アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)
スッキリ辛口 2026.08.31 試乗記 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。クルマ好きにはたまらないシャシーセッティング
早朝の都心を「アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト」でスタート。首都高速に上がった瞬間、心も体も覚醒した。首都高名物の路面のつなぎ目を乗り越えた瞬間、ビシッという鋭いハーシュネスが脳天を貫いたからだ。
続いて、中速コーナーが連続するセクションに進入したところでもう一回、目が覚める。ハンドル操作に対して、「一糸乱れぬ」という表現を使いたくなるほど、スパッと鮮やかに向きを変えたからだ。ここ数カ月で試乗した多くのスポーツカーよりも、動きが俊敏だ。背の高さをいささかも感じさせることがない、アジリティーの高さ。
中速コーナーからの脱出で、既に目は覚めていたけれど、今度は目を見開くことになる。アクセルペダルを踏み込むと、控えめな音量ながら「クイーン」という快音とともにエンジンが回転を上げ、胸のすくような加速を味わわせてくれる。
ありゃりゃ、今日の試乗車は「SQ3」だっけ? と思って、前が詰まって停車したタイミングで助手席に置かれたスペックシートにちらりと視線を送ったけれど、車名に「S」の文字はない。「S」の文字があったのはパッケージオプション。試乗車は「Sライン」仕様だった。
非Sライン仕様車にはまだ乗っていないので比較はできないけれど、スポーティーな足まわりが与えられ、255/45R19というサイズのタイヤを履くSライン仕様車は、本格的なスポーティーモデルというか、なかなかの武闘派だ。ちなみに標準仕様のタイヤサイズは235/55R18だから、Sラインのタイヤはかなり太くて薄い。
三度のメシよりクルマが好き、という人には文句のないセッティングであるけれど、休日は高原のビストロで優雅に食事を楽しみたいという家族や友人からは文句が出るかも、という仕上がりになっている。
というわけで、試乗した個体が標準仕様とはかなり異なるスペックを与えられたSライン仕様だったことを前提としてお読みいただければ幸いです。
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土地不足が深刻なインパネまわりの解決策
簡単に新型アウディQ3というモデルの概要をおさらいしておくと、好評だった2代目Q3から大きな路線変更はなく、そこに最新テクノロジーを盛り込んで、正当に進化している。
2680mmのホイールベースに変更はなく、全長は40mm延伸して4530mm。20mm幅広くなった1860mmの全幅が少し気になるけれど、それでも日本の道路状況、駐車事情でもまずまず扱いやすいサイズ感だ。
ストンと切り立ったシングルフレームグリルと切れ長になったヘッドランプの相乗効果で、フロントマスクは従来型よりかなり精悍な表情になった。リアビューは先代を踏襲しているように見えるけれど、4つの輪を連ねたアウディのエンブレムが、ライトと連動して赤く光るようになっている。さよならフォー“シルバー”リングス!
エクステリア以上に変化の度合いが大きいのがインテリアだ。まずは、ドライバー正面のデジタルメーターと、ダッシュボード中央のMMIタッチディスプレイが一体化。これがドライバー方向に湾曲している。ドライバーズシートに腰掛けるといい意味での囲まれ感があり、運転に専念できる。
パッと見は、このMMIパノラマディスプレイの新しさに目を奪われる。けれども、実際に操作を開始すると、ステアリングコラムの奥を左右に横断する1本のバーが存在感を主張する。「インテグレーテッドスイッチモジュール」と呼ばれるこのバーの右側にはシフトセレクターが、バーの左側にはウインカーとワイパースイッチが備わる。特に左側の操作に慣れるのに少し時間がかかったけれど、それでも30分程度で気にならなくなる。
新機軸のインテグレーテッドスイッチモジュールは、扱いやすいとか便利だとは感じないけれど、取り扱い情報量が増えてインストゥルメントパネルの土地不足が深刻な昨今、スペース効率を高めていることは間違いない。
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丁寧にセッティングされたパワートレイン
日本に導入されるアウディQ3のボディースタイルは、いままで通りSUVとスポーツバックと呼ばれるSUVクーペの2種類。それぞれにFFと4輪駆動の設定があり、FFが1.5リッター直4直噴ガソリンターボ+マイルドハイブリッド、4輪駆動が2リッター直4直噴ガソリンターボで、これらの要素のたすき掛けの組み合わせで、4種類のモデルラインナップということになる。
ちなみに、現時点では日本仕様にディーゼルエンジン搭載車は存在しない。試乗車は冒頭のとおりスポーツバックの4駆で、スターターボタンを押して最高出力204PSの直4エンジンを始動する。
先にエンジンが快音を発したと記したけれど、音だけでなく、低回転域から高回転域へと至る過程でトルク感が明確に盛り上がるあたり、ドラマを感じる。運転免許を取って初めて乗ったクルマがBEVだった、という世代が増えたらどうなるんだろうといつも思うけれど、昭和のクルマ好きにとっては内燃機関らしさを味わえる、好ましいエンジンだ。
7段のDCTも洗練されていて、だれにも気づかれないように、迅速かつ丁寧に仕事を完遂する。シフトアップはシームレスだし、アクセルペダルを踏み込むと、ドライバーの意図を先読みするかのように素早くギアを落として加速に備える。
ステアリングコラムの両脇にはパドルシフトが備わり、これをパンッ、パンッと引っ張るのも楽しいし、あえてシフトパドルを操作しなくてもキックダウンしてくれるあたり、丁寧にセッティングされていることが伝わってくる。パワートレインに関しては、非の打ち所がない。
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Sラインには気をつけろ
前述した通り、首都高速で硬派っぷりを発揮した足まわりは、ワインディングロードに入るとさらに輝きを増す。
ただ曲がるだけでなく、タイヤと路面の関係をくっきり明瞭に伝えるステアリングフィールや、踏力で微妙に制動力をコントロールできるブレーキペダルのタッチなど、クルマ好きの勘所をしっかりと押さえている。背が高いのにあまりロールを感じさせずにオン・ザ・レールでコーナーをクリアするあたりは、アウディ流ゴーカートフィーリングだ。
コーナーを脱出した後や路面の凸凹を乗り越えた先で、ボディーの横傾きや縦揺れがしっかりと収束する。これは、すべての日本仕様車に標準で装備される新型電子制御ダンパーの手柄だろう。伸びる方向と縮む方向を個別にコントロールするうえに、そのコントロールの幅も大きくなったというダンパーが、すっきりとしたフィーリングをもたらしている。ただし、後味こそすっきりしているけれど、辛口なのは冒頭に記したとおり。
新型アウディQ3は、背が高いという長所を最大限に生かすレイアウトを採るパッケージングなので室内空間に余裕があり、SUVより全高が40mm低いスポーツバックであっても、後席に大人がしっかり座れるようになっている。それくらい広いのにもかかわらず、運転に少し不安がある方でもビビらずにすむサイズ感で、だから運転を交代しながら家族や友人と遠くへ出かけるのにうってつけの一台だ。
友人、家族、ご近所さんまで、だれにでも薦められるクルマではあるけれど、ただ一点だけ、「Sラインには気をつけろ」とお伝えしたい。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=アウディ ジャパン)
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テスト車のデータ
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4530×1860×1570mm
ホイールベース:2680mm
車重:1710kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:204PS(150kW)/4500-6000rpm
最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1500-4400rpm
タイヤ:(前)255/45R19 100V XL/(後)255/45R19 100V XL(ブリヂストン・トランザ6)
燃費:12.1km/リッター(WLTCモード)
価格:628万円/テスト車=709万円
オプション装備:ボディーカラー<グレイシアホワイトメタリック>(8万円)/Sラインパッケージ<Sラインエクステリア、10スポークエアロデザインアルミホイール[ブラックポリッシュド 8.5J×19、255/45R19]、スポーツシート[フロント]、インプレッサムクロス/マイクロファイバーシート、ステンレスペダルカバー、アルミニウムドアシルトリム[Sロゴ]、ステンレスローディングエッジプロテクション、ブラックヘッドライニング、インテリアエレメンツ[クロス×アーティフィシャルレザー]、マルチファンクション3スポークレザーステアリングホイール[フラットボトム&トップ、シフトパドル&ヒーター付き]、アルミニウムデコラティブパネル[ダイバージェンスダーク]>(45万円)/レザーシートパッケージ<レザー×アーティフィシャルレザーシート、アンビエントライティングプロ、インテリアエレメンツ[ダイナミカ×アーティフィシャルレザー]>(9万円)/ダークアウディリングス&ブラックスタイリングパッケージ<ブラックエクステリアミラーハウジング、ルーフレール[ブラック]>(19万円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:3954km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:381.6km
使用燃料:33.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.5km/リッター(満タン法)/11.4km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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