)の国内デリバリーが始まったのはちょうど2年前の4月だった。わずか2年ほどでマイナーチェンジを受けるとはずいぶん早めに思えるが、おそらくは例のサイバーセキュリティー対策などを含めた電子プラットフォームの刷新が必要だったと推察される。ここで対応策を打ち出したとすれば、M2はまだ当分の間存続するということだろう。焦らなくても大丈夫です。

今どき貴重な(このセグメントでは唯一だ)直6ツインターボを搭載しながら、余裕はないけれど大人2人が何とか座れる後席、さらに実用に足る荷室(容量390リッター、しかもトランクスルー付き)を備えるなど、日常使用できる実用性を併せ持つ点がM2の魅力だったのだが、新しいM2はだいぶ、というか明確にハードコア寄り。乗り心地が近ごろでは珍しいほどスパルタンなのである。

M2はM3などと同様に可変ダンパーやエンジン、シフトプログラム等を個別に設定できる「Mドライブ」を装備しており(M1/M2ボタンで一括呼び出し可能)、それらを一番おとなしいモードに設定しても、従来型よりも明らかに上下動はきつく速く、わだちのようなうねりがある路面では針路を乱すこともあった。サーキットまではゆったり流す、という状況は端から重視していないような印象である。これまでのように同乗の家族にしらを切るのはちょっと難しいかもしれない。

0-100km/h加速のタイムは4.0秒。この車両はMレーストラックパッケージ装着によって最高速が250km/hから285km/hに引き上げられている。
0-100km/h加速のタイムは4.0秒。この車両はMレーストラックパッケージ装着によって最高速が250km/hから285km/hに引き上げられている。拡大
フルレザーメリノ仕立てのインテリア(ブラック)もMレーストラックパッケージに含まれる。カーボンファイバートリムと合わせてレーシーな空間を演出している。
フルレザーメリノ仕立てのインテリア(ブラック)もMレーストラックパッケージに含まれる。カーボンファイバートリムと合わせてレーシーな空間を演出している。拡大
変速機は今回の試乗車の8段ATに加えて6段MTも選べる。国内向けの現行MモデルでMTが選べるのは「M2」だけだ。
変速機は今回の試乗車の8段ATに加えて6段MTも選べる。国内向けの現行MモデルでMTが選べるのは「M2」だけだ。拡大

「カップ2」ですから

路面の不整に律義に反応しながらも、何とか我慢できないほどではないのは、険しいハーシュネスや振動などがきっちり抑えられているおかげだが、勢いで買ってしまうにはかなり、いや本格的に硬派な足まわりであることは念のため繰り返しておきたい。それにしても以前に比べてずいぶんとかみ応えがある、と不思議に思ったが、ひとつには装着タイヤの違いもあるはずだ。

試乗車はMレーストラックパッケージ(225.5万円)装着車であり、これには2脚で10kg軽いというMカーボンバケットシートをはじめ、MカーボンファイバールーフやMドライバーズパッケージ(速度リミッターを250→285km/hに引き上げる)、Mカーボンファイバートリム、フルレザーメリノシート、さらに“トラックタイヤ”が含まれている。

銘柄はサーキット走行にも対応した高性能タイヤ「ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2」、サイズは前が275/35R19、後ろが285/30R20とこれまでと同じだが、2年近く前に乗ったM2(AT/MT車ともに)は同じミシュランながら「パイロットスポーツ4 S」を履いていた。そりゃあ違います。タイヤといかにも頑丈そうながら薄いシートを一般的なものに変えるだけで日常的な実用性はだいぶ違うはずである。

足まわりには減衰力可変型のMアダプティブサスペンションを装備。減衰力は3段階から選べるが、どれを選んでも乗り味はハードだ。
足まわりには減衰力可変型のMアダプティブサスペンションを装備。減衰力は3段階から選べるが、どれを選んでも乗り味はハードだ。拡大
ドライブモードのセッティング画面。10段階で設定可能なMトラクションコントロールをアクティブにするにはスタビリティーコントロールをカットする必要がある。
ドライブモードのセッティング画面。10段階で設定可能なMトラクションコントロールをアクティブにするにはスタビリティーコントロールをカットする必要がある。拡大
上の画面で設定した組み合わせをステアリングホイールの「M1」「M2」ボタンで呼び出せる仕組みだ。
上の画面で設定した組み合わせをステアリングホイールの「M1」「M2」ボタンで呼び出せる仕組みだ。拡大

ATならば何とか

その代わり、というわけではないが、ハンドリングは刺激的である。一般道ではただただスパッと切れるように曲がり、路面に食いつくような後輪が際限なく前に押し出してくれるのみ。10段階に調整できるMトラクションコントロールなどを試したい場合は、素直にサーキットに出向くしかないだろう。カップ2を履いてどれぐらいで走れるのだろうか、と年がいもなく妄想させるクルマである。そういえばつい先日BMWは「M2レーシング」というカスタマー向けのコンペティションモデルを発表している。まだまだやる気満々である。

今回のM2はドライブロジック付き8ATだったので、6MTモデルほどは気にならなかったが、上記Mカーボンバケットシートについてもくどいようだが繰り返しておきたい。

もともとM2(日本仕様は右ハンドルのみ)はペダルが右側にオフセットしており、それにカーボンバケットシートを組み合わせると、シート座面前端のサイサポートがクラッチ操作の際に太ももと干渉する弱点があった。左右の脚が固定されてサポート性は抜群なのだが、2ペダルのATでも左足でブレーキを踏もうとすると、その「山」に逆らって右斜めに寄せる必要がある。気になるかも、という向きはあらかじめ試乗してみるべきだ。あとは乗り心地だけ、自分ひとりで乗るなら心配しないが、家族と一緒に出かけることもあるという人は、頑張って言い訳を考えてください。残念ながら私はまだ思いつきません。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=BMWジャパン)

パワーアップに伴いWLTCモードの燃費は10.1km/リッターから10.0km/リッターへとわずかに悪化している。
パワーアップに伴いWLTCモードの燃費は10.1km/リッターから10.0km/リッターへとわずかに悪化している。拡大
MカーボンバケットシートもMレーストラックパッケージに含まれる。軽量でホールド性が高い逸品なのだが……。
MカーボンバケットシートもMレーストラックパッケージに含まれる。軽量でホールド性が高い逸品なのだが……。拡大
右ハンドル仕様はペダルが右にオフセットしているため、ブレーキング時に太ももの裏がサイサポートに当たる。ちなみに6段MTモデルはクラッチを踏むたびに左の太もも裏が痛かった。
右ハンドル仕様はペダルが右にオフセットしているため、ブレーキング時に太ももの裏がサイサポートに当たる。ちなみに6段MTモデルはクラッチを踏むたびに左の太もも裏が痛かった。拡大
後席は広くはないが、大人2人が何とか乗り込めるスペースだ。トランクスルーも備わっている。
後席は広くはないが、大人2人が何とか乗り込めるスペースだ。トランクスルーも備わっている。拡大

テスト車のデータ

BMW M2

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4580×1885×1410mm
ホイールベース:2745mm
車重:1730kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:480PS(353kW)/6250rpm
最大トルク:600N・m(61.2kgf・m)/2700-5620rpm
タイヤ:(前)275/35R19 100Y XL/(後)285/30R20 99Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2)
燃費:10.0km/リッター(WLTCモード)
価格:998万円/テスト車:1275万5000円
オプション装備:ボディーカラー<フローズンピュアグレー>(39万円)/Mコンフォートパッケージ<ステアリングホイールヒーティング、サンプロテクションガラス、harman/kardonサラウンドサウンドシステム>(13万円)/Mレーストラックパッケージ<Mカーボンファイバールーフ、Mカーボンバケットシート、フルレザーメリノ、Mカーボンファイバートリム、Mドライバーズパッケージ、トラックタイヤ>(225万5000円)

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2771km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:326.9km
使用燃料:49.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.1km/リッター(満タン法)/8.3km/リッター(車載燃費計計測値)

BMW M2
BMW M2拡大
 
BMW M2(FR/8AT)【試乗記】の画像拡大
試乗記の新着記事
  • メルセデス・ベンツGLE450d 4MATICスポーツ コア(ISG)(4WD/9AT)【試乗記】 2025.10.1 「メルセデス・ベンツGLE」の3リッターディーゼルモデルに、仕様を吟味して価格を抑えた新グレード「GLE450d 4MATICスポーツ コア」が登場。お値段1379万円の“お値打ち仕様”に納得感はあるか? 実車に触れ、他のグレードと比較して考えた。
  • MINIカントリーマンD(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.30 大きなボディーと伝統の名称復活に違和感を覚えつつも、モダンで機能的なファミリーカーとしてみればその実力は申し分ない「MINIカントリーマン」。ラインナップでひときわ注目されるディーゼルエンジン搭載モデルに試乗し、人気の秘密を探った。
  • BMW 220dグランクーペMスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.29 「BMW 2シリーズ グランクーペ」がフルモデルチェンジ。新型を端的に表現するならば「正常進化」がふさわしい。絶妙なボディーサイズはそのままに、最新の装備類によって機能面では大幅なステップアップを果たしている。2リッターディーゼルモデルを試す。
  • ビモータKB4RC(6MT)【レビュー】 2025.9.27 イタリアに居を構えるハンドメイドのバイクメーカー、ビモータ。彼らの手になるネイキッドスポーツが「KB4RC」だ。ミドル級の軽量コンパクトな車体に、リッタークラスのエンジンを積んだ一台は、刺激的な走りと独創の美を併せ持つマシンに仕上がっていた。
  • アウディRS e-tron GTパフォーマンス(4WD)【試乗記】 2025.9.26 大幅な改良を受けた「アウディe-tron GT」のなかでも、とくに高い性能を誇る「RS e-tron GTパフォーマンス」に試乗。アウディとポルシェの合作であるハイパフォーマンスな電気自動車は、さらにアグレッシブに、かつ洗練されたモデルに進化していた。
試乗記の記事をもっとみる
BMW M2クーペ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。