レクサスLFA プロトタイプ(FR/6AT)【海外試乗記】
感動モノ 2009.10.21 試乗記 レクサスLFA プロトタイプ(FR/6AT)2005年にコンセプトカーとして発表された和製スーパースポーツが、いよいよ市販化。560psのV10エンジンを搭載する「レクサスLFA」は、どんな走りを見せるのか? そのプロトタイプにドイツで試乗した。
際立つ品のよさ
「正統派スーパースポーツ」。プロトタイプながら、ほぼこの姿で市販化されるという「レクサスLFA」を眺めてまず、そう感じた。伸びやかなノーズ、キュッと締まったリアエンド。ドライバーの着座点はその中央だ。FRとして均整のとれたフォルムであり、前後重量バランスの良さそうな印象を与える。
眼光は鋭く、テールエンドにラジエターグリルを配するなど、独特のディテール処理をみせるものの、虚飾は感じない。オドロオドロしさこそが個性といわんばかりのライバル勢に比べ、実に上質な気品が感じられる。ここでいうライバルとは、「フェラーリ599」や「シボレー・コルベットZR1」のことだ。
その雰囲気はインテリアにも漂っていた。ドライバーを包み込むのは、肌触りのいい本革。カーボンがそこに攻撃的な“アクセント”を加える。いたずらに戦闘的な気持ちにさせるものではないのだ。まるで自分専用にあつらえたモノのように、座った瞬間からシートがピタッと体に馴染む。
速いだけのクルマじゃない
走り出せば、LFAは強烈な個性を発散する。フロントに搭載するバンク角72度のV10ユニットは560psという驚愕のパワーを絞り出す。速いは速い。とてつもなく速い。0-100km/h加速を3.7秒でこなし、最高速度は325km/hに達するという。
そのパワー特性は高回転型であり、8700rpmで頂点に。9000rpmでリミッターに頭を叩かれるまで、鋭く、軽快に吹け上がる。空吹かしをしようものなら、アイドリング域からレッドゾーンまでは一瞬のこと。弾ける回転計の針を目で追うには、かなりの動体視力が必要だろう。
ハンドリングも俊敏だ。正しく弱アンダーステアに調教されている。ノーズの反応はクイック。だが、テールがいたずらにしゃしゃり出ることもない。気分は、ライトウエイトスポーツカーのそれだ。
カーボンボディの圧倒的な剛性を下敷きに、しなやかな足が組み合わされる。トランスアクスル方式でミドマウントされる2ペダル式6段MTの採用や、ラジエターのリアマウント、さらにバッテリーや燃料タンクを車体中央に載せるといった工夫が効いて、前後重量配分は48:52と理想的な値を実現した。エンジンをドライサンプ化するなど、慣性重量の中央集中化も徹底している。車両重量は1480kgと驚くほど軽い。おかげで、「硬い足で強引に旋回する」という粗さとは無縁なのだ。
ちなみに、乗り心地は感動するほどいい。路面からの突き上げ感は全くなく、太いタイヤ(フロント265/35R20、リア305/30R20)を履いているにもかかわらず、ワンダリングもない。レベル的には高級セダンに近いものであり、「世界一乗り心地のいいスーパースポーツ」だと断言できる。
実は、僕は「レクサスLFA」でニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦しており、そのレース仕様も同様に乗り心地が良かったのだ。それが証拠になるだろうか? 「乗り心地を意識するあまり性能を犠牲にした」ことはなく、むしろ逆に「性能を突き詰めたらそうなった」とでも言いたげな仕上がりだ。いいボディといい足をベースとした、“芯から滲み出るような良質のフットワーク”を得ている。
聴かせるスーパースポーツ
そして、これだけは声高に言っておかなければならないだろう。このレクサスLFA、感動するほど「いい声」でいななくのだ!
ヤマハ楽器のエンジニアとともにサウンドチューニングを進めたというV10は、いつでも官能的な音色を響かせる。音量そのものは、たとえば“跳馬”や“ファイティングブル”で聴かれる、進軍ラッパのように勇壮なものではない。耳に優しく響くタイプだ。それでいて、雑味は巧みに排されている。マフラーが奏でる排気音やエンジン本体が発するメカニカルノイズのなかから、魂に残る音色だけを丁寧に抽出した――そんな印象なのだ。
回転計の針の上昇に比例して、音色が変化する。低回転域は優雅さに満ちており、中回転域でそこに迫力が加わり、そのまま感動的に高回転域へと登りつめ、トップエンドでは官能の世界に引き込まれる、というように。
シングルクラッチ式の6段MTは俊敏なレスポンスを披露する。シフトアップはパドルの動きに正確であるし、シフトダウンでは華麗なブリッピングを絡ませる。そのたびにこだまするV10エンジンの官能的な咆哮。まるで、管弦楽団の指揮者になってコンサートホールで演奏したかのような気分だ。
開発責任者である棚橋チーフエンジニアの言葉を借りれば、レクサスLFAのサウンドは「天使の咆哮」。誤解を恐れずにいえば、レクサスLFAの最大の魅力は、この音色にあるとも思えたほどだ。
そんなことを思いながら、ニュルブルクリンクの北コースをさらりと走れば、ラップカウンターは「7分48秒」を表示していた。もうちょっと攻め込めば、あるいは……。
レクサスLFAのインプレッションでタイムを語ることが、不粋であることは承知している。ただ、あえていわせていただければ、その数値は、ニュルの最速争いを演じているあのモンスター達への宣戦布告となるものだ。世界一官能的な音色の楽器は、しっかりと世界トップレベルの速さをも備えているのである。
(文=木下隆之/写真=トヨタ自動車)

木下 隆之
-
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】 2026.10.31 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。
-
日産フェアレディZ NISMO(FR/9AT)【試乗記】 2026.10.28 「日産フェアレディZ」のマイナーチェンジモデルが登場。改良の主眼はZが受け継いできたヘリテージのさらなる深化と性能の強化だという。もはやお値段1000万円(!)に迫らんとする「NISMO」の9段ATモデルを試す。
-
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】 2026.10.27 ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
NEW
いま軽自動車を選ぶなら、エンジン車とEVのどちらが得か? リアルな数値でコスパを比較・検証する
2026.11.2デイリーコラム海外ブランドまで参入するなど、近年活況をみせる軽EV。従来型の軽自動車と比べた場合の、コスト面の良しあしは? ホンダの2車種を例にとり、そのコストパフォーマンスを考えよう。 -
NEW
トヨタ・アクアGRスポーツ(FF/CVT)【試乗記】
2026.11.2試乗記「アクア」のビッグマイナーチェンジに遅れること10カ月。“最新のトヨタ顔”に変身したスポーツコンバージョンモデル「アクアGRスポーツ」が登場した。専用チューニングが施されたボディーや足まわりの仕上がりを、ワインディングロードに連れ出して確かめた。 -
ホンダ・スーパーONE(前編)
2026.11.1ミスター・スバル 辰己英治の目利き辰己英治さんが今回試すのは、ヤンチャないでたちの「ホンダ・スーパーONE」。軽規格の電気自動車(EV)「N-ONE e:」をベースに走りを鍛えた、電気で走るスポーツコンパクトだ。見た目にも楽しさがあふれる一台の魅力に、“ミスター・スバル”が迫る。 -
思わずなでたくなってくる 丸いデザインのクルマ特集
2026.11.1日刊!名車列伝最近のクルマのデザインは、シャープなラインが特徴だったり、造形そのものが複雑だったり……。今月は、つるりと丸い、シンプルなエクステリアが印象的な世界の名車を日替わりで紹介します。 -
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】
2026.10.31試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。 -
「BYDラッコ」がアジアにはばたく!? ニッポンの軽自動車規格が海外勢に奪われる日
2026.10.30デイリーコラム中国のBYDが、軽BEVの「ラッコ」を日本以外でも販売すると発表! 日本独自のスモールカー規格は、はたして海外でも受け入れられるのか? 本家・日本のメーカーが、海外展開に及び腰だった理由とは? BYDが食指を動かす、軽自動車の秘めた可能性を探る。



