日産リーフ プロトタイプ(FF/1AT)【試乗速報】
気配りのEV 2010.06.17 試乗記 日産リーフ プロトタイプ(FF/1AT)電気自動車の本格的普及を目指して開発された、「日産リーフ」のプロトタイプに初試乗! 乗って、触って、感じたことは……。
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さまざまな発見
2009年8月の発表から10カ月。日産の電気自動車(EV)「リーフ」にやっと乗ることができた。テストコース内で15分という、場所も時間も限られた条件で、おまけに試乗車は左ハンドル中国仕様のプロトタイプだったが、事前の情報ではつかめなかった部分をいろいろ確認できたので、速報としてリポートしたい。
発表直後から「EVらしさが薄い」と陰口を叩かれていたデザインは、実はいろいろな工夫が込められていた。たとえばヘッドランプの峰がとがっているのは、ドアミラーに向かう空気の流れを上下に分断するためだとか……。縦長のリアコンビランプがリアウィンドウ面から突き出しているのも、空力対策が理由だった。
ルーフエンドには小さなソーラーパネルがつく。でもここで発生した電力が走りに使われるわけではない。リーフの場合、モーター/エアコンとそれ以外の電装系が別系統で、太陽光発電は12Vを使うライトやオーディオ用なのだ。
室内は、前席まわりについては広く開放的。後席は床下にバッテリーを内蔵する関係で、座面との高さの差が少ないが、頭上やひざ前の空間は身長170cmの僕には不満ない。ペットボトルから作った表皮を持つシートの座り心地は快適だった。見た目を含め、もっとリサイクルっぽさを出したほうが説得力が増すのではないかと思ったほどだ。ラゲッジスペースは、EVの常識を打ち破る深さだった。
あぜんとしたのはフロントフード内だ。開けると姿を見せたのは、エンジン風カバーをつけたインバーターだった。メカニズムを低く抑え、上にサブトランクを用意したほうが、EVのメリットをアピールできたのではないだろうか。
これに限らず、リーフにはガソリン車との違いをなるべく小さくしようという、日本の自動車会社らしい気配りが各所にあふれていた。
すべるように走る
運転席に戻ってスタートボタンを押すと、パソコン風の起動音が鳴ってスタンバイを知らせる。「トヨタ・プリウス」に似た操作感のシフトレバーでDを選び、電気式パーキングブレーキを解除してアクセルを踏むと、リーフはスタートした。
ググッとくる発進、ドーッと伸びる加速はガソリン車とは別世界。「三菱i-MiEV」よりEVらしさは濃いものの、1年前に試乗したティーダベースのプロトタイプよりはおとなしい。市販を意識しておだやかに仕立て直したそうだ。もう一度Dレンジ方向にシフトレバーを動かして選んだECOモードは力感が落ちるものの、街乗りなら不満はなさそうだった。
100km/h+αまで上げても風切り音は少なく、ロードノイズも抑えられていて、すべるようなクルージングが味わえた。車重は1.5t台とのことで、乗り心地はサイズのわりに落ち着いている。しかしハンドリングは予想とは違った。フロントにエンジンが存在するかのようなノーズの重さを感じたのである。エンジニアによれば、ガソリン車からの乗り換えで違和感を抱かせないためだという。
バッテリーや充電施設をグローバルデータセンターで一括管理し、電話回線を活用して走行可能範囲や最新充電情報を教え、携帯電話を使って充電予約やエアコン起動を可能とするなど、ソフトウェアの部分では最新IT技術を積極的に投入している。それだけにハードウェアが保守的すぎるのではないかと最初は思った。でも現在のEVの状況を考えるにつれ理解できるようになった。
日本でEVを手がける集団は、「メーカー系」「ベンチャー系」「町工場系」の3種類に大別できる。ベンチャー系は先進性や独創性、町工場系はものづくりの伝統を持ち味にするはずだ。となればメーカー系の魅力は、長年自動車造りを続けてきた会社ならではの信頼感や安心感ではないだろうか。
日産がそこまで考えてリーフをこうした作風に仕立てたのなら、この会社は自分たちの立ち位置をよく理解していると結論づけることができる。
(文=森口将之/写真=webCG)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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