ホンダ・ヴェゼルe:HEV RS(FF)
言うほど硬派じゃない 2025.12.23 試乗記 ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」に新グレードの「RS」が登場。スポーティーなモデルにのみ与えられてきたホンダ伝統のネーミングだが、果たしてその仕上がりはどうか。FWDモデルの仕上がりをリポートする。今も神通力はあるか
令和の今もRSは若者たちの、あるいは気持ちは若いオジサンたちの購買意欲をかき立てるマジックレターなのだろうか。もともとのレンシュポルトでも、ラリースポーツでもさらにはロードセーリングでも、その意味するところは何でも結構だけれども、最近のホンダの使い方を見る限り、やはり狙いは“スポーツ性”のアピールだろう。しかもモデルライフ途中からのいわば“テコ入れモデル”としてこの記号を使っているようだ。
とはいえ、令和のカスタマーはホンダにどれほどのスポーツ性を期待しているのだろうか、という疑問は残る。フラッグシップの「NSX」も「S660」もすでに姿を消し、伝家の宝刀「タイプR」も事実上時々しか発売されない限定モデルである。F1をはじめとしたモータースポーツに積極的に関わっているのは事実だが、Z世代にはとてもスポーツカーメーカーとは思われていないのではないか、と(余計なことかもしれないが)オジサン世代は心配してしまうのである。いやいや、「プレリュード」が復活したじゃないか! と息巻く人もいるだろうけれど、あちらは汗臭さを感じさせないもっと洗練されたGTであり、しかも600万円を超える値段で月販目標300台のスペシャルティークーペとなれば、現状をガラッと変えるほど売れるとは思えない。
ホンダの代表車種
しかしながら、ヴェゼルはホンダの国内四輪セールスを支える働き者である。もう一台の稼ぎ頭である「フリード」を時に上回るほどの売れ行きをみせ、常に販売ランキングのトップ10に位置する人気車種である。コンパクトミニバンのフリードとヴェゼル、そしてもちろん、軽自動車の王様「N-BOX」がホンダの国内四輪ビジネスを支える大黒柱である。
現行型ヴェゼルは2021年発売の2代目で、2024年のマイナーチェンジでラインナップが整理され、ガソリン車はAWDの「G」グレードのみになり(FWDは廃止)、シリーズハイブリッドを基本とするe:HEVは「X」と「Z」の2グレード(ともにFWD/AWDあり)となり、それぞれに「PLaYパッケージ」と「HuNTパッケージ」という、いわばサブグレードが設定された。新設されたHuNTパッケージはトレンドのアウトドア志向で、ルーフレールやはっ水加工のコンビシートを標準装備、ツートンボディーカラーが特徴的な都会派のPLaYパッケージと対になる。
そこに加わったRSはZグレードをベースにしたスポーティーモデルである。試乗会のリポートにもあるように、1.5リッター4気筒(最高出力106PS/最大トルク127N・m)に駆動用モーター(131PS/253N・m)を組み合わせたシリーズハイブリッドパワートレインには手を加えず、ブラックのメッシュグリルにRSエンブレムなどの外装、さらに黒基調に赤いステッチが入るというスポーティーモデルのお約束インテリアトリムがRS専用となる。FWD/AWDともに用意されるが、今回紹介するのはFWDのRSである。
硬派というよりすがすがしい
内外装にスポーツテイストを盛り込んだだけではいかにものコスメチューンだが、すぐには分からない部分にこだわるのが生真面目なホンダのRSである。ヴェゼルRSはe:HEV Zグレードに比べて15mmだけ地上高を下げた(最低地上高はFWDで180mm/4WDで165mm)専用ローダウンサスペンションが与えられ、EPSの制御も見直されている。とはいえ、乗り心地の悪化を避けるためにスプリングやスタビライザーの設定は変わらず(ダンパー減衰力のみ専用)、サスペンションストロークも事実上変化なしという(代わりにバンプストッパーを変更)。
もともと2代目にモデルチェンジしたヴェゼルは一気に洗練され、乗り心地も滑らかにしなやかになっていたが、RSはそこに正確さとスタビリティーが上乗せされた感じである。15mmとはいえローダウン化によるとげとげしい乗り心地を心配する人にはまったく問題なしと伝えたい。汗をにじませて飛ばす、というのではなく、肩の力を抜いてもキビキビと走れる爽快感は新しいプレリュードにも通じるものがある。これなら、このRSの足まわりをスタンダードにしてもいいのではないか、と思うほどである。
人気には理由がある
さらに、実は大きなアピールポイントになると思われるのが車高である。ローダウン化に加えていわゆるシャークフィンアンテナをガラスプリント式に変更したことによって全高が1545mmに抑えられていることもRSの特長である。最初から狙ったことではないというが、結果的にこれなら一般的な機械式駐車場のサイズをクリアできる。もともと扱いやすいサイズの都会派SUVであるヴェゼルにとっては選ばれる理由がまたひとつ増えたことになるはずだ。
もちろん以前からのヴェゼルの特長でもあるリアシートバックレストを倒したときのダイブダウンと座面のチップアップ機能も備わっている。RSとはいえ家族思いのオトーサンが心配になるほどむやみに締め上げるのではなく、堅ろうでスタビリティーも高い足まわりを持ち、目いっぱい回さなければ(音量よりも音質が苦し気なことが惜しい)静かで燃費もいい。RS専用の黒っぽいトリムに赤のアクセントが利いたありきたりのインテリアがちょっと私には暑苦しいが、中身はすっきり上質でしかも実用的なヴェゼルの魅力をお客さまはちゃんと分かっている。それだからこそのトップ10ランキング常連である。
(文=高平高輝/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝/車両協力=本田技研工業)
テスト車のデータ
ホンダ・ヴェゼルe:HEV RS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1790×1545mm
ホイールベース:2610mm
車重:1460kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力:131PS(96kW)/4000-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3500rpm
タイヤ:(前)225/50R18 95V/(後)225/50R18 95V(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:21.4km/リッター(WLTCモード)
価格:374万8800円/テスト車=405万9000円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムクリスタルレッドメタリック>(6万0500円)/マルチビューカメラシステム+プレミアムオーディオ(14万3000円) ※以下、販売店オプション フロアマット プレミアム(4万7300円)/ドライブレコーダー(5万9400円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1020km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:336.0km
使用燃料:21.1リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.9km/リッター(満タン法)/15.8km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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