日産セレナe-POWERハイウェイスターV(FF)
星は輝きを増す 2026.03.24 試乗記 販売台数ではトヨタ勢に差をつけられながらも、日産の屋台骨として奮闘する「セレナ」。現行型の登場から3年、マイナーチェンジで磨きがかかった最新の「e-POWERハイウェイスターV」に試乗すると、人の感性に寄り添う開発陣のこだわりと良心が見えてきた。スポーティーなフロントマスク
ざっくり言うと、2025年における日産セレナの販売台数は、トヨタの「ノア」「ヴォクシー」連合の約半分だった。一般社団法人日本自動車販売協会連合会の「乗用車ブランド通称名別順位2025年1月〜12月分」(※軽自動車および海外ブランド車は除く)という資料によれば、日産セレナの販売台数は7万1465台。対するトヨタ・ノアが8万0065台で、ヴォクシーが7万8760台であった。
みなさんは、この数字をどのように受け取るだろうか。判官びいきと言われればそれまでだけれど、ヴォクシーの背中が見えている位置につけていて、しかも同期間の「ホンダ・ステップワゴン」の販売台数は5万7053台だから、筆者にはセレナが健闘しているように思える。
いっぽうで驚いたのが、このランキングのトップ30に入っている日産車が「ノート」(10位)とセレナ(11位)だけだという事実。34位に「エクストレイル」、45位に「キックス」と、トップ50の日産車はたったの4台なのだ。こうしてみると、ノートより利益率が高いと思われるセレナは日産の稼ぎ頭、文字どおり屋台骨を支える存在だ。
ちなみに、現行のセレナもノア/ヴォクもデビューは2022年の同期の桜。2025年の後半にマイナーチェンジを受けたことも共通している。マイチェンでセレナのどこが変わったかというと、「LUXION(ルキシオン)」とハイウェイスターVの2グレードについては、外観のデザインに手が加えられている。どちらもフロントグリルの意匠が縦基調となり、ハイウェイスターVにはさらにスポーティーなフロントマスクが与えられている。ルキシオンは「テーラーフィット」という新しい素材を用いたインテリアが採用されているいっぽうで、ハイウェイスターVの内装に変更はない。
今回は、エンジンが発電し、バッテリーに蓄えた電気でモーターを駆動する、セレナe-POWERハイウェイスターVに試乗した。
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感性に調和するインターフェイス
まず目を奪われたのが、マイチェンを機に新色として設定された「アクアミント」というボディーカラー。クルマのボディーカラーとしては見慣れない色味なので、初見では、おっ、おうと戸惑ったけれど、じっくり見ると落ち着いた色調で、おしゃれなファミリーが乗っていそうだ。フロントマスクのイメチェンも好印象。ハイウェイスターVというグレードにふさわしい精悍(せいかん)な表情になっている。
運転席からの眺めに変化はないけれど、試乗車にはメーカーオプションの「NissanConnectインフォテインメントシステム」が装着されていた。こちらにはセレナとしては初となるGoogleのOSが搭載されているとのことで、「オッケー、Google」と呼びかけて音声で操作すると、ラジオの選局と目的地の設定をつつがなく終えることができた。
市街地を走りだしてあらためて感じるのが、「e-POWER」というハイブリッドシステムの出来のよさだ。バッテリー残量がたっぷりとある場合は、モーターだけで発進。無音・無振動で加速する。ここでの力強さと滑らかさは、電流が流れた瞬間に最大の力を発揮できるモーターだからこそなせる業だ。
車速が上がるとエンジンが始動。発電機でつくった電気でモーターを駆動するのと同時に、充電を行う。ここで「エンジンが始動」と書いたけれど、気づかないうちにいつの間にかエンジンがかかっている感じで、ショックやノイズは一切ない。スムーズかつ静かだから、仲のいい家族は会話が弾むはずだ。気は優しくて力持ちのパワートレインなので家族のだれが運転しても安心だし、クルマや運転が好きな方が乗ればアクセル操作に対するレスポンスのよさを楽しめる。
アクセルペダルの操作だけで減速ができる「e-Pedal Step」は、いままでの「e-Pedal」と異なり減速後にクリープ(微速前進)するので、停止時にはブレーキを踏む必要がある。ただしアクセルペダルとブレーキペダルを踏み替える頻度が減ることは間違いないし、アクセルペダルをオフにした時の減速感はマイチェン前よりも人間の感性に沿うようになっていると感じる。
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グランドツーリングの強い味方
一般道での乗り心地は、このクラスのミニバンとしては標準的。路面の凹凸からのショックをそれなりに拾うから素晴らしく快適というわけではないけれど、高速道路に入って印象が変わった。速度を上げるほどにフラットで、心地よいライドフィールになるのだ。e-POWERによる静穏な室内環境とあいまって、グランドツアラーとして高い資質を備えていると感じる。
快適なだけでなく、操縦性の高さにも目を見張った。たとえば高速道路の出入り口のランプでは、前後のロールバランスのよさを体感できる。こうした場面でのステアリングホイールから伝わる手応えもしっかりしていて、ファミリーカーだからと手を抜かずに、クルマ開発の手だれが機能と走行パフォーマンスをしっかりとバランスさせ、つくり込んでいることがうかがえる。
乗り心地のよさ、意のままの加速、安定したハンドリングなどなど、まさに高速道路の星で、塾やサッカー少年団への送り迎えに使うだけではもったいない。ゴールデンウイークや夏休みには、本州縦断や北海道一周旅行に使いたい。
先行車両に追従するクルーズコントロール「プロパイロット」のスイッチはステアリングホイールのスポーク部分に備わり、右手親指の2アクションで追従を開始する。2、3度操作すればブラインドタッチで扱うことができるインターフェイスであるうえに、シームレスな加速と素早いレスポンスを両立するモーターとの相性もばっちり。先行車両との車間距離を適切に保ちながらすーっとストレスなく加速して、前を走るクルマが速度を落とせば穏やかに減速する。この所作も疲労低減につながり、グランドツーリングの強い味方になる。
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クルマ好きも運転を楽しめる
シートアレンジの多彩さと使い勝手のよさは日本のミニバンのお家芸で、日産セレナもその例外ではない。たとえば、「スマートマルチセンターシート」と呼ばれる2列目シート中央の座席を動かすことで、2列目シートと3列目シートのウオークスルーが可能になる。3列目のシートを跳ね上げて両脇に寄せるようなアレンジを施す際にも、コツや力が要らないから、だれでも簡単に扱える。
といった具合に、街なかでは粛々と走り、人や荷物を満載して遠くを目指すような使い方にもしっかり対応するし、クルマ好きが運転しても楽しめる。強いて言えば、タウンスピードでの乗り心地をもう少ししっとり、しなやかにしてもらえるとうれしいけれど、高速コーナーでの好ハンドリングとトレードオフだと考えれば、そこは目をつぶってもいいような気もする。
冒頭で、日産セレナの販売成績について健闘していると書いたけれど、実際に一日をともに過ごしてみると、開発のみなさんがいい仕事をしていることがわかる。
むしろ、「ミニバンなんだからそこまでこだわらなくていいのでは?」というところまで、きちんと整えている。ただひとつ疑問というか不思議に思うのは、こんなにちゃんとしたクルマをつくる会社が、なぜ経営不振に陥ってしまうのか、ということだ。開発の現場はしっかりとしている。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=日産自動車)
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テスト車のデータ
日産セレナe-POWERハイウェイスターV
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4765×1715×1870mm
ホイールベース:2870mm
車重:1810kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:98PS(72kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:123N・m(12.5kgf・m)/5600rpm
モーター最高出力:163PS(120kW)
モーター最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)
タイヤ:(前)205/65R16 95H/(後)205/65R16 95H(トーヨー・トランパスmp7)
燃費:19.0km/リッター(WLTCモード)
価格:377万5200円/テスト車=463万0450円
オプション装備:ボディーカラー<アクアミント/ブラック、スクラッチシールド>(4万9500円)/アダプティブLEDヘッドライトシステム+LEDアクセントランプ(4万2900円)/NissanConnectインフォテインメントシステム<NissanConnect専用車載通信ユニット、SOSコール、12.3インチメーター&12.3インチナビディスプレイ、ドライブレコーダー[前後セット]、ETC2.0、プロパイロットパーキング>+インテリジェントアラウンドビューモニター<移動物検知機能付き、インテリジェントルームミラー、6スピーカー>+寒冷地仕様ホットプラスパッケージ+寒冷地仕様クリアビューパッケージ(62万2600円)/100V AC電源1500W<室内1個、ラゲッジスペース1個>(5万6100円) ※以下、販売店オプション ウィンドウはっ水 12カ月 フロントウィンドウ+フロントドアガラスはっ水処理(1万4850円)/フロアカーペット<エクセレント>(6万9300円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:910km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:345.2km
使用燃料:21.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.0km/リッター(満タン法)/16.8km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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