「新車のにおい」の正体は?

2025.11.04 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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新品のクルマに触れると、思わず「新車のにおい(香り)がする」と言ってしまいます。昔も今も、新車には独特の香りがあると思うのですが、一体、何のにおいでしょうか?

ご存じの方も多いかもしれませんが、“新車のにおい”の源は、「VOC(Volatile Organic Compounds)」と呼ばれる揮発性の有機化合物です。

ほかの要素もいくつかあって、革シートのにおいも含まれますが、一番多いのは、シートを貼り合わせるときの接着剤などでしょう。ほぼ、内装材からくる香りと思っていただいてかまいません。

体には害がないことになっていますが、イメージ的に、そういうにおいは体に悪いんじゃないか? と考えるお客さまは少なくありません。その声を受けて、2000年代の半ばだったと記憶していますが、トヨタでは「新車のにおいをなくしましょう」という運動が実施されてきました。

前述のとおり、ほとんどはインテリアの話ですから、現実的には内装メーカーに向けて「そういう対策はできませんか?」と働きかけたわけです。

こうした取り組みにより、今ではトヨタに限らず、どのメーカーのクルマでも新車のにおいはほぼなくなりました。ただ、その一方で、ある一定数のお客さまからは「新車らしくなくなってつまらない」というご意見も頂戴しますね。新車のにおいがないのでは、新車を買った気がしないと……。

じゃぁまたにおいを復活させるのか? といえば、本末転倒なのでそれはありませんが。新車のにおいについては自然に消えたわけではなくて、自動車メーカーや内装メーカーの取り組みによりなくなったという背景があるのです。

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多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。