第405回:「ホンダCR-Z」受注1万台記念インプレ&分析
コイツはなるほど“スペシャルティリバイバル”だっ!!
2010.03.31
小沢コージの勢いまかせ!
第405回:「ホンダCR-Z」受注1万台記念インプレ&分析 コイツはなるほど“スペシャルティリバイバル”だっ!!
若者に売れてるの!?
いやはやパーペキに予想ハズしましたよ、「ホンダCR-Z」。発売1カ月で国内受注1万台突破ーっ!! パチパチパチ〜。しかもそのうち20代独身層が15%で30代独身層が35%と、いま問題視される「若者のクルマ離れ」層が約半分とくる。そのうえ、MT車比率が40%!
びっくらこきましたぜ。いつから日本はそんなにスポーツカー天国になっちゃったの? それともハイブリッド+スポーツというコンセプトがそんなに斬新だった?
まずは広報に聞いてみたところ、面白い事を教えてくれた。
「デザインがウケてるし、走りがウケてるのはもちろんありますが、面白いのが下取りで、古い『インテグラ』や『プレリュード』からの買い換えが多いんですよ。たとえば初期型タイプRとか」
「ということはエコカー補助金対象車?」
「今はクルマの長期保有が増えてるといいますが、それは本当で13年以上前のクーペやスポーツハッチからの買い換えが多いんです」
「見事、時代を反映してますね」
「他社さんでいうと、『シルビア』とか『セリカ』とか『MR2』とか」
「なんだ、もろ1980〜90年代のスペシャリティユーザーじゃないですか。結局、昔のクーペ好きがCR-Zに集約されてるんですね」
「あとは“いいMT車がない”という方も多くて、それがMT率4割という結果につながったようです」
うーむなるほど。でも、これだけだと正直20〜30代の独身層へのウケ具合がよくわからない。ホントはもっと年配ウケなんじゃないの?
次に知り合いのホンダディーラーマンを直撃した。なんで若い人に売れてんの?
「いや、やはり違います。ウチは45歳以上が6割以上です。60代の子離れ層も多いし、若い人も少なくはないけど半分はちょっと……」
うぅむ。ま、データの整合性はさておき、ここでちょっとチェンジ・オブ・マインド、先日行われたCR-Z徳島試乗会を振り返ってみることにしよう。
見ても乗っても悪くない
まずはスタイルだ。ぶっちゃけ、不肖小沢がCR-Zで最初にピンとこなかったのがここ。ショーなどで見た限り、たしかに1980年代の名FFスポーツ「CR-X」のイメージを引き継いでるけど、初代が持っていた潔さみたいなのはないんだよね。サイズも全長4080×全幅1740×全高1395mmと現代のクルマとしては小さめだけど、「特に低くした」というボンネットも歩行者保護性能もあってそれなりに膨らんでいるし、やっぱりグラマラスな感じなのよ。しかも俺の場合、一度初代CR-Xと並べて見てたから、特にそう感じた。好みの問題もあるけどね。
でもね。徳島で実物を見ると、普通にカッコいいのよ。それはボンネットもそうだけど、特にリアのCR-Xっぽさ。独特の台形フォルムが力強くて、FFっぽい。“細マッチョ”もいいけど“太マッチョ”もいいなぁと、あらためて思った次第です(笑)。
それから驚いたのは走り。スペックを見る限り、1.5リッター直4+IMA、つまりモーターを組み合わせたシステム出力&トルクは、CVTモデルでわずか123ps&17kgm。それに対し車重は1160kg(同じくCVTモデル)と、開発チーフの友部さんいわく「法規を満たしつつ、限界までがんばりました」とのことだけど、申し訳ない、昔の軽さ、細さにはかなわない……。
ってなわけで、多少ナメて考えてたのだが、乗ったらこれが意外によいのだ。まずは加速力で、やはりモーターが効いてるようで、下からグワっとくる。さらにスポーツモードの場合、ノーマルモードで普通に走っていると2000rpm前後をキープするのに対し、イッキに3000rpm前後までハネ上がって気持ちよい。「ホンダ得意の超高回転側の伸び」はないが、これはこれで楽しい。
3つの油田を掘り当てた!
それからステアリングフィールよね。コイツもしょせん「インサイト」に毛が生えたくらい? と思っていたところ、全く違って剛性感と手応えがあり、各部に高ハイテン材を使って剛性を上げてたり、重心を「シビックタイプR」比で15mmも低くしてたり、サスのロワアームをアルミ化し、軽量化することなどで独特のキビキビ感を獲得。友部さんによれば「MINIは相当意識しました」とのことで、2000年代にある意味“FFハンドリング革命”を起こしたといえる、「BMW MINI」の洗礼を受けてるわけよ。
しかもそれは走りだけにとどまらず、インテリアもそう。ドアの内ハンドルやインパネのメタリックパーツの一部に高価な蒸着塗装を使ってたりして、非常にクオリティが高い。これまた初代BMW MINIのインパネがそうだったように、常識破りのクオリティ感、ハイテクでもって、ある種の“絶対パワー不足”を補ってるのだ。
つまり、ン10年ぶりのスペシャルティカー需要の掘り返しと同時に、久々のMT車需要の掘り返しでもあり、さらにMINIショックの再来!! ある種眠ってた“クルマ油田”を3つも掘り起こしたわけで、そりゃ月1万台も、いくわな。
だがどうしても「20〜30代の独身層が50%」というデータに合点がいかない。で、再び広報部に確かめてびっくり、「あ、それ30代の独身層じゃなくって、30代“以上”の独身層ですよ(笑)」
ガチョーン。やっぱ、独身ヤングの掘り起こしじゃなく、オヤジスペシャルティファンの掘り起こしだったのね〜。でもま、これで多少なりともスポーティテイストのクルマが街に出回ったんだからよしとしないと。
これからもがんばってくださいよ、ホンダさん!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。