ディフェンダー110オクタP635(4WD/8AT)
無敵のヒーロー 2026.04.29 試乗記 「ディフェンダー」シリーズの旗艦「オクタ」が2026年モデルへとアップデート。メカニズム面での変更はごくわずかのようだが、その速さと快適さは相変わらず圧倒的で、それはオンロードでもオフロードでも変わらない。300km余りをドライブした印象をリポートする。エクステリアデザインを(小)変更
昨2025年7月15日に受注開始されて、最近デリバリーがはじまったディフェンダーの2026年モデルでは、以前に限定車として導入されて完売となっていた“ヒーローモデル”のオクタもあらためて「110オクタP635」としてカタログモデルに昇格した。
商品名がやけに長くなったが、そのうちの110はホイールベースが「90」と「130」の中間=標準サイズであること、そしてP635はエンジンが“P(ペトロール)=ガソリン”で最高出力が“635PS“であることを意味する。つまりは、オクタのキモとなっている部分は、すべて今までと変わりないということだ。ただし、ベースとなるディフェンダーが、この2026年モデルで“初のマイナーチェンジ”という触れ込みで、現行型最大の変更が実施されている。
具体的には、外装ではヘッドライト、フロントバンパー、ボンネットインサート、テールランプ、サイドベントなどが新しくなったそうだが、このうち、前後バンパーとボンネットインサート、サイドベントが専用化されているオクタだと、その部分は基本的に変わっていないようだ。いっぽう、ヘッドライトとテールライトは、オクタでもベースモデルに準じる変更が実施されているが、それらも内部デザインとフラッシュサーフェス化(テールのみ)の変更のみなので、オーナーでもなければ、ほとんど区別はつかないだろう。
ただ、今回の試乗車の外板色である「サルガッソブルー」は2026年モデルから導入された3つの新色のうちのひとつだ。そのほか、「アダプティブオフロードクルーズコントロール」が新たに導入されたのも、2026年モデルのディフェンダーのハイライトのひとつだが、ひとまず今回の日本仕様のオクタには設定されない。
ダカールラリーでの快挙
オクタといえば、この2026年シーズンから世界ラリーレイド選手権へのワークス参戦をスタートさせている。その初陣となった1月の「ダカールラリー2026」では全3台が完走して、参加した「ストッククラス」で1位、2位、4位を占めるという快挙を果たした。
オクタをベースとする「ディフェンダー・ダカールD7X-R」が戦うストッククラスは従来の市販車部門の後継クラスとして、事実上、今シーズンからはじまったカテゴリーである。市販車ベースであることは前身の市販車部門と変わりないが、改造範囲が大きく広がっているのが新しいストッククラスの特徴で、アプローチアングルやディパーチャーアングルを拡大するためのバンパー形状の変更や冷却機能強化、サスペンションストロークの延長とトレッドの拡大などが認められている。
2026年のダカールのストッククラスには、前年までの市販車部門で通算25勝、しかも12連覇中だったトヨタ車体(2004年まではアラコとして参戦)の「ランドクルーザー」も“300”ベースの新型マシンで参戦したが、結果としては完全にオクタにしてやられたわけだ。ちなみに、選手権の第2戦となる「ラリーレイド・ポルトガル2026」がこの3月下旬におこなわれて、そこでも全3台が完走して、最上位の「アルティメットクラス」に迫る速さを見せたとか。
いずれにしても、これでオクタは“いま世界でいちばん速い市販オフローダー”という称号を、予定どおり手にしたことになる。日本メーカーもこれまで数々の世界的イベントで優勝して、幾多のタイトルも獲得しているが、もっとも勝つべきタイミングできっちり勝ち切るランドローバーの戦略と任務遂行能力は、さすがというほかない。
とめどなく湧き出る低速トルク
というわけで、あらためての発売となったオクタである。同時にあらためて運転席に座ってみても、そこからの眺めは、今回から大型化(11.4→13.1インチ)されたセンターディスプレイ以外、2025年モデルの限定車とほぼ同じだ。音響に連動して振動する自慢のシートも健在である。20インチのオールテレインタイヤか22インチのオールシーズンタイヤが購入時に選択できるのも従来どおりで、試乗車には前者が履かされていた。
BMWから供給される4.4リッターV8ツインターボはダカールD7X-Rにも使われている、ディフェンダーではオクタ専用エンジンとなる。オクタ以外のディフェンダーにもV8が用意されているが、これとは別物の自社製5リッタースーパーチャージャーだ。最高出力635PS、最大トルク750N・mというピーク性能は、最近まで販売されていた「X5 Mコンペティション/X6 Mコンペティション」のそれより、さらに10PS高いチューンとなる。そこに組み合わせられる19PS、200N・mのマイルドハイブリッドシステムはBMWより少しだけ高出力となっている。
それにしても、このBMW謹製エンジンとオクタのマッチングは素晴らしいのひと言だ。アクセルひと踏みで4.0秒という0-100km/h加速もまさにスーパーカー級であるが、それ以上に感心するのが、右足に吸いつくがごときアクセルレスポンスだ。
7000rpm強というトップエンドまでスパッと回り切る高回転性能はさすがのBMWだが、リアルワールドでは2000rpm以下からとめどなく湧き出るようなトルクのほうが重要だ。しかも、右足首の微妙な操作にも、この巨体をじわりと反応させるしつけは見事というほかない。しごくスムーズなアイドリングストップの所作といい、エンジン本体に加えて、マイルドハイブリッド機構も、じつにいい仕事をしている。
砂利道では水を得た魚
ただ、そんなパワートレインに輪をかけて“絶品”なのが、いまは「レンジローバー・スポーツSV」とオクタの専売特許である「6Dダイナミクスサスペンションシステム」である。機械的なスタビライザーのかわりに、油圧で連結した電子制御ダンパーとエアスプリングで姿勢制御する最先端のシャシー技術だ。
今回は舗装路メインの試乗だったので、「砂地」「泥/わだち」「草地」「砂利」「雪」「岩場」の各モードが選べる「テレインレスポンス2」を使う機会はなかったが、「オート」「ダイナミック」そしてステアリングの専用ボタンで起動する「オクタ」の各モードは試すことができた。
それにしても、どのモードを選んでも、しなやかに路面をホールドしつつも、上屋をピタリとフラットに保つフットワークは、まるで生きているかのようだ。オートからダイナミック、そしてオクタ……とモードを切り替えるにつれて、舗装路での乗り心地は少しずつ引き締まっていく。オートではまるで浮遊したかのようだった路面感覚は、ダイナミックでは吸いつくように、オクタでは踏みしだくかのように変化していく。表面的な乗り心地は少しずつ硬くなるのに、ドライバーの目線の上下動は逆に減少していくのに驚く。しつこいようだが、見事なアシさばきである。
とはいえ、今回のオールテレインタイヤでは、舗装路で気合を入れると、意外なほどあっさりグリップを失ってしまう。オクタのキャラからすると今回の20インチがより“らしい”かもしれないが、現実的に大半を占めるはずの舗装路走行では、22インチのオールシーズンのほうが圧倒的にメリットは大きそうだ。
とはいえ、今回の試乗の最後に、フラットな砂利道を見つけて走ることができた。そこをオクタモードで走るオクタは、まさに水を得た魚だ。過酷な凹凸をほぼ完全にバネ下であしらいながら、上屋はピタリとフラットなまま駆け抜ける。まさしくラリーレイドよろしく、フラットなダートや砂利道、砂地を高速で駆け抜ける瞬間のオクタは、なるほど“ヒーローモデル”という自称にふさわしい。
(文=佐野弘宗/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝/車両協力=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ディフェンダー110オクタP635
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4940×2065×2000mm
ホイールベース:3020mm
車重:2610kg
駆動方式:4WD
エンジン:4.4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:635PS(467kW)/6000-7000rpm
エンジン最大トルク:750N・m(76.5kgf・m)/1800-5855rpm
モーター最高出力:19PS(14kW)/800-2000rpm
モーター最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/250rpm
タイヤ:(前)275/60R20 116H M+S XL/(後)275/60R20 116H M+S XL(BFグッドリッチ・トレイルテレインT/A)
燃費:--km/リッター
価格:2190万円/テスト車=2442万6394円
オプション装備:ボディーカラー<サルガッソブルー[マット]>(0円)/Wi-Fi接続<データプラン付き>(3万8000円)/20インチフルサイズスペアホイール(0円)/オールテレインタイヤ(3万1000円)/パフォーマンスステアリングホイール<ノンレザー>(0円)/20インチ“スタイル1086”ホイール<ダイヤモンドターンド、サテンダークティント、サテンブラックコントラスト>(50万3000円)/スペアホイールロック<5スポーク>(1万8000円)/ホイールロックナット(1万円)/ルーフレール<ブラック>(5万1000円)/チョップドカーボンファイバーエクステリアパック(43万円)/ドライバーアテンションモニター(4万2000円)/マットプロテクティブフィルム(66万円)/ギアシフト<レジスト>(0円)/ヘッドライニング<ライトクラウド、スエードクロス>(0円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(6万0280円)/ディプロイアブルサイドステップ一式(68万3114円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1915km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:336.3km
使用燃料:60.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:5.6km/リッター(満タン法)/5.7km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.23 マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。
-
フェラーリ12チリンドリ マヌアーレ(FR/8AT)【海外試乗記】 2026.10.21 MT車が長らく不在となっていたフェラーリ。そこに突如として現れファンを驚かせたのが、MT車と同じ変速動作で運転できる「12チリンドリ マヌアーレ」だった。果たして、その乗り味は? 名コースで試乗した西川 淳の第一報。
-
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】 2026.10.19 トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。
-
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】 2026.10.17 三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(後編)
2026.10.25思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。箱根のワインディングロードでのドライブで、日産自慢の最新電動パワートレインと4輪制御技術はどんな印象を残したのだろうか。 -
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】
2026.10.24試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。 -
第61回:「あえてのフツウ戦略」に脱帽! 「スズキeスカイ」の若きチーフエンジニアを直撃!
2026.10.23小沢コージの勢いまかせ!! リターンズスズキの軽乗用EV「eスカイ」が注目を集めている。小さなバッテリーにして一充電走行距離310kmを誇る電費のよさはもちろんのこと、スズキらしさ全開ともいえる価格設定もまたスゴい。若きチーフエンジニアの杉山達樹さんにその秘密を聞いた。 -
第878回:スタッドレスタイヤなのにドライとウエット性能を強化? 「ミシュランX-ICE SNOW+」の走りを試す
2026.10.23エディターから一言2026年8月に発売された「ミシュランX-ICE SNOW+」は、氷雪路でのパフォーマンスはそのままに、ドライ/ウエット路面での性能向上を目指したという最新スタッドレスタイヤだ。冬道のさまざまな路面状況において安心感を提供するという、その走りを報告する。 -
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】
2026.10.23試乗記マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。 -
「マツダRX-7」の復刻部品を生産!? ミクニの挑戦は旧車オーナーの福音となるか?
2026.10.23デイリーコラムミクニが「マツダRX-7」向け復刻部品の開発検討を開始した。古い自動車部品の供給は、なぜここまで困難を極めるのか? ミクニの挑戦は世のロータリーオーナーにとって福音となるか? 日本の自動車文化に潜む課題と、その解決に挑む企業と人をリポートする。






















































