若者よ、書を捨て、バイクに乗ろう! ~自工会二輪車委員会とメディアの親睦会に参加して~
2025.08.08 デイリーコラム大事なのはやっぱり若者!
2025年7月某日、神奈川・宮ヶ瀬で日本自動車工業会 二輪車委員会主催の「第12回メディアミーティング」が催された。このミーティングは、自工会とメディアの情報交換・相互理解を目的に、定期的に催されているものだが(参照:その1、その2、その3)、今回は「焼き網を囲んでカジュアルトークを楽しみましょう」という趣旨の、要は親睦会であった。
しかし、それをそのままリポートしたら「宮ヶ瀬ヴィレッジのBBQはマジでうまいんで、皆さんもぜひ!」という内容にしかならないので、今回は、そこで耳にした自工会や他メディアさんのお話と、それに対する記者の私見を紹介したい。酒類こそないものの、米と脂でバチバチに脳がキマった状態での立談だ。論立てがいささか緩いのは、ご容赦いただきたい。
さて。ミーティング冒頭での設楽元文委員長&江坂行弘常務理事のあいさつによると、自工会は今……に限った話ではないが、国内の二輪車市場活性化や、文化の醸成を含む業界全体の盛り上がりに腐心している様子である。その根幹となる国内新車販売をみると、2021年から2023年まで3年連続で40万台超えを達成。2024年は37万7960台にダウンしたものの、2025年上半期は前年比11%増の17万8406台となっており、このままいくと今年も40万台を超えるかもしれない。次なるステップは、この状態をいかに持続し、上向かせていくかだ。
コロナ禍の終息とともにおひとりさま需要が落ち着き、リターンライダーによる販売増も一巡したとみえる今、自工会があらためて注視しているのが、普遍の課題である若者需要だ。実のところ、若人の間でもバイクに対する関心は高まっているようなのだが、まだまだ「気にはなるんだけど」の域でとどまっている人が多いという。彼らの購入行動を遮る障壁はなんなのか?
……という話になると、大抵は「お金」「今のバイクは高すぎる」というアッサリした結論に落ち着くのだが、今回はさる御仁より、「そうではないのでは?」という興味深い異議が示された。
ハードルはお金の問題だけにあらず
おいっ子さん、めいっ子さんの行動を引き合いにした氏の意見はこうだ。今の若者はアニメなどのコンテンツやアイドルの推し活、ゲーム機や携帯端末、およびそこで提供されるサービスなどには、遠慮なくお金を出している。好きなものを我慢しないという点では、われわれの若いころよりもずっとアグレッシブである。ゆえに、若者がバイク購入に至らぬ理由を金銭的要件とするのはオカシイ。
これに関しては、半分納得、半分疑問というのが記者の見解である。今の若者が消費にポジティブという説については、「そうなのか」としか言いようがないが(なんせ記者のまわりには若者がいないので)、やっぱりお金も課題なのでは? とも思うのだ。ただし、ここでいうお金の課題とは、シンプルに額の高い安いを指しているのではない。
以下は、webCGでもお世話になっている某ライター氏(専門学校の非常勤講師も務めている)の受け売りなのだが、今の若者にとって、やはりバイクはおいそれと買えるものではないという。しかしそれは、単純にバイクが高い、というだけの話ではない。「本当に自分が好きになれるかもわからないものに、最初からこれほどの投資はできない」ということなのだそうだ。
この、「本当に自分が好きになれるかもわからないものに~」という感覚、記者もすごくよくわかる。自分にしても、これがあってキャンプや自転車等の趣味に踏み出せなかった記憶があるからだ。いわんやバイクをや。こっちは車両自体がお高いうえに、原付二種以上の機種が欲しけりゃ、車用の免許も取得しなければならない。保険料だってバカにならないし、ヘルメットや手袋だって買いそろえる必要がある。そこまでやって「……自分には合わないな」では、懐と時間のダメージがデカすぎるだろう。
中古車も新車も、今のバイクは確かに高い。しかし、今の若者のマインドからからすると、機会の喪失も同じくらい大きな問題ではないか。好きならお金は出せるけど、そもそも好きか嫌いか、試せる機会がない(より厳密には“知られていない”)のだ。
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とっかかりの機会を広げていこう
無論、そうした機会が一切ないということはない。レンタルバイクの「HondaGO」にでも行けば、一日4000円でカッコいい「クロスカブ50」が借りられるし、ヘルメットやグローブもレンタルして車両保険をプラスしても、7307円のお見積もりだ。あとは下道で宮ヶ瀬ダムでも往復すれば(関西だと美山あたりか?)、バイクが自分に合うか合わないかぐらい、わかるだろう。……ナニ? 普通免許もない? 安心したまえ。今日び、原付免許は1日で取れる。若者よ、書を捨てよ、町へ出よう。でもたまにはwebCGも読んでね。
というわけで、若者にバイクを買ってもらうには、とっかかりとなる機会を広範に設け、その機会を広く知ってもらうことが大事、というのが私の見解である。間口の広がり、という観点でみれば、免許なしで乗れる特定小型原付(悪名高い電動キックスケーターや電動モペットなど)の登場は、悪いことばかりではないよなぁと思うのだが……それはまた別の話になるので、機会があれば致しましょう。
しかし、それにしてもである。若者とバイクの未来に思いをはせつつ会場を見やっても、自工会もメディアの関係者も、みんなオジサンばかりじゃないか! 若者はどこいった? 普段「バイク女子も増えてほしい」とか言っていながら、女性も一人も見当たらんし……。待て、一人だけいるな。と思ったらオフィシャルカメラマンだった。肉をつつきつつ「女性が全然いませんね」と述べたところ、「そうなんです! 書いてやってくださいよ!!」とあおられたので、本当に書きました。いや、冗談じゃなくて。ホントにそういうところだぞ、日本自動車工業会(笑)。
(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=日本自動車工業会、webCG/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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