トヨタbZ4X Z(FWD)
これなら大丈夫 2026.02.14 試乗記 トヨタの電気自動車(BEV)「bZ4X」が大きく進化した。デザインのブラッシュアップと装備の拡充に加えて、電池とモーターの刷新によって航続可能距離が大幅に伸長。それでいながら価格は下がっているのだから見逃せない。上位グレード「Z」のFWDモデルを試す。本気出してなかっただけ?
これを「一部改良」と言われると、従来型を購入した人はどのように受け止めればいいのかと心配になる。BEVの進化が速いことは皆さんご承知とは思うが、やはり今までは正直言って様子見だったのではないか、と感じないわけにはいかない。ご存じのように、トヨタ初の本格的BEVとして鳴り物入りで2022年春にデビューしたbZ4Xは、当初サブスクリプションサービスの「KINTO」とリース販売のみの扱いだったが(兄弟車の「スバル・ソルテラ」は通常の販売方法)、1年半後に行われた「一部改良」でサブスクに加え普通に購入できるようになっていた。少ないとはいえ、初期型ユーザーの皆さんにはまことにお気の毒としか言いようがないほど、2025年10月に発売された改良型は全面的にアップデートされているのだ。
いわゆるハンマーヘッドタイプに一新されたフロントデザインよりも中身に注目だ。すでにリポートされているとおり、搭載バッテリーの容量拡大とコントロールユニットの効率アップによって航続距離が大幅に伸びたうえに、車両価格は同じグレードで50万円安くなり、しかもマイナーチェンジのタイミングに合わせてトヨタ独自の充電サービス「TEEMO」をスタートさせた。月額基本料金無料に加えてbZ4Xの新規ユーザーは1年間タダで充電できるというからすごい。というか、本気を出せばこのぐらいは朝飯前です、と言わんばかりの大攻勢である。これではライバルはたまったものではないだろう。
これまでは何してたんだっけ?
10月の発売直後からbZ4Xは前年同月比で何十倍! もの売れ行きとニュースになっているが、実は元の数字が小さいのでまあそれも当然というか、それほど驚くことではない。ちょっと復習しておくと、初期型は2022年春のデビュー直後にホイールとハブボルトの不具合が発覚(最悪の場合ホイール脱落の恐れあり)、その対策のためほぼ半年間生産休止となり、鳴り物入りの割には最初からつまずいてしまった。
さらに、メーター内にバッテリー残量の%表示がない(ハイブリッドなどから乗り換えたユーザーがまごつかないようにと当時は説明された)、急速充電も一日に実質2回までに制限されるなどの細かな不満点が取りざたされ、評判は良くなかった。これらについては2023年のマイナーチェンジで改良され、その際に通常の購入もできるようになったが、あまり浸透していなかったようだ。bZシリーズの第1弾たるbZ4Xは、バッテリーの信頼性と耐久性確保を第一に、とにかく安全マージンを大きくとった手堅さが目立ったのである。
これだけあれば心配なし
新しいbZ4Xの一充電走行距離(WLTCモード)は試乗車のZグレード・FWDで746km(オプションの20インチタイヤ装着車は673km)。従来型は559km(同じく512km)だったから、一部改良とはいえないぐらいの大幅な向上だ。実際にはモード値の7掛けと見積もっても500km以上は期待できるから、これなら無頓着に使っても不安を感じることはないだろう。
またモーター最高出力が150kW(204PS)から167kW(227PS)へパワーアップしたいっぽう、バッテリー容量も71.4kWhから74.69kWhに拡大されている。航続距離の伸長はこのおかげであることはもちろんだが、エネルギーマネジメントの効率化が効いていることは間違いない。その証拠に、Zグレードとは反対に(価格を抑えるために)バッテリー容量を57.72kWhに減らしたベースグレードの「G」(FWDのみ)でも一充電走行距離は544kmと、従来型Zとほとんど同じ距離を確保している。ZグレードのFWDは550万円だが、Gグレードの本体価格は480万円。補助金(ざっくり130万円)を当てにすれば、もはやガソリン車と比べてもほとんど割高感はないといっていい。本気を出したトヨタ、恐るべしである。
すっかり別物
新型は明らかに洗練されている。全体的に静かなうえに(フロントには遮音ガラス採用)、アクセルペダルに対する反応も自然で、駐車場の出し入れなどの際の微低速でのコントロールが容易になっている。さらに従来はソルテラのみの装備だった回生ブレーキのレベルを4段階に調整できるパドルも備わった。扱いやすくなったと感じるいっぽう、なぜ最初からこうしなかったのか? との思いはやはりつきまとうが、それが石橋をたたいてさらにたたいて渡るトヨタの方針ということなのだろう。乗り心地も可変ダンパーなどの飛び道具を持たないBEVとしては良好だ(18インチも効いているはずだ)。路面によってはもう少しフラットだといいな、と感じる場合もあるが、まずまず納得できるレベルにある。
ダッシュボードやセンターコンソールまわりも一新され、シフトレバー代わりのダイヤルセレクターがセンターコンソールのより近い場所に移設されるなどの改良を受けている。ただし、シートも含めて室内がグレー基調で統一されているせいか、正直言って地味で目新しさがなく、プラスチックに囲まれている印象が強い。着座位置が高めなこともあって(後席フロアもやや高い)視界は良く、スイッチ類の使い勝手も悪くはないが、やはり手堅く保守的な感じだ。バッテリー残量表示など必要な情報は漏れなく備わるメーターも、相変わらず数字やグラフィックが小さく、重要度に応じたメリハリがついていないので煩雑で見にくい。bZ4Xに限ったことではないが、この辺りのデザインにもっと力を入れてほしいのが正直な気持ちだ。とはいえ、この仕上がりなら「まだまだ心配」という人の不安をかなり払拭できるのではないか。これからが本番である。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
テスト車のデータ
トヨタbZ4X Z
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
ホイールベース:2850mm
車重:1880kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:227PS(167kW)
最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
タイヤ:(前)235/60R18 103H XL/(後)235/60R18 103H XL(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電走行距離:746km(WLTCモード)
交流電力量消費率:113Wh/km(WLTCモード)
価格:550万円/テスト車=564万1020円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスメタル>(5万5000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(4万1800円)/前後方2カメラドライブレコーダー<TZ-DR210>(4万4220円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1240km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:299.5km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.4km/kWh(車載電費計計測値)

高平 高輝
-
スズキeビターラZ(4WD)【試乗記】 2026.3.28 スズキが満を持して世に問うた、初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」。エントリーグレードは400万円以下! 500万円以下で4WDも用意されるというお値打ち価格のBEVは、走らせてみるとどうなのか? 東京-愛知を往復して、その実力を確かめた。
-
スズキGSX-8T(6MT)【レビュー】 2026.3.25 昨今のネオクラシックブームに乗り、いよいよスズキからも新型車「GSX-8T」が登場。しかし実車に触れてみると、既存のライバルとはちょっと趣の異なるマシンとなっていた。スタイリッシュないでたちとスズキらしい実直さが融合した、独創の一台を報告する。
-
日産セレナe-POWERハイウェイスターV(FF)【試乗記】 2026.3.24 販売台数ではトヨタ勢に差をつけられながらも、日産の屋台骨として奮闘する「セレナ」。現行型の登場から3年、マイナーチェンジで磨きがかかった最新の「e-POWERハイウェイスターV」に試乗すると、人の感性に寄り添う開発陣のこだわりと良心が見えてきた。
-
BMW iX M70 xDrive(4WD)【試乗記】 2026.3.23 BMWが擁するSUVタイプの電気自動車「iX」。そのハイパフォーマンスモデルが「iX M70 xDrive」へと進化を遂げた。かつて、BMWの志向する次世代モビリティーの体現者として登場した一台は、今どのようなクルマとなっているのか? その実力に触れた。
-
BMW i5 eDrive35LエクスクルーシブMスポーツ(RWD)【試乗記】 2026.3.21 BMWの「5シリーズ ロング」は知る人ぞ知る(地味な)モデルだが、実はエンジン車のほかに電気自動車(BEV)版の「i5 eDrive35L」も用意されている。まさに隙間産業的にラインナップを補完する、なんともニッチな大型セダンの仕上がりをリポートする。
-
NEW
あなたの行動範囲を無限大に 「クムホ・ソルウス4S HA32」を試す
2026.3.30毎日をアクティブにするクムホのオールシーズンタイヤ<AD>クムホのオールシーズンタイヤ「ソルウス4S HA32」は春夏秋冬の全季節に対応。その心は高いドライ&ウエット性能で夏タイヤとしての高い性能を満たしたうえで、高い雪上性能を付与しているということだ。「三菱デリカD:5」に装着した印象をリポートする。 -
NEW
第332回:クルマ地味自慢
2026.3.30カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。最近、年齢とともに地味なモデルが大好きになった。そんななか、人気の「フォレスター」や「クロストレック」の陰にひっそりと隠れたスバルを代表する地味モデル「インプレッサ」に試乗。果たしてその印象は? -
NEW
レクサスGX550“オーバートレイル+”(4WD/10AT)【試乗記】
2026.3.30試乗記スタッドレスタイヤ装着の「レクサスGX」でウインタードライブへ。クルマ好きにとってはいかにも胸がふくらむシチュエーションだが、刻一刻と変化する自然環境が相手ゆえに、なかなか一筋縄ではいかないものだ。山に分け入る際には引き返す覚悟もお忘れなく。 -
NEW
欧州メーカーもホンダも大損 EV政策はなぜ急加速から“大コケ”に至ったか?
2026.3.30デイリーコラム主要な自動車メーカーが、EV政策の見直しにより、2025年12月期または2026年3月期の決算で莫大(ばくだい)な損失を計上した。なぜEV開発はかくも急速に進められ、急減速に至ったのか。清水草一は、その理由についてこう考える。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス” +エアロパフォーマンスパッケージ(後編)
2026.3.29ミスター・スバル 辰己英治の目利きモータースポーツへの投入を目的に開発され、今も進化が続いている「トヨタGRヤリス」。そんな“戦うためのコンパクトスポーツ”は、ミスター・スバルこと辰己英治の目にどう映るのか? STIのコンプリートカーにも通じるという、そのつくり込みに迫る。 -
スズキeビターラZ(4WD)【試乗記】
2026.3.28試乗記スズキが満を持して世に問うた、初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」。エントリーグレードは400万円以下! 500万円以下で4WDも用意されるというお値打ち価格のBEVは、走らせてみるとどうなのか? 東京-愛知を往復して、その実力を確かめた。


















































