クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

次期型はあるんですか? 「三菱デリカD:5」の未来を開発責任者に聞いた

2025.12.18 デイリーコラム 内田 俊一
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

「デリカミニ」が広げたブランドのファン

「三菱デリカD:5」が、もう何度目かの商品改良を受けた(参照)。前回の大規模マイナーチェンジが2019年で、現行型のデビュー自体はなんと2007年である。今回の改良を受け、現行型は今後もしばらく生産されることになるが、その先に待つ次期型はどのようなクルマになるのか? そもそも次期型はあるのか? 開発責任者にこの質問をぶつけてみた。

その前に、現在の販売状況を見てみよう。2019年の改良以降の数字を見ると、2024年の販売台数が最も多く、しかも2025年はそれを上回る勢いとなっている。この人気の要因について、三菱自動車工業 商品戦略本部チーフ・プロダクト・スペシャリストの藤井康輔さんは、あくまでも仮説としたうえで、品質問題等によるブランド毀損(きそん)からの復調に乗ったこと、特別仕様車「シャモニー」の好調、そして2023年に登場した軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」の存在を挙げた。

実はデリカミニの開発に際し、軽自動車ユーザーが持つデリカのイメージを調査したところ、「マニアの男性が乗るクルマという声が女性を中心にあり、デリカブランドは自分とは縁のない存在だと思われていた」という。しかしデリカミニを出したことで、「(そういった人たちの)デリカブランドとの距離感が近くなり、デリカミニが入り口となって『デリカっていいよね』という方が増えた」と分析した。

いずれにせよ、昨今の好調や支持層の拡大を見ると、次の世代が“ない”という可能性は低そうだ。藤井さんも次期型について、「デリカとはなにかという本質はぶれないようにする」と話す。では、その本質とはなにか? 藤井さんは「仲間や家族と楽しい時間を過ごせることが基本コンセプト。アクティブな活動時でも安心・安全・快適に走ることができないと、そういった楽しい時間は過ごせない。その思いもあり、悪路走破性を追求する。それはすなわち三菱車らしさでもある」という。そして「悪路走破性は絶対に外せない。しかし悪路だけガンガンいけるクルマではなく、家族と乗っても皆が快適で楽しい会話ができること。その両立は外してはいけないと意識している」「そこに裏づけられたデザインが必要。いくら走破性があっても、他社のミニバンのようなデザインではデリカではない」と続けた。

「三菱デリカD:5」と、同車の開発責任者を務める三菱自動車工業 商品戦略本部チーフ・プロダクト・スペシャリストの藤井康輔さん。
「三菱デリカD:5」と、同車の開発責任者を務める三菱自動車工業 商品戦略本部チーフ・プロダクト・スペシャリストの藤井康輔さん。拡大
一部改良を受けた「デリカD:5」。エクステリアでは、フロントグリルやフロントバンパーの意匠を変更。従来型の特別仕様車「シャモニー」の好調を受け、改良モデルではグリルまわりをメッキではなく黒やシルバーに変更した。
一部改良を受けた「デリカD:5」。エクステリアでは、フロントグリルやフロントバンパーの意匠を変更。従来型の特別仕様車「シャモニー」の好調を受け、改良モデルではグリルまわりをメッキではなく黒やシルバーに変更した。拡大
ホイールアーチモールや、新デザインの18インチホイールを採用し、リアバンパーの意匠も変更。テールゲートガーニッシュに描かれた「DELICA」のロゴが力強い。
ホイールアーチモールや、新デザインの18インチホイールを採用し、リアバンパーの意匠も変更。テールゲートガーニッシュに描かれた「DELICA」のロゴが力強い。拡大
インテリアでは8インチのカラー液晶メーターを新たに採用。インストゥルメントパネルの金属調アクセントや、ダークグレーのセンターパネルも目を引く変更点だ。
インテリアでは8インチのカラー液晶メーターを新たに採用。インストゥルメントパネルの金属調アクセントや、ダークグレーのセンターパネルも目を引く変更点だ。拡大
三菱 デリカD:5 の中古車webCG中古車検索

次期型は国内専用車? はたまたグローバルカー?

藤井さんは、次期型デリカD:5を企画するうえで、いくつかの方向性を検討しているという。例えば現行と同じように国内専用車とするか、グローバル展開するかだ。

実はデリカは、海外で「欲しい」という声が大きくなってきている。藤井さんも「以前はワンボックスのスライドドア車というと、欧州では商用車、ASEAN(東南アジア)では送迎車というイメージだった。それが最近では、(一般ユーザーの間でも)少しずつ悪路も走れて大人数が乗れるクルマのニーズが高まってきている。さらにASEANではキャンプブームが到来しており、そこにうまく乗せていきたい。中東では砂漠を走るので、その地域のディストリビューターにクルマを見せたらぜひ欲しいと言われた」と語る。

こうした要望に対し、現行型は国内専用車のために対応が難しかった。ハンドル位置の問題だけではない。例えば、国によって一人あたりの体重の基準が異なり、8人乗車ではこれが大きな差になることから、マーケットによっては補強が必要になるのだ。さらにASEANでは関税の障壁が高く、現地生産を考慮しなければならない。そこまでしてデリカを海外に出すか? 藤井さんは「グローバルで販売したほうがボリュームを稼げるので、投資ができ、いろいろなことができるようになる。しかし、あまりグローバルを見すぎると、肝心の日本で受け入れられなくなる」とジレンマを語る。海外では特にボディーサイズの拡大が求められるので、グローバル化によって日本の道路環境にマッチしないクルマとなる恐れがあるのだ。

しかし藤井さんは、こうした課題もポジティブにとらえている。「前向きに考えれば、多くの人に望まれているクルマだということ。お客さまがすごく期待してくれているので、非常にやりがいがある」。そして最後に「私の代でデリカを終わらせることはしない」と明言してくれた。

藤井さんは、自身でもデリカD:5を所有し、カスタマイズして楽しんでいるという。あくまでも趣味ではあるが、いちファンとしてのある種の“ユーザー目線”を商品企画につなげられるのは、大きな強みだろう。藤井さんだからこそつくり上げられるデリカワールドに期待したい。

(文=内田俊一/写真=三菱自動車、内田俊一、花村英典、webCG/編集=堀田剛資)

【ニュース】三菱が「デリカD:5」のマイナーチェンジモデルを正式発売 内外装や走行システムをアップデート

液晶メーターの、先進運転支援システム(ADAS)の表示画面。ADASについても、自動緊急ブレーキが自転車を検知できるようになったり、誤発進抑制制御が後退時にも作動するようになったりと、機能が進化している。
液晶メーターの、先進運転支援システム(ADAS)の表示画面。ADASについても、自動緊急ブレーキが自転車を検知できるようになったり、誤発進抑制制御が後退時にも作動するようになったりと、機能が進化している。拡大
シート表皮も好評な特別仕様車「シャモニー」にならい、はっ水加工のスエード調素材と合成皮革を採用。ステッチの色は内装の各所と同じカーキとしている。
シート表皮も好評な特別仕様車「シャモニー」にならい、はっ水加工のスエード調素材と合成皮革を採用。ステッチの色は内装の各所と同じカーキとしている。拡大
走行性能に関する点では、車両運動統合制御システム「S-AWC」の採用により、悪路走破性と直進安定性、操縦性を同時に向上。「NORMAL/ECO/GRAVEL/SNOW」の4つのドライブモードや、下り坂で車速を一定に保つ「ヒルディセントコントロール」も装備している。
走行性能に関する点では、車両運動統合制御システム「S-AWC」の採用により、悪路走破性と直進安定性、操縦性を同時に向上。「NORMAL/ECO/GRAVEL/SNOW」の4つのドライブモードや、下り坂で車速を一定に保つ「ヒルディセントコントロール」も装備している。拡大
改良型「デリカD:5」に関しては、「ジャパンモビリティショー2025」でプロトタイプを発表。同年10月30日に注文受け付けが開始された。
改良型「デリカD:5」に関しては、「ジャパンモビリティショー2025」でプロトタイプを発表。同年10月30日に注文受け付けが開始された。拡大
こちらは、2023年のジャパンモビリティショーで発表された「D:Xコンセプト」。「デリカD:5」の後継車種がどうなるかも気になるところだが、まずはこのたび発表された、デリカD:5の改良モデルに注目しよう。
こちらは、2023年のジャパンモビリティショーで発表された「D:Xコンセプト」。「デリカD:5」の後継車種がどうなるかも気になるところだが、まずはこのたび発表された、デリカD:5の改良モデルに注目しよう。拡大
デイリーコラムの新着記事
デイリーコラムの記事をもっとみる
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。