ジャガーXF スーパーチャージド(FR/6AT)【試乗記】
身軽なジャガー 2010.04.08 試乗記 ジャガーXF スーパーチャージド(FR/6AT)……1050.0万円
ジャガーのスポーティセダン「XF」に、470psのスーパーチャージドエンジンを搭載した限定モデルが登場。強心臓がもたらす走りと、その乗り心地をリポートする。
15台の斥候隊
「ジャガーXF スーパーチャージド」は、新型「XJ」に搭載される、470psの5リッタースーパーチャージドエンジンを先取りして積んだ15台の限定車である。価格は1050万円。
その「ジャガーXF」は、ジャガー車の中でも先進技術のパイロットモデルとしての役目を担っている。あまりにも偉大な「XJ」シリーズは、3ボックスノッチバックセダンの典型として、ジャガーのイメージを強く固定してしまった。強烈すぎた「XJ」から次の世代に向け、新しくイメージを発展進化させるために誕生したのが「XF」だ。4ドアクーペのようなセダンは、登場当時はまだ珍しく、斬新ではあったが多少の違和感も伴った。しかし今ではエコ時代とあって、空力を意識したスタイリングはボックス型のクルマからセダンにもおよび、軒並みなだらかなルーフや傾斜の強いウィンドウを持つようになった。つまり、「XF」はコンセプトとして見事に成功した。
そして新型「XJ」もすでにご承知のとおり、「XF」に似たルーフラインを採る。よって次なる手として、「XJ」に搭載されるエンジンをあらかじめ「XF」に載せて、市場の反応をみようというわけだ。
パワーは「あればあっただけ」
このパワーユニットは、4999ccの排気量から470ps/6000-6500rpmのパワーと、58.6kgm/2000-5500rpmのトルクを発生する。ジャガーのエンジンは、パッと見の外観からして大きい。それは十分な“余裕”をみているからだ。シリンダー間の壁の厚さであるとか、ストロークに対するコンロッドの長さなどを考慮してあり、生産コストを抑えるためにギリギリにコンパクトに設計されたものとは根本からして違う。“切り詰めたエンジン”は高回転を維持してみるとわかるが、音や振動など、回すのがかわいそうになり、ためらわれるほどだ。
もちろん今の4リッター以上の排気量、8気筒以上の大型エンジンで、通常使うせいぜい3000rpm以下の領域で破綻(はたん)をきたすものなどない。アイドル振動をはじめスムーズで静粛にまわるのが普通だ。さらに、電子制御技術が、そんな低回転域から常用域までをうまくつなげてくれる。だから量産型多気筒エンジンでも4気筒や6気筒に対するアドバンテージは十分にある。我慢して使えば、あるいは「こんなもんだよ」とその上を望まなければ、不満を感じることなどありえない。微妙なところの違いを問題にしたり、感覚的に繊細で敏感な部分、その微々たる違いに出費することこそ、真の高級感の追求に他ならない。
具体的には強度と剛性の違いで説明できる。強度は耐久強度に代表されるように壊れなければいい、というレベルのこと。いっぽう剛性は感覚的なもので、ヤワと感じられればNG。ジャガーのエンジンは、その剛性の高さが感じられるもので、回しても安心感がある。パワーやトルクは今までのもので十分、そんなに要らないという考え方もある。これは不足分を補うのではなく、細かなところを改良し続ける技術者の日頃の成果を発表するものであり、数値の向上は結果にすぎない。
それに、パワーやトルクは、あって邪魔になるものではない。使わなければ早くシフトアップができるようになるわけで、少なくとも実用上の燃費はアップする。もちろん必要な時には暴力的であっても一向に構わない。パワーというものは、いくらあっても歓迎できる。その根拠は、パワーは安定性に寄与するからだ。たとえば雨天など路面のミューが低い場合、いつものギアより一段低くするとシッカリ路面をつかんでくれるような経験は誰もがもっているはずだ。
このパワーを有効に生かすのが6段ATである。ダイヤル型のシフトはこの部分の凸凹を無くしスッキリさせている。ただし慣れればすむことかもしれないが、Uターンする際の切り返しなど、素早い操作はしにくい。またマニュアルシフトはパドルに頼るしかないが、固定式ではなくハンドルと一緒に動いてしまうタイプなのでワインディングロードではあまり使いやすいとはいえない。
高性能を満喫できる
今回の試乗では東京奥多摩のワインディングを走ってみた。まともに回せば途方もない速度に達するから、そのはるか手前で気分だけでもと、シフトアップ/ダウンを繰り返しては前後Gの変化を楽しんでみる。大型の高性能車の場合、コーナー途中でシフトするよりも、直線部で加速や減速を終結させてしまい、コーナーはタイヤのグリップに任せるような、鷹揚で安楽なドライブが向いているのかも知れない。
しかし、「ジャガーXF スーパーチャージド」の場合には、あたかも小型スポーツクーペのような身軽な感覚も持ち合わせている。だからハンドル操作と加減速をラップさせたくなるような場面もあるのだが、やはり“動く標的”を指先で探すのはストレスを生む。
ただ単に速く走るだけなら、シフトなどしなくとも、2速なり3速に入れっぱなしで、エンジンは高回転までストレスなく引っ張れるし、そのままエンジンブレーキにもつなげられる。高回転域を保ったまま上げ下げを繰り返しても、このスーパーチャージドエンジンは実に安定している。個人的には、こうした大排気量エンジンこそクラッチ付きのMTで乗ればもっとオモシロイのに、とは思うが。
かつて、ボルトオンのスーパーチャージャーを備え、価格はベースとなったメルセデス・ベンツの2倍もする「クリーマン」という高性能車があった。しかし、その“高性能”も、直線ではトラクションコントロールで去勢され、コーナーではタイヤがフェンダーに当たってしまうなど、まったく実力を出し切ることなく走らざるを得ないようなクルマだった。その点、この「ジャガーXF」はまったくまともであり、ドライバ−は高性能を常に掌中におさめることができる。
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏)

笹目 二朗
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