1990年代の名車「プリメーラ」が復活? 日産のグローバル戦略の一翼を担うBEVの正体を探る
2026.07.30 デイリーコラム中国をハブとするグローバル戦略
日産自動車は2026年6月4日、「第10回フィリピン国際モーターショー」において、新型ピックアップトラックの「ナバラ プロ プラグインハイブリッド」と、新型フル電動セダンの「プリメーラEV」を公開した。日産によると、これら2台のモデルは同年4月の「長期ビジョン説明会」で示した「中国をイノベーションとグローバルな輸出のハブとして、グローバルに商品競争力を強化する戦略の一環」とのことだ。「中国からグローバルへの輸出戦略の始まり」を示す事例というわけである。
ナバラ プロ プラグインハイブリッドは、オーストラリアで売っているピックアップトラック「ナバラ」(「三菱トライトン」の姉妹車)とはまったく別。2025年4月に「上海モーターショー2025」で初公開された「フロンティア プロPHEV」そのものであり、ネーミングが異なるだけだ。
エクステリアでは、1980年代のD21型「ハードボディ ピックアップトラック」がボンネットフード前端に備えていた「3スロット」を、LEDランプを用いて現代的に表現した点が特徴である。D21型ハードボディは、9代目「ダットサントラック」の北米仕様車に用いられた車名で、これをベースにしたSUVが初代「テラノ」である。
ナバラ プロ プラグインハイブリッド/フロンティア プロPHEVはフレームシャシーを持つプラグインハイブリッド車(PHEV)で、ボディーサイズは全長×全幅×全高=5520×1960×1950mm、ホイールベースは3300mm、車重は2500〜2540kgである。トライトン(同5360×1930×1815mm)や「トヨタ・ハイラックス」(同5325×1885×1865mm)よりひとまわり大きく、「トヨタ・タンドラ」(同5930×2030×1980mm)よりコンパクトだ。
パワートレインは縦置き搭載する。1.5リッター直4ガソリンターボエンジンの後方に配置するトランスミッション(段数は未公表)に高出力モーターを組み合わせる。システム最高出力は408PS以上、最大トルクは800N・mと発表されている。中国仕様車のEV走行距離は「135kmの達成を目指す」と発表されている。
サスペンションはフロントがウイッシュボーン式、リアは5リンク式だ。前後輪のトルク配分を自動で制御する「Intelligent All-Wheel Drive」を採用し、リアデフには電動メカニカルロックを採用。「ハイブリッド」「ピュアエレクトリック」「パフォーマンス」「スノー」の4種類のドライブモードを設定する。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
中国で生産する電動モデルの日本導入は?
プリメーラEVも、既存モデルの車名変更版である。中身は2024年11月の「広州国際モーターショー」で初披露された東風日産の電気自動車(BEV)「N7」だ。プリメーラと聞くと、欧州車を彷彿(ほうふつ)させる硬派な走り味が印象的だった1990年デビューの正統派4ドアセダンを連想させるが、これはその現代的解釈と理解していいのだろうか(フィリピンの人にどう響くかは分からないが)。
プリメーラEVは意外と大きい。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4930×1895×1487mmで、ホイールベースは2915mm。例えば、「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の全長×全幅×全高=4930×1840×1540mm、ホイールベース2850mmとオーバーラップするサイズ感だ。駆動用リン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーは58kWhと73kWhの2タイプの容量を設定している。
カーナビで目的地設定を行うと高速道路や一般道でシステムが自動で運転を行うナビゲートオンパイロット(NOA)を搭載するなど、最新の知能化技術を採用したN7はリーズナブルな価格設定もウリで、中国では主に35歳以下の若いファミリー層が購入しているという(発売後約1カ月のデータ)。そのうち70%が初めて日産車を購入した人だそうだ。新規顧客獲得に大きく貢献しているのがN7で、その流れをフィリピンでも、ということだろう。
ナバラ プロ プラグインハイブリッドとプリメーラEV。この2モデルの日本導入はあるのかどうかが気になるところだが、可能性はゼロではないにしても、ほとんどないと思っておいたほうがよさそうだ。2025年の「ジャパンモビリティショー」で、主に中東向けに輸出している大型SUV「パトロール」を2027年度前半に日本に導入するとアナウンスしているのも、そう考える理由の一つだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
今は3列シート小型ミニバンの開発に注力?
全長5350mm、全幅2030mmのパトロールを道路環境に恵まれているとはいえない日本に入れるくらいなら、似たようなサイズのナバラにも日本導入の可能性はありそうだ。しかし、国内で開発し国内で生産(日産車体九州製)するパトロールを日本に導入するのに比べ、中国で開発し中国で生産するナバラを国内に導入するほうがハードルは高いことは容易に想像できる。アメリカ生産のクルマを国土交通省が新たに設けた認定制度(アメリカで認証を受けていれば国内での追加試験なし)を利用し、正規輸入・販売ができる状況とはワケが違う(日産はこの制度を利用し「ムラーノ」を導入。2026年6月3日に受注を開始した)。
ホンダは東風本田汽車が中国向けに開発・生産している電気自動車の「e:NS2」をベースに右ハンドル化し、「インサイト」の車名を与え同年4月に3000台の限定で発売した。ならばプリメーラEVもと考えたくなるが、ホンダと日産では戦略が異なる。ホンダの場合はBEVの商品ラインナップを手っとり早く充実させて潜在顧客のニーズを満たすべく、手間をかけて中国開発・生産車を日本仕様に仕立て直し導入した。
日産はそれより先にやることがあると考えているもよう。国内のラインナップで「空白」だと日産が自覚しているカテゴリーのひとつが、「トヨタ・シエンタ」や「ホンダ・フリード」のような3列シートの小型ミニバンである(公式見解であることは確認済み)。つまり、「ノート」と「セレナ」の間が抜けていると。ナバラ プロ プラグインハイブリッド/フロンティア プロPHEVやプリメーラEV/N7のようにあまり数が見込めないモデルよりも、数が見込める小型ミニバンの導入に力を入れる考えのほうが正論だと思う。
問題は、日産の場合、国内に導入しそうな気配を見せたり、明確に「出す」と宣言したりしたモデルの導入に時間がかかること。最初から日本導入が決まっていた「キックス」は2024年8月にアメリカで販売が始まっているが、国内での発売は2026年6月。もっと早く出せなかったものだろうかと、勝手ながら思ってしまう。どのモデルを日本に導入するかも重要だが、タイムリーに導入することも、より多くの人によろこんでもらうためには重要だと思う。
(文=世良耕太/写真=日産自動車、本田技研工業/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

世良 耕太
-
「ミッションS」だけではない? 2035年に向けたポルシェの新戦略を探るNEW 2026.10.28 ポルシェは2026年10月7日、新中期戦略「Sportwagenschmiede'35」を発表した。新型パワーユニット搭載の「ミッションS」をはじめとするニューモデルで、経営状態の立て直しを目指す。その注目すべき内容を詳しく解説する。
-
ホンダが次世代ハイブリッドの名称を「Honda Hybrid」に決定 命名の理由とその背景を探る 2026.10.26 本田技研工業が2027年からグローバルで用いる次世代ハイブリッドシステムの名称を発表した。その名は「Honda Hybrid」である。「i-MMD」から「e:HEV」へと変更されて6年。慣れ親しんできた名称が変更される理由と、その背景を探る。
-
「マツダRX-7」の復刻部品を生産!? ミクニの挑戦は旧車オーナーの福音となるか? 2026.10.23 ミクニが「マツダRX-7」向け復刻部品の開発検討を開始した。古い自動車部品の供給は、なぜここまで困難を極めるのか? ミクニの挑戦は世のロータリーオーナーにとって福音となるか? 日本の自動車文化に潜む課題と、その解決に挑む企業と人をリポートする。
-
2028年までに復活! 名車「シトロエン2CV」の現代版はその名に値する一台か? 2026.10.22 パリモーターショー2026の会場で大注目を集めた「シトロエン2CVコンセプト」。あの「2CV」の復活とあって多くのファンが目を輝かせるが、それは名車の名を継ぐに足る一台なのか? オリジナルの2CVに乗る今尾直樹が魅力に迫る。
-
電動化時代も軸足は“スポーツ”に CEOに聞いた「アルピーヌブランドのこれから」 2026.10.21 富士6時間レースに合わせて来日したアルピーヌのフィリップ・クリーフCEOにインタビュー。レースカーから市販車にフィードバックされたポイントや、「A110」を含めた今後の商品展開などを聞いてみた。
-
NEW
第879回:メルセデスがうたう「想像以上」は本当か? フル電動の新型「メルセデス・ベンツCLA」に1000km乗ってわかったこと
2026.10.27エディターから一言フルモデルチェンジした「メルセデス・ベンツCLA」の中でも本命とされるのが「CLA with EQテクノロジー」。新世代EVをアピールするメーカーのうたい文句は本当なのか、北海道で1000km乗って確かめた。 -
NEW
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】
2026.10.27試乗記ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。 -
NEW
「乗り物酔いしやすいクルマ」と「酔いにくいクルマ」の違いは?
2026.10.27あの多田哲哉のクルマQ&A乗り物酔いしやすい同乗者がいると、ドライバーは運転に気を使う。では、クルマの側にはその要因はないのだろうか? 「酔いやすいクルマ」を見極めるポイントを、車両開発者の多田哲哉さんに聞いた。 -
2026-2027 Winter webCGタイヤセレクション
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2026-2027のウインターシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけたスタッドレスタイヤか。各社自慢の最新モデルの実力を検証する。 -
新山千春 ダンロップのWINTER MAXX ICE ProとSYNCHRO WEATHERを試す
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>俳優/タレントとして活躍し、クルマ好きとしても知られる新山千春さんが、ダンロップの最新スタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」とオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」を乗り比べ。キャラクターの異なる2つのタイヤは、それぞれどんな人におススメか? -
試して分かったブリヂストンのSUV向け冬用タイヤ「ブリザック アイスピーク」の実力
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>ブリヂストンからSUV向けとなるスタッドレスタイヤの新製品「ブリザック アイスピーク」が登場。氷上・雪上性能を高め、摩耗ライフも大幅に向上させたというその実力を、モータージャーナリストの斎藤 聡さんと自動車ライターの伊藤 梓さんがチェックした。






































