プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)
大家族ならではの悩み 2026.03.11 試乗記 「プジョー3008」の電気自動車(BEV)版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。もはやスペック面での不安は皆無
2025年に日本にも導入された3代目のプジョー3008。そのパワートレインは当初マイルドハイブリッドのみの展開だったが、遅れてBEVもようやく上陸を果たした。車名はそれを表すようにE-3008となる。グレードは3008では受注生産ながらベーシックな「アリュール」も用意されるのに対して、E-3008は上級の「GTアルカンターラパッケージ」のみだ。価格は760万円と、「3008 GTアルカンターラパッケージ」に対して187万円高い。ちなみにCEV補助金は2026年3月時点で89万円が適用される。
搭載されるリチウムイオンバッテリーの容量は73kWhと、ロングレンジの「トヨタbZ4X/スバル・ソルテラ」とおおむね同じだ。受電能力は普通充電が11kW、急速充電が160kWに設定されている。日本の現状のインフラならばフルに性能を引き出せるスペックだ。インポーターの発表でも150kWの急速充電器を使えば、20→80%の充電に要する時間はCHAdeMOひとつなぎ相当の約30分。一充電走行距離はWLTCモードで604kmとなっている。どこまでを求めるかにもよるが、こういった数字面をみるだけでも運用の気遣いはずいぶん軽減されたと実感できる。
3008はCセグメント級SUVということもあって、車格的にはなかなかリーズナブルだ。全長は同級の「RAV4」や「フォレスター」よりも短い。日常的な用途において気に留めるべきは1895mmという全幅だろうか。デザイン的には後方視界はカメラに頼ることになるが、前方や側方の視界はプレーンで見たままの感覚で取り回しができる。
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内装の仕立てはいいけれど……
内装は3008の大きな見せ場だろう。小径ステアリングの上縁側から計器類を見通すことで視点移動が少なく視覚情報が得られるという「i-Cockpitコンセプト」は先代「208」から採用され、13年以上にわたってプジョーのデザインフィロソフィーの核として進化を続けてきた。
一見とっぴにみえる3008の意匠も、「308」「408」あたりと見比べるとその連続性がくみ取れるだろう。ダッシュボードやドア、センターコンソールと大面積を占めるトリムにはテキスタイルを用いてモダンなラウンジのような落ち着きを表現。情報系はメーターディスプレイとインフォテインメントディスプレイが一体化し、湾曲したフローティングマウントスクリーンに収められるあたりが新しい要素だろうか。その奥側にはアルミ調のオーナメントが取り回され、夜間は間接的に照らされて浮かび上がるなど、イマっぽい演出も加えられる。
ドライバー寄せのアシメトリックな造形は、左右のハンドル位置に合わせた専用部品の要素が多くなり、いかにも生産の歩留まりが悪そうだ。そのぶん308/408のように造作全体の共有化を進めてコストを圧縮しているのだろうが、現在のプジョーブランドが差別点として内装に重きを置いているのも間違いないところだろう。
ただしドライバーの身になれば、いくつか気になるところがあるのも確かだ。プジョーではおなじみとなったトグル式のシフトセレクターはステアリング脇に置かれ、いかにもそれがありそうなセンターコンソール部には同じくトグル式のドライブモードスイッチがあるものだから、慣れるまでは操作を間違うこともあった。スマートフォンや小物を置くトレイの位置も角度によっては入れたものが見えなくなる。アップライトポジションのSUVであってもメーターの視認性を優先すれば着座高やステアリング位置などのドラポジが規制されるi-Cockpitの悪癖も相変わらずだ。やはりこの空間設計は、必要+αのリッチな情報がヘッドアップディスプレイに表示されるのが前提ではないかとあらためて考えさせられる。そして、そんなモヤモヤをさらに増幅させたのがE-3008の乗り味だった。
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プジョーらしからぬフットワーク
「STLAミディアム」と名づけられた、内燃機関系もBEV系も両建てできる新たなプラットフォームは、今後のステランティスのC/Dセグメントを支えるキーテクノロジーだ。当然ながら擁するブランドのさまざまなニーズやキャラクターをカバーできるように設定されている。グループ内でのC/Dセグメントの台数は200万台規模になるというから、文字どおりの屋台骨でもある。
乗っていて、この骨格そのものに起因する物足りなさを感じることはまったくない。具体的な数値は持ち合わせていないが、ボディーや軸回りの剛性は前任ともいえる「EMP2」と比べても間違いなく高いはずで、それは凹凸ひとつも体に染み付いたなじみのワインディングロードでのフィードバックで十分計り知れた。
が、これがプジョーにとって福音となったかといえば、E-3008に乗る限り、そうは思えなかった。バッテリーの搭載に伴ってスティフネスがさらに向上してしまっていることもあってか、タウンライドの速度域では入力の逃げ場がなく、時折車内にバシッと伝わってくる。高速域でも目地段差などで強いバウンドが現れるなど、いなしが利いていない感触が端々にみてとれる。
全体的に筋張ったシャシーに組み合わせられるのは、ロックtoロックで2.5回転とかなりクイックに設定されたi-Cockpitならではの小径ステアリングだ。微小な操舵からビビッとゲインが立ち上がり、キュキュッと向きを変えるその動きは、「Mスポ」脚のBMWあたりを思い起こさせる。つづら折れをクイクイと切り返し、揺り返しがドサッとのしかかるほどに横負荷が高まれば思わず声が上がるほどの高応答ぶりをみせてくれるが、かつてのプジョーらしさと重なるところを見いだすのは難しい。穏やかなゲインの立ち上がりとともに、切り込むほどに大きなロールを伴いながらもむっちりと路面に粘りつく、かつてはトヨタも研究しまくったという往年のプジョー脚を知る身には、E-3008の動きの速さは意趣替えかと思うほどだ。
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違いを出すのは大変だ
新しいプラットフォーム、BEVがゆえの重量と重心、駆動バッテリーを多く積むために苦心して取り回しただろうリアのマルチリンクサス……と、抱える要素が初めてづくしなことも、恐らくはE-3008の走りに影響している点はあるのだろう。ともあれ、軽い車体を魔法のトーションビームで支えるプジョーの十八番的なクルマづくりとは遠いところにあるわけで。
でもそれ以上に影響しているのは、ステランティス内でのプジョーの立ち位置の明確化にまつわるプレッシャーではないだろうか。シトロエンがチル&コンフォートならプジョーはエモーション&スポーティーと、その志向はグループPSA時代よりもさらに先鋭化している。グループにアルファ・ロメオやDSやオペルや……と、キャラクターがひしめくなかで、プジョーなりの鮮明な個性が求められるわけだから、これは荷が重い。かつてもシトロエンのテコ入れが入った2000年代、獅子顔世代のプジョーはドイツ車ばりのスポーティネスを追い求めていたが、察する苦悩はあの時と重なって見える。
でも、こういうオッさんのたわ言に逐一向き合っていればブランドが枯れていくのもまた確かだ。更新されたばかりのプラットフォームを使いこなしながら、これからのプジョーがどういう乗り味へと深化していくのかは、老婆心を抱きつつ見守っていこうと思う。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=ステランティス ジャパン)
テスト車のデータ
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4565×1895×1665mm
ホイールベース:2740mm
車重:2160kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:214PS(157kW)/6000rpm
最大トルク:343N・m(35.0kgf・m)/250-4370rpm
タイヤ:(前)235/55R19 105V XL/(後)235/55R19 105V XL(ミシュランeプライマシー)
一充電走行距離:604km(WLTCモード)
交流電力量消費率:149Wh/km(WLTCモード)
価格:760万円/テスト車=774万4070円
オプション装備:ボディーカラー<オケナイトホワイト>(6万6000円)/ドライブレコーダー<V263A>(5万9950円)/ETC1.0車載器(1万6060円)/電源ハーネスキット(2060円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:3027km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:372.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.4km/kWh(車載電費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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