ホンダCB1000ホーネットSP(6MT)
蜂のように軽やかに 2025.05.18 試乗記 ハイパフォーマンスなネイキッドスポーツとしてファンを魅了したホンダの「ホーネット」が、「CB1000ホーネット」としてついに復活! 最新のコンポーネントを得た“令和のスズメバチ”は、私たちにどんな走りを見せてくれるのか? 上級モデル「SP」で確かめた。“走り”が自慢のネイキッドスポーツ
ホーネット(Hornet)が久々に帰ってきた。昭和世代には懐かしい名を冠したモデルで、元祖は、1990年代後半から2000年代初頭にかけて人気を博した、一連のホーネットシリーズだ。「250」「600」「900」と次々にリリースされたが、いずれも「CBR」系の高性能直4エンジンによるハイパフォーマンスな走りが魅力で、いわば“ストリートファイター”の先駆けのような存在だった。自分もこのシリーズは大好きで、特に「CB900ホーネット」はHMS(ホンダ・モーターサイクリスト・スクール)の教習車だったので、取材も兼ねて何度も乗った記憶がある。
さて、最新型のCB1000ホーネットも、歴代同様にスーパースポーツ「CBR1000RR」譲りの999cc水冷直列4気筒エンジンを、新設計のスチール製ダイヤモンドフレームに搭載するスポーツネイキッドとして登場した。今回試乗したSPは、オーリンズ製リアショックにブレンボ製フロントブレーキキャリパー、クイックシフターなどを装備し、ゴールドのフォークとホイールが与えられた特別仕様となっている。
見た目はかつての丸っこいホーネットシリーズとは異なり、ツリ目の2眼ヘッドランプに鋭いボディーラインが現代的。跨(またが)るとハンドルは程よい高さと幅で操作しやすく、シートもフラットで、前後に動きの自由度があるスポーティーな設定だ。シート高は809mmとやや高めだが、前寄りに座れば車体に“くびれ”があるので、足つき性もそう悪くはない。
ライダーの思考とバイクの動きが直結する
エンジンはさすがホンダ。CBR直系の直4らしい緻密な回転フィールが印象的で、走り始めから低・中回転域でのトルクも安定。右手をひねればどこからでも鋭く立ち上がるレスポンスは、スーパースポーツそのものだ。それでいて、ストリート向けに“穏やかキャラ”に最適化されているので、近場のカフェにふらっと立ち寄れる扱いやすさもある。もちろん、いざ峠道に入れば、鋭いひと刺しを持つスズメバチ(Hornet)に豹変(ひょうへん)するだろう。3種類のライディングモード(スタンダード/スポーツ/レイン)も、使うべきシーンと設定がマッチして感じられた。とはいえ、ピーク値158PSの力感はすさまじく、まず街なかでは、スロットルの半分も開けられないと思ったほうがいい。
ハンドリングはとにかく軽快。マスを集中させたコンポーネントのレイアウトに加えて、前輪の分担荷重を高めた設計により、軽快で俊敏なハンドリングを実現している。たとえば首都高などの先が曲がり込んだコーナーでも、倒し込みのキッカケをつくる必要もなく、目線を向けるだけでコーナーに吸い込まれていく感じだ。ステア感覚はニュートラルで、旋回中も当て舵や引き舵も必要ない。つまりセルフステアに任せるだけ。速度や曲率の変化に合わせてハンドルをこじる必要がないのだ。思考と直結したようなコントロール性は、自分がうまくなったとライダーに錯覚させるほどだ。
足まわりも好感触だった。ショーワの「SFF-BP」倒立フォークとオーリンズ製リンク式モノショックは、グレード感のある乗り味で、しっかり路面をホールドしている安心感がある。ブレンボ製フロントキャリパーは初期制動から奥のコントロールまで絶妙で、リニアなタッチはスポーティーな走りでも十分に信頼できるものだった。
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リッタークラスとは思えない軽快感
それにしても、シリンダーが4つも並ぶエンジンで、しかもリッタークラスの排気量ともなれば、普通は股下にずっしりとした重さを感じるものだが、不思議とマスを感じさせない。なんというか、乗り味にフワッとした軽さがあるのだ。もちろん、フロントの接地感は十分でどんなコーナーでも安定感はあるのだが、実際の車重(212kg)よりずっと軽い感覚なのだ。この、リッタークラスとは思えないフットワークの軽快さは、同セグメントでもトップクラスと思える。
交差点でUターンしてみても、ハンドル切れ角も大きく、フロントを中心にクルッと曲がる回頭性のよさが魅力。これには400cc並みに短いホイールベース(1455mm)も効いていると思われるが、同時にエンジン特性も関係している。もともとトルク変動が少ない直4エンジンで、しかも低中速トルク重視のセッティングに最適化されているので、極低回転域でも、回転が滑らかで安定しているのだ。おまけにSPのマフラーは、低・中回転域を扱いやすくする可変排気バルブ機構付き。最近の進化した電子制御によるマネジメントは優秀で、かつてのCB900ホーネットのようなエンジンのドンツキも、きれいに消されている。パワーは倍近いのに信じられないぐらい扱いやすい。まさに時代を感じた瞬間だった。
かつてのご先祖がそうであったように、CB1000ホーネットは、CBRのパフォーマンスとホンダらしい扱いやすさ、高いスポーツ性と日常での使い勝手をバランスよく兼ね備えた一台であった。加えてSPなら、高品質な足まわりと外装によるプレミアム感も大きな魅力。どうせ買うなら、こちらを選ぶのも面白いだろう。
(文=佐川健太郎/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資/車両協力=本田技研工業)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2140×790×1085mm
ホイールベース:1455mm
シート高:809mm
重量:212kg
エンジン:999cc 水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:158PS(116kW)/1万1000rpm
最大トルク:107N・m(10.9kgf・m)/9000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:17.7km/リッター(WMTCモード)
価格:158万4000円

佐川 健太郎(ケニー佐川)
モーターサイクルジャーナリスト。広告出版会社、雑誌編集者を経て現在は二輪専門誌やウェブメディアで活躍。そのかたわら、ライディングスクールの講師を務めるなど安全運転普及にも注力する。国内外でのニューモデル試乗のほか、メーカーやディーラーのアドバイザーとしても活動中。(株)モト・マニアックス代表。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。
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