スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムブラックS:HEV EX プロトタイプ(4WD/CVT)
遅れてきた本命 2026.07.02 試乗記 スバルのクロスオーバーモデル「レヴォーグ レイバック」に、ハイブリッドユニットを搭載し、車高を20mm落とした「S:HEV」が登場。電動パワートレインと切り詰められた足まわりは、このクルマにどんな走りをもたらすのか? ワインディングロードで確かめた。この顔にピンときたら……
長野県は白馬八方尾根で実車を見た記者の第一印象は、「なんか、ずいぶん端正になったな」というものだった。
新しいフロントマスクの、加飾を控えたシンプルなしょうゆ顔がいい、というのはまあ好みの問題だが、全体のバランスがちょっと均整のとれたものになった点は、だれしもがグッドボタンを押すところでしょう。このレヴォーグ レイバックの新しい派生モデル、既存の1.8リッターターボ車より、フロントオーバーハングが35mm切り詰められているのだ。プラシーボ効果かもしれないけど、全長の1%にも満たない寸法の変化もなんとなく知覚できるんだから、人の目って面白い。
それにしてもこの顔、皆さんはどこかで見たことがないだろうか? 特にこの、切れ長のヘッドランプとか……。ここで「あ!」と思った方はかなりのスバル通。実は同車のヘッドランプ、同門の「クロストレック」のものなのだ。
そもそもこの派生型レイバックは、フロントセクションがごっそりクロストレックと入れ替えられている。上述のショートオーバーハング化は、短躯のハッチバック車と頭をすげ替えた結果の副産物なのである。記者などは、「クロストレックって、樹脂装飾を取っ払ったらこんな顔になるのか。こっちの仕様もあればいいのに」なんて、無責任に考えてしまった。
それはさておき、なぜに派生型レイバックの頭がクロストレックと共用なのか? それはずばり、ハイブリッドユニットを搭載するためである。いちからエンジンコンパートメントまわりを設計し直すより、「クロストレックS:HEV」から拝借したほうが手間もコストもかからず、より早く、より納得感のある価格でハイブリッドのレイバックをお出しできると、そうした理由からの離れ業であった。
というわけで皆さん、スバル・レヴォーグ レイバックに、待望のフルハイブリッド登場ですよ。
変わったのはパワートレインだけにあらず
あらためまして、スバル・レヴォーグ レイバックS:HEVは、既存のレイバックをベースに2.5リッター水平対向エンジン+2モーターの電動化ユニットを搭載した、ハイブリッドモデルである。カタログ燃費は19.0km/リッターと、テンパチターボの14.1km/リッターから約35%の伸び(いずれもWLTCモード)。燃料タンクは63リッターなので、額面上の航続距離は1200kmに迫る。組み合わされる駆動システムは伝統と信頼の機械式4WDで、スバルは競合の2モーター4WDより、「3輪がスリップするような極悪なシチュエーションでの走破性で勝る」と胸を張る。
もうひとつ、大きく変えられた点が足まわりで、サスペンションを20mm切り詰めて車高を1550mmに抑えているのだ。これにより、最寄りのデパートが機械式の立体駐車場で……という方はもちろん、自宅マンションが立駐のせいで、これまで車庫証明が取れなかった方も、心置きなくレイバックを選べるようになったわけだ。
一方で、スバルがこの手の車種でこだわってきたロードクリアランスは180mmに減じているが、競合他車にはこれより低い車種もあるし、ぎりぎりプライドは保たれた、ということにいたしましょう。それに、悪路向けの電制アシストシステム「X-MODE」が追加されたのは、オフロードにおける確かな加点ポイントだ。とくに降雪地などでは、雪道の走行を想定したドライブモードやヒルディセントコントロールに救われる人もいることでしょう。登坂性能についても、車重が100kgほど増えたにもかかわらず、応答性の高いモーターによってターボ車以上のものを獲得しているという。
ドアを開けて車内にお邪魔する。内装色はグレードによって異なり、下位グレード「プレミアムブラックS:HEV EX」は黒のモノトーンで、上位グレード「プレミアムS:HEV EX」は黒とタンのツートン。シートはともに本革だが、後者は上等なナッパレザーとなる。どちらもベタだけどクセのない構成で……まことに僭越ながら、いつもちょっとやりすぎるスバルにしては、的を射たコーディネートだと思いました(笑)。
褒めてばかりだと提灯(ちょうちん)記事とか言われそうなのでネガも記すと、車体後部にバッテリーを積む関係で、荷室のフロアはほんのり上昇。後席はリクライニングができなくなり、可倒機構は4:2:4の3分割から6:4の2分割になり、背もたれを倒した際にも、床面にわずかな段差がつくようになった。床下収納も減じており、荷室容量はターボ車の492リッター(サブトランク込みで561リッター)に対して410リッター(同429リッター)である。奥行や幅も少しずつ変わっているので、その辺が気になる方は、ぜひディーラーの展示車で使用感を確かめてほしい。
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ターボから変わったところ、変わらないところ
レヴォーグ レイバックS:HEVの試乗会は、白馬八方尾根の山麓からうさぎ平テラスへと通じる、ワインディングロード(というか取り付け道路)で行われた。急峻な上り・下りとタイトなつづら折れが特徴の難コースで、路面のお肌もけっこう荒れ気味。しかも記者の取材日は、豪雨+濃霧という笑うしかないシチュエーションだった(掲載写真は別日撮影のもの)。いやはや、タフが自慢のスバル車を試すのに、最高の環境でしたよ。
助手席にスバルのエンジニア氏を乗せ、まずはうさぎ平テラスからのダウンヒルに臨む。で、南無三と駆け出てすぐに、「あぁ、これなら大丈夫かも」と肩の力が抜けた。最新のスバル車に乗るとだいたい感じるのだが、運転しやすいのですよ。過敏でも鈍感でもないスロットルとブレーキ、スムーズだけどちゃんと路面のインフォメーションを伝えてくるハンドル、煩わしいところのない前と左右の視界。基本って、ホント大事だ。
特にこの下りでは、自然なブレーキの応答と操舵感に感謝した。後者に関しては、エンジニア氏いわく「確かにパワステの制御は変えているけれど、それはS:HEVでもターボでも、同じ方向性の操作感を実現するため」とのことだったが……あとで比較試乗したターボ車は、もっと手ごたえがゴリゴリしていたように思う。まぁ、それはそれで好きなんだけど。
また、記者はFFベースのSUVで急坂を下っていると、ブレーキング時にリアがほのかに浮く感覚を覚えることがあるのだが(エンジニア氏も「フォレスターではそういった声を聞いたことがある」とのこと)、それもレイバックS:HEVでは控えめな印象。後ろにバッテリーを積んだ恩恵か? しかしこれも、「前後重量配分はそんなに違わないですよ」(エンジニア氏)。確かにターボ車でもこの感覚は同じだったので、そもそも重心が低くて前後に長いレイバックは、前後の荷重抜けに強いクルマなのかもしれない。こうしたあたりは、乗らなきゃわからないワゴン型クロスオーバーの美点だ。
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足が短いほうがむしろ快適?
Uターンポイントでヨイショと切り返し、今度はヒルクライム。スバルのいう「ターボ車以上の登坂性能」という主張にウソはないようで、雨にぬれて砂利の浮いた急坂を、レイバックS:HEVはぐいぐい上る。ペダルを踏み増していく際の4気筒サウンドも、美声というわけではないが健康的で、個人的に気分がアガった。
加えてナイスだったのが、コーナーからの立ち上がり。踏み始めからラグなしにパワーを積み増していく特性は、モーター付きのパワーユニットならではの美点だ。ペダルとの間にスロットルだのなんだのが挟まるエンジン単体では、こうはいくまいて。もっとも、ターボ車のほうはペダルを大きく踏みこんだ際のパワーの伸びが気持ちよく、それについては高回転域で空転するハイブリッドには望めぬ魅力(参照)。読者諸氏は、お好みのほうをどうぞ。
それにしても快適である。車重が増えてサスも切り詰めたのだから、足は引き締められているものと思っていたのだが、そのあたりはターボ車よりむしろしなやか。ハイブリッド化に際して前後のフレームをつくり替えた恩恵か、騒音というか細かな振動の入りも少ない&小さい印象だ。
後で聞いた話だけれど、確かにS:HEVはターボ車よりサスペンションが短くなっているが、アブソーバーやバンプストッパーの長さを吟味して、ストロークは数mmのダウンで抑えているとのこと。加えて、増えた車重が“押さえ”となって、乗り心地にいい方向に作用しているのではないか、とのことだった。むしろ今回の試乗では、「飛ばしたら段差で底突きしたから、アシはもっと固めるべし!」との声もあったそうだが……。ステーションワゴン/SUVのようなファミリーカーでこんな山坂道をぶっ飛ばし、同乗者のお尻も気にせず足を締めろなんていうパパとは、離婚したほうがいいと思います(笑)。
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存在意義がクリアになった
以上が、今回の取材での記者のインプレッションである。限られた環境下での試乗でしたが、いいクルマでした。S:HEVも、比較試乗したターボ車も。
両車の違いを記せば、ともに快適かつ走りもしっかりしているのだが、そのなかでもターボ車はちょっとやんちゃ寄り、S:HEVはより洗練されたポジションにある感じだ。レイバックは当初、ブランド初の都会派クロスオーバーというコンセプトでデビューしたが……恐縮ですが、このS:HEVでようやく、それにすんなりうなずけるクルマになったと思う(参照:その1、その2)。
スバルの説明によると、既存のレイバックには、ユーザーからさまざまな声が寄せられていたという。すなわち「ハイブリッドが欲しい」「ターボダクトはいらない」「どんな立駐にも入れる車高にしてほしい」「ルーフレールを付けてほしい」「SUVとしての実用性を上げてほしい」……等々。相反する要望を見るに、やはりこのクルマは商品性が難解だったのだろう。「背が低いことのメリットってなに? ないなら普通のSUVでええやん」みたいな。
その点、このS:HEVは背高な連中にはない、このカタチだからこその明瞭な利点を得た。しかもハイブリッド化で燃費も上々、ターボダクトも消滅し(笑)、デビュー当初に「○○だったらなぁ」なんて言われていたポイントを、丁寧につぶしてきた格好だ。まさに遅れてきた本命! いや遅れちゃいかんでしょ。最初っからこれも出しておきなさいよ……とは、この際申しますまい。お値段はフォレスターS:HEVの437万8000~464万2000円、ターボ・レイバックの405万9000~424万6000円に対して、424万6000~452万1000円である。
(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=スバル/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムブラックS:HEV EX プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4735×1820×1550mm
ホイールベース:2675mm
車重:1690kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:160PS(118kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:209N・m(21.3kgf・m)/4000-4400rpm
モーター最高出力:119.6PS(88kW)
モーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(ファルケン・ジークスZE001A A/S)
燃費:19.0km/リッター(WLTCモード)
価格:424万6000円/テスト車=--
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年式(プロトタイプ)
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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