まさしく桁違いの1169PS&2000N・m 新型「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」が搭載する数々の新機軸
2026.05.27 デイリーコラム静まり返った発表会場
2025年に発表された「メルセデスAMG GT XX」というコンセプトカーが、2代目「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」の量産型として登場した。このクルマ、基本的にはゼロからAMGが開発を担ったフルオリジナルのEVである。プラットフォームもモーターも、現時点ではメルセデス・ベンツには使用されていないAMG専用だ。
アメリカ・ロサンゼルスで開催された発表会は、一般道の一部を占有し、実際にこのクルマを走らせるという大々的なもので、映像を見る限りでは多くの参加者(おそらくインフルエンサーや顧客)が絶叫したり踊ったりなんかしていて、えらい盛り上がりようだった。いっぽう、自分はドイツ国内のプレビューに立ち会った。新型「Sクラス」の国際試乗会(参照)の翌日にセッティングされていて、Sクラスに試乗した各国のプレスがそのまま流れた。
場所はハンブルクにあるAMGブランドセンター。現地のメルセデスディーラーの敷地内にあるAMG専用のショールームである。その中の一部が暗幕で覆われており、中に入るとベールをかぶったクルマが置かれていた。アンベールの瞬間というのは、われわれプレスのような常にちょっと斜に構えて冷静を装う連中でも、たいていの場合は「おー」とか「へー」とか思わず声を漏らすものなのだけれど、今回はアンベールされるとその場が一瞬シーンとなった。プレス向けのアンベールはこのほかにも何回か行われていたようなので、ほかの回の空気感がどうだったのかはよく分からないけれど、少なくとも自分の回はそんな感じだった。そしてこの「シーン」は、思わず息をのむほど感動して言葉が出なかったという類いではなく、「えっとこれはつまりどう解釈すればいいのだろう」というような困惑に満ちたものだった。
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10分の充電で460km走れる
AMG GT 4ドアクーペのスタイリングは、基本的にコンセプトモデルのそれを踏襲している。ただ、ディテールがより詳細になったことで、なんとなく全体に漂う雰囲気はコンセプトモデルとは明らかに異なっていた。ボディーサイズは全長×全幅×全高=5094×1959×1411mm、ホイールベースが3040mm。車両重量は2460kg。床下の空気の流れをコントロールして最適なダウンフォースを得るべく、電動格納式のリアディフューザーが速度に応じて伸縮する。リアスポイラーも80km/h以上になると自動的に現れ、状況に応じて角度も調整。さらに、リアバンパー内にスピーカーが仕込まれており、実際のAMGのエンジンからサンプリングしたV8サウンドを聞かせることもできるようになっている。EVになっても、結局やっぱりV8からは離れられないのねと思ってしまった。
AMG.EAと呼ばれるAMG専用にしてEV専用のプラットフォームには、革新的なハードウエアがいくつも載っかっている。駆動用モーターはメルセデスが完全子会社化したYANA製のアキシャルフラックスモーターで、これをフロントに1つ、リアに2つ置いた4WDの駆動形式だ。アキシャルフラックスモーターは、永久磁石を円盤状に配置することで通常のモーターよりも軽量コンパクトになっている。バッテリーも新開発で、直径×高さ=26×105mmの円筒形のセルが床下に計2660個並べられている。ただし、後席の足元下だけは避けるように置かれているので、後席に座ると足元の部分だけ少し深く掘られており、きちんとした着座姿勢がとれるようになっている。バッテリーの容量は106kWhで、定格電圧は800V。最大600kWの充電器まで対応しており、運よくそんな充電器を見つけられたら、10分で約460km分の充電が可能だそうだ。
現実離れしたパワースペック
このクルマには「メルセデスAMG GT63 4ドアクーペ」と「メルセデスAMG GT55 4ドアクーペ」の2種類のグレードが用意されている。前者のパワースペックはピークの最高出力が1169PS、連続最高出力は721PS、ピークの最大トルクが2000N・m。後者はピークの最高出力が816PS、連続最高出力が510PS、ピークの最大トルクが1800N・mと公表されている。出力もトルクも4桁なんて数値を見せられても、「はいそうですか」とそのパワーが実際にどれくらいのものなのかをすぐに理解できるはずもなく、非現実的すぎてもはやよく分からない。むしろ、普通の道を普通に走っても、うれしさや楽しさが享受できるのかのほうに興味が湧いてしまう。
AMG GT 4ドアクーペが本領を発揮するのは、クローズドエリアやサーキットなのだろう。それはさまざまな機能からも容易に推測できる。「AMGパフォーマンスメニュー」は車両の走行状態がリアルタイムでチェックでき、パワートレインとタイヤの正確な温度を常時表示、走行中に車両に生じる物理的な力(ロールやヨーモーメントなど)を可視化できる。「AMGトラックペース」は、テレメトリーのデータなどが表示できるほか、「レースナビゲーション」という機能では、ヘッドアップディスプレイに最適なブレーキングポイントと走行ラインを表示してくれるという。これはちょっと使ってみたい。
メルセデスAMG GT 4ドアクーペは未知数のことが多すぎて、分からないことだらけである。もちろん早くステアリングを握ってみたいけれど、世界各国のマーケットの反応も大いに気になる。特にそのエクステリアデザインにはね。
(文=渡辺慎太郎/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝)

渡辺 慎太郎
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