ホンダ・フリードスパイク Gジャストセレクション(FF/CVT)【ブリーフテスト】
ホンダ・フリードスパイク Gジャストセレクション(FF/CVT) 2010.09.09 試乗記 ……214万5000円総合評価……★★★
「クルマで遊ぶ」ではなく「遊びにクルマを使う」時代? 使えて遊べるを目指したという「フリードスパイク」に試乗した。
クルマは主役から脇役に?
早いもので、ベース車両の「フリード」はデビューしてから2年あまりが経過した。その人気はとても堅調に推移しており、2010年の上半期は4万2559台が売れた(自販連調べ)。この数字は新車乗用車販売ランキングで8位に位置し、人気ミニバンの第1集団に入っているのはもちろん、Bセグメントの人気車種である「日産ノート」や「マツダ・デミオ」をしのいでいる。
生活に対する今日的なバランス感覚を形にしたのが「フリード」ならば、「フリード スパイク」は遊びや余暇に対する今日的な感覚を形にしたクルマと言うべきか。かつてクルマ好きは、スポーツカーやスペシャリティカーなどでドライブに行ったりと、あくまで“クルマで遊んだ”もの。しかし「フリード スパイク」は、ジョギングやサイクリングやキャンプなど、いろいろな“遊びにクルマを使おう”と呼びかけている。レジャーにおいて、クルマは主役から脇役に回ったわけだ。
しかしこれもまた時代の支持を集め、発売から1カ月弱で月販目標(2500台)の4倍の1万台を超えた。ホンダによれば、購入層は「子離れ世代の男性ユーザーが約40%、独身男性ユーザーが約20%」と言う。この好調は車中泊ブームが追い風になっているという分析も見かけたが、だとすると「フリード スパイク」はひとりになりたいオトコをひきつけるフェロモンを放っているのか? 20年前なら、ひとりになりたいオトコはバイクに乗ったものだが……。時代は変わったものだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2010年7月9日に発売された「フリードスパイク」は、2008年5月にデビューしたコンパクトミニバン「フリード」の派生モデル。フリードの3列目シートを廃し、5名定員にする代わりに、収納やシートアレンジといったユーティリティを強化し、使えてもっと遊べるクルマを目指したという。
外観は、フロントまわりが四角いデザインになるのがフリードとの違い。エンジンは、フリードと同じ1.5リッターエンジン(118ps、14.7kgm)で、FF車にはCVT、4WD車には4段ATが組み合わされる。10・15モードの燃費値は16.4km/リッター。
(グレード概要)
グレードは、ベーシックな「C」、ベースモデルの「G」、装備充実の「Gジャストセレクション」、エアロ仕様の「Gエアロ」、両側パワースライドドアなどを標準装備した「Giエアロ」の5モデル。
テスト車「Gジャストセレクション」は、「G」の装備に加え、ディスチャージヘッドライトや、UVカット機能付プライバシーガラスを標準装備。荷室には、カーゴスポットライトやビルトインテーブルが備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
2段構造のダッシュボードは標準型「フリード」と共通。特に「フリード スパイク」用に変更されたところはない。赤基調だったメーター照明の色が青基調になったぐらいの違いしか見つからなかった。形状がユニークであるだけでなく、スイッチの操作性、メーターやナビゲーションの視認性も良く、小物入れも潤沢に用意されているので使い勝手も良い。形状と実用性の両面に、高いバランスが見出されている。
(前席)……★★★
フロントドアは取り付けヒンジに傾斜が付けられており(プジョーなんかと同じだ)、ドアの上方が広く開くよう工夫されている。シートのヒップポイントも高めなので、乗降性に優れている。こういう良さは、人間の頭よりむしろ身体が記憶する。じわりと染み入る良さである。
ただしシートの背もたれの形状がいまひとつ体に合わず、高速道路を2時間程度走ったら腰のまわりに疲労感をおぼえた。筆者(ドライバー)だけでなく、パセンジャーも同様の感想を述べた。
(後席)……★★★
インパネシフト&センタートンネルなしの構造をとるおかげで、1列目と2列目の行き来が自由自在。おまけにリアドアがスライド式なので、乗降時のストレスが(特に乗員の動きに気を配らなくてはならないドライバーにとって)非常に低い。また、小さなお子さんがいる家庭なら、雨の日に車外に出ずに中を自由に動けることに大きな魅力を感じるだろう。
後席のニールームは足が組めるほど広い。クッションの厚みも十分だし、ヘッドレストも有用だ。ただし、きれいにフォールダウンできるシートの宿命で、形状に抑揚がない。体の“よりどころ”がないので、ヨー方向の力が発生するたびに揺すられて不快。リクラインすれば少しは楽になるが、根本的な解決にはならない。近距離向けのしつらえ。
(荷室)……★★★★★
後席の畳み方がダブルフォールディング式から、フィットと同じ“ダイブダウン式”になった。そのおかげで、リアコンパートメントには商用車もかくやの荷室が現れる。荷台の最大長が2mなどという乗用車はそうない。このカテゴリーのチャンピオンだ。これだけ広いと、週末1000円高速を降りずに車中泊したくなる気持ちもわかる。しかし実際に横になると、窓まで遠いせいか、本来寝るところではない床に転がっている気分だ。心理的にはあまり快適ではない。
Cピラーより後ろがパネルとなったため死角は増えたが、実際に運転しているとそれほど気ならない。また荷台のフロアに置かれた“反転ボード”は軽く、操作しやすい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1.5リッターの直4ユニットは最高出力が118psとスペック的には凡庸だが、低回転域から十分なトルクを備えており、ドライバビリティにきわめて優れる。CVTのレスポンスも良い。これに四角く車体感覚をつかみやすいボディの恩恵が加わり、街中で操りやすいことこの上ない。この美点は標準型「フリード」とまったく同じだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
街中における乗り心地は思いのほか良い。走行姿勢はフラットで、路面の不整に対する“当たり"もマイルド、開口部の大きいボディの剛性感に不満はなく、いかにも転がり抵抗が少なそうなタイヤでツルーッと滑るように走っていく。
ただ速度が上がってくると、印象がだんだん悪い方に変わってくる。サスペンションのストロークが構造的に少ないのか、どちらかというと“足”を動かさない、硬めのセッティングが施されていて、路面からの入力でひとたびバランスを崩すとヒョコヒョコと小刻みなピッチングを露呈する。遠くに遊びに行くには、ちょっとせわしない乗り心地だ。またこの落ち着きのない挙動のせいで、直進性がいまひとつ低く感じられ、これも距離を乗りたいという気にさせない一因となっているように感じた。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:竹下元太郎
テスト日:2010年7月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:1320km
タイヤ:(前)185/70R14(後)同じ(いずれも、ヨコハマASPEC)
オプション装備:Honda HDDインターナビシステム<リアカメラ付>+ETC(24万1500円)/Lパッケージ(11万5500円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(5)
テスト距離:315.9km
使用燃料:29.99リッター
参考燃費:10.5km/リッター

竹下 元太郎
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