ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド アップランド(4WD/6AT)
週末の冒険のお供に 2026.05.06 試乗記 ジープのなかでも最もコンパクトなSUV「アベンジャー」に、4WDのマイルドハイブリッド車(MEHV)「4xe」が登場。頼りになるリアモーターと高度なマルチリンク式リアサスペンションを備えた新顔は、いかなる走りを披露してくれるのか? 悪路以外でも感じられる、その恩恵を報告する。ジープだけど欧州生まれ
アベンジャーはジープのラインナップにおいて、ステランティスのストラテジーを最も色濃く反映したモデルといえるだろう。用いるプラットフォームは旧グループPSA由来の「CMP」系で、企画や生産も欧州主導で行われる。「レネゲード」よりも小さいBセグメント級のサイズということもあって、ジープの母国であるアメリカでは展開がない。加えて、当初は電気自動車(BEV)のみの設定だったが、そこに追加されたのが、今やステランティスの欧州系モデルで中核を担う、1.2リッター3気筒ターボエンジンをベースとするMHEVだ。
2560mmのホイールベースは同門の「プジョー2008」「フィアット600」「アルファ・ロメオ・ジュニア」と共通だ。つまりアベンジャーは、グループ内でBセグメント系SUV群の一翼を担っている。いっぽうで、後軸に最高出力29PS、最大トルク89N・mの駆動モーターを搭載する電動四駆となっている点が、ジープのモデルならではのポイントといえる。先出のBEV版は前軸モーターのFWDで、駆動制御のみで悪路での適性を高めていたが、このMHEV版では、四駆化に加えてリアサスペンションも独立型のマルチリンクとするなど、物理的にも走破性を確保する対応がなされている。
ちなみに最低地上高は210mmと、「スズキ・ジムニー シエラ」と同じだ。もちろん、前後に大きなデフ玉を持つリジッドサスのクルマとの数値の比較が、優劣うんぬんを示すわけではないが、アベンジャーがきちんとジープらしさを意識したクルマであることは、伝わってくるだろう。
そうした思いはデザインにも表れていて、オーバーハングを丸く、短く切り詰め、前後端部を無垢(むく)の樹脂でカバーしたそのいでたちは、いかにも悪路志向を匂わせる。前後フェンダーの張り出しを見ているとそんな風には感じられないが、実は兄弟分のジュニアより全長も全幅も小さい。前方の見切りも悪くないので、狭い街なかでも機動力の高さを実感できるだろう。
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働き者のリアモーター
乗り込んでみれば、室内の設(しつら)えは至ってコンベンショナルだ。物理ボタンも残される操作系は、シフトセレクターがボタン式であることを除けばトリッキーなところはない。パッケージもBセグメント系SUVとみれば平均的で、リアドア開口部の形状や、足入れ性/足抜き性などにも不満はない。樹脂が多用される質感は好みが分かれそうだが、クルマのキャラクターを鑑みれば、むしろ掃除機をかけやすく拭き掃除もしやすいことが、ポジティブに受け止められるかもしれない。
ドライブモードによっては、後軸側のモーターも積極的に駆動させる48VのMHEVシステムということで、走りだしからエンジンが稼働する機会は、他の兄弟分よりもやや多めに感じられる。が、「EB2」系の1.2リッター3気筒エンジンは音・振動の特性に優れているから、それが著しく気障りになることはない。とくにドライブモードによっては、後軸側のモーター駆動も最大化させるべく、初手からエンジンは常時稼働となるが、舗装路であえてそのモードを試してみても、大きな違和感はなかった。
その後軸モーターは、通常時の走行でも、青信号からの発進や強めの加速の際に、積極的に走りに加勢しているようだ。それは駆動状況を示すモニターだけでなく、低・中速での走行時にも明らかな力強さとして体感できる。ピークパワーやピークトルクに兄弟分との差はないが、数値に表れない領域で、縁の下の力持ちになっているということなのだろう。
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実は舗装路も得意なんです
後軸モーターの主電源はエンジンということもあって、悪環境で継続的に力強い駆動力を発揮するような走り、たとえば岩場やモーグルのような状況において車体を大トルクで押し続けるような場面では、さすがに性能的に過度な期待はできなさそうだ。適した役割として思い浮かぶのは、「もう少し駆動力があれば」となってしまう砂地や雪だまりからの脱出など、“ここ一発”の後押しがほしい場面だろう。以前、ジープブランドでラインナップされていたレネゲードの4xeは、プラグインハイブリッドということもあって豊富な電力を長時間にわたり推進力に置き換えることができたが、さすがにMHEVのアベンジャーでは、やれることに限界もある。
でも、アベンジャーにはMHEV×4WDによる、思いがけない副産物もあった。それは先にも触れた、Bセグメント級SUVとしてはずいぶん豪華なマルチリンク式の独立懸架リアサスペンションだ。大径タイヤを履く重いバネ下をものともせず、凹凸が連続してもアシをバタつかせて上屋を左右に揺するようなしぐさがおおむね抑えられているのは、これによるところが大きいのだろう。恐らくは購買・調達をおもんぱかって仕様統一を図ったか、取材車のタイヤはフィアット600やアルファ・ロメオ・ジュニアといった兄弟車と同寸、そして同銘柄だった。そうしたなかでも、アベンジャーは乗り心地面でひとつ抜けたところにあるのが、この試乗でもはっきりと伝わってきた。
メインは街乗りだけど、週末は冬でもアウトドアスポットに出向くような、アクティブなライフスタイルにもミートする。アベンジャーはそういうクルマだと思う。いや、その程度のことならジープのクルマでなくても賄えるだろう……というのは、常にクルマ側に軸足のあるわれわれ的な“正論”だが、実はこういうライトユーザーこそが、ジープブランドをしっかり支えているのは疑いようのない事実だ。仮に一目ぼれで手に入れたとしても、走り味に他の兄弟とは異なる主張があるわけだし、まあそうイキんなさんな……。と自らに言い聞かせるのが、こじらせたクルマ好きのオッサンに求められる社交性である。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=ステランティス ジャパン/撮影協力=河口湖ステラシアター)
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テスト車のデータ
ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド アップランド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4120×1775×1600mm
ホイールベース:2560mm
車重:1480kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)/1750rpm
フロントモーター最高出力:21PS(15.6kW)/4264rpm
フロントモーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
リアモーター最高出力:29PS(21kW)/3000rpm
リアモーター最大トルク:89N・m(9.1kgf・m)/500-2000rpm
タイヤ:(前)215/60R17 100V XL M+S/(後)215/60R17 100V XL M+S(グッドイヤー・ベクター4シーズンズGen-3)
燃費:19.0km/リッター(WLTCモード)
価格:499万円/テスト車=512万1890円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション プレミアムX-camoプリントフロアマット(5万2470円)/ドライブレコーダー(6万3580円)/ETC1.0車載器(1万3750円)/電源ハーネスキット(2090円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1555km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:350.0km
使用燃料:22.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:15.4km/リッター(満タン法)/15.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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◆【ニュース】「ジープ・アベンジャー」の4WDハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」発売
◆【試乗記】ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド アップランド スタイルパック装着車(4WD/6AT)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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