受注再開は1年半後!? 「スズキ・ジムニー ノマド」の再販&納車時期を直近のデータから読み解く
2025.05.30 デイリーコラムあらためて驚かされる「ジムニー」の隆盛
2023年1月のインド発表時から、大きな話題となっていた「ジムニー5ドア」(参照)。当初より日本で発売すれば大人気間違いなし、という感触はあったものの、スズキは国内における「ジムニー」および「ジムニー シエラ」の長納期の解消を優先し、導入を先延ばししてきた。そして、約2年の時を経た2025年1月30日、「ノマド」のサブネームが与えられ、ようやく日本導入が発表された(参照)。
正式な発売日は2025年4月3日とされたが、発表から4日後にはなんと受注停止に。その理由は、先行受注台数が約5万台を超えたことが原因だ。もともと、ノマドの月間の目標販売台数は1200台に設定されていたから、その41.7倍にもなる。ちなみに、年間新車販売台数が5万台のモデルといえば、2024年の統計を見ると「ホンダ・ステップワゴン」が約5.5万台、「スズキ・ソリオ」が約5.2万台、「トヨタ・ランドクルーザー(ワゴン)」が約5.1万台、「トヨタ・ライズ」が同じく約5.1万台……といった具合である。
ジムニーシリーズの現状だが、2024年の年間新車販売台数は、登録車となるジムニー シエラが2万5848台で、軽自動車のジムニーが4万1406台。順位的にはシエラが登録車で28位、ジムニーが軽乗用車で12位にランクインしている。今となってはウソみたいな話だが、現行型ジムニーのフルモデルチェンジ時の年間販売目標台数は、ジムニーが1万5000台だったのに対し、なんとシエラは1200台にすぎなかった。従来型の販売規模が、その程度だったからである。
もちろん、スズキは新型ジムニーシリーズの好調を受けて増産態勢に入り、納期の改善に努めている。現在も長納期のままではあるものの、上述のとおり、当初の計画をはるかに超える台数を顧客に届けていることは評価に値するだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
月間の販売台数は2500台程度か?
さて、こうしたジムニーシリーズの市況をどう捉えたのかはわからないが、スズキはジムニー ノマドの年間販売目標を、1万4400台と設定した。その控えめな数字から、発表会の現場ではジムニー/ジムニー シエラを超える長納期化を懸念する声も聞かれたが、結果は冒頭でも触れたとおり。ノマドの人気と納期待ちは、そうした予想をもはるかに超えるものとなった。
そんなノマドも、正式発売の2025年4月を迎え、SNSでは納車投稿が散見されるようになった。日本自動車輸入組合が公表した2025年4月のスズキの輸入小型車の新規登録台数は、2524台とされる。現在、スズキでは3ナンバーの「フロンクス」と5ナンバーのジムニー シエラのみが海外生産・輸入販売となっているので、この小型車の数字がそのままシエラのものとなる。2025年3月より前の小型登録車はゼロなので、現在、日本に出回っているノマドは、ここに5月登録分を足しただけとなる。また受注停止となって久しいノマドだが、当然ながらスズキは納期短縮と受注再開に向けて動いている様子で、2月27日付の『日刊自動車新聞 電子版』では「ノマドの日本向け供給台数を月間2500台まで増やす」との報道もあった。くしくも、この4月のノマドの登録台数に近い数字だ。ただ同報道について、スズキからの公式のコメントはない。(2025年5月30日に、スズキより「2025年7月より月間約3300台に増産する」旨が発表された)
スズキとして素早い対応が難しいのは、やはりジムニー ノマドが輸入車であることが大きいのだろう。生産地であるインドへの供給に加え、世界戦略車として中南米や中近東などへも輸出されているのだ。そのため、日本向けの割り当て増加にも限度がある。加えて、生産を担うグルガオン工場のキャパシティーもある。インドでのスズキ車の生産台数は、4年連続で増加しており、稼働率が高い状態が続いているのだ。さらに日本へ輸送するための船便の確保や、国内における受け入れ態勢、すなわち静岡・湖西工場での納車前整備の体制強化などの課題もある。供給拡大には、国内生産のジムニーよりも時間を要するかもしれない。
「それならいっそ、日本製で」という声もあるかもしれないが、日本のジムニーの生産体制もフル稼働であり、そこにノマドの生産もとなると、設備投資が必須となる。結果的に、価格上昇をまねく恐れがあるのだ。そもそもノマドの価格は、この手の本格クロカンとしてはかなりお手ごろ感があり、それもこの人気を支える一因となっている。もし納期短縮のために価格を上げた場合、一時的には市場から歓迎されるかもしれないが、そう長くは続かないだろう。その行為は、ユーザー想いの価格を貫いてきたスズキの信念に反することでもあるからだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
中古車ねらいでも「新車の受注再開」の報を待つべし
これが、直近の統計や報道から見えてきたジムニー ノマドの状況である。率直なところ、もし早急にジムニー ノマドが欲しいとなれば、今は中古車の一択となる。
しかし中古車検索サイトによれば、その販売価格はなんと約400万~460万円。ノマドのメーカー希望小売価格は265万1000円(MT車)と275万円(AT車)なので、オプション等を盛っているとはいえ、その値段はなんと1.5倍! 100万円を超えるプレミアがついている状態なのだ。おそらくこの値づけは、受注再開のめどが立っていない現状を反映したものだろう。まさに、時間を金で買えということだ。
とはいえ、さすがにこの価格で普通に買う人がいるかは疑わしい。また、ジムニーシリーズはいずれもリセールバリューが期待できるクルマだが、それでも基本は実用車だ。ここまでのプレミアを長期で維持するのはムリがある。この状況はいずれ落ち着くと思われ、そのきっかけはやはり、新車の受注再開となるのだろう。
結局のところ、新車を待つにしろ中古車でねらうにしろ、核心となるのは新車のオーダー再開なのだ。そこで気になるのが、その前提となるバックオーダーの解消だ。今後も月間2500台の供給が行われるとしたら、単純計算だと1年半ほどで納車待ちは解消されることになる。またジムニー/ジムニー シエラの納期目安を探ってみると、とあるスズキディーラーのブログでは、2025年1月上旬時点での話として「ジムニーが1年前後、シエラのMTが6カ月前後、ATが10カ月前後」と記載されていた。同じ登録車のシエラが年間約2万6000台を供給していてこの納期なのだから、やはりノマドも、1年半ほど待つ覚悟は必要だろう。
ただ、そうした待ちの時間も、いずれは1年以内くらいに落ち着くことだろう。私たちのとれる策はありきたりだが、新車ディーラーに受注再開のお知らせを依頼し、購入資金をためながら気長に待つしかない。
(文=大音安弘/写真=スズキ、webCG/編集=堀田剛資)

大音 安弘
-
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探るNEW 2025.12.4 「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。
-
タイで見てきた聞いてきた 新型「トヨタ・ハイラックス」の真相 2025.12.3 トヨタが2025年11月10日に新型「ハイラックス」を発表した。タイで生産されるのはこれまでどおりだが、新型は開発の拠点もタイに移されているのが特徴だ。現地のモーターショーで実車を見物し、開発関係者に話を聞いてきた。
-
あんなこともありました! 2025年の自動車業界で覚えておくべき3つのこと 2025.12.1 2025年を振り返ってみると、自動車業界にはどんなトピックがあったのか? 過去、そして未来を見据えた際に、クルマ好きならずとも記憶にとどめておきたい3つのことがらについて、世良耕太が解説する。
-
2025年の“推しグルマ”を発表! 渡辺敏史の私的カー・オブ・ザ・イヤー 2025.11.28 今年も数え切れないほどのクルマを試乗・取材した、自動車ジャーナリストの渡辺敏史氏。彼が考える「今年イチバンの一台」はどれか? 「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の発表を前に、氏の考える2025年の“年グルマ”について語ってもらった。
-
「スバル・クロストレック」の限定車「ウィルダネスエディション」登場 これっていったいどんなモデル? 2025.11.27 スバルがクロスオーバーSUV「クロストレック」に台数500台の限定車「ウィルダネスエディション」を設定した。しかし、一部からは「本物ではない」との声が。北米で販売される「ウィルダネス」との違いと、同限定車の特徴に迫る。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――ロータス・エメヤR編
2025.12.3webCG Movies往年のピュアスポーツカーとはまるでイメージの異なる、新生ロータスの意欲作「エメヤR」。電動化時代のハイパフォーマンスモデルを、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんはどう見るのか、動画でリポートします。 -
NEW
タイで見てきた聞いてきた 新型「トヨタ・ハイラックス」の真相
2025.12.3デイリーコラムトヨタが2025年11月10日に新型「ハイラックス」を発表した。タイで生産されるのはこれまでどおりだが、新型は開発の拠点もタイに移されているのが特徴だ。現地のモーターショーで実車を見物し、開発関係者に話を聞いてきた。 -
NEW
第94回:ジャパンモビリティショー大総括!(その3) ―刮目せよ! これが日本のカーデザインの最前線だ―
2025.12.3カーデザイン曼荼羅100万人以上の来場者を集め、晴れやかに終幕した「ジャパンモビリティショー2025」。しかし、ショーの本質である“展示”そのものを観察すると、これは本当に成功だったのか? カーデザインの識者とともに、モビリティーの祭典を(3回目にしてホントに)総括する! -
NEW
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】
2025.12.3試乗記「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。 -
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】
2025.12.2試乗記「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。 -
4WDという駆動方式は、雪道以外でも意味がある?
2025.12.2あの多田哲哉のクルマQ&A新車では、高性能車を中心に4WDの比率が高まっているようだが、実際のところ、雪道をはじめとする低μ路以外での4WDのメリットとは何か? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。








































