第101回:肉ダンゴを食べて「フィアット500」を当てよう!
2009.07.25 マッキナ あらモーダ!第101回:肉ダンゴを食べて「フィアット500」を当てよう!
「当たる」「プレゼント」の文字に弱い
ボクが幼かった1970年代前半、ある洗濯洗剤のキャンペーンで「金・銀・パールプレゼント」というのがあった。そのまんま歌詞にしたCMソングがあったので、ご記憶の方も多いだろう。
実際には、抽選の応募券が入っていただけらしいのだが、ボクは原物の宝石が入っているものと信じていた。その強い思い込みは、根負けした親が、ある日箱を解体して中を全部開けて見せるまで続いた。
そこまで景品への執着がありながら、クジ運は極めて悪い。大当たりは小学生のとき、自動車ディーラーの展示会の抽選で、「THE SPRIT OF SUBARU」という文字とともに、飛行機とクルマが描かれたボストンバッグが当たったのが最初で最後である。
にもかかわらず、イタリアに住んでいても、「○×が当たる」というキャッチコピーを見るたび、つい惹かれてしまうボクは、相当懲りない性格である。
「フィアット500」欲しさに……
プレゼントや抽選会などにおいて今もクルマは、地中海クルーズと並んでヨーロッパ各国における人気景品のひとつだ。「MINI」はよく対象となる車種のひとつで、とくに最近は新型の「MINIクーパーカブリオレ」が当たる商品を散見するようになった。
また、日本では想像しづらいかもしれないが、「フォード・フィエスタ」の当たるポテトチップ、なんていうのもある。
しかしそうした景品キャンペーンにおけるダントツの人気特賞車といえば、ずばり「フィアット500」だ。それを「売り」にしている商品は、家庭用品から食品、化粧品までさまざまな分野に及ぶ。
今回の記事執筆のため、現在実施中のものをスーパーマーケットで探したら、それだけで「瓶詰め」と「ミートボール」を即座に見つけることができた。さっそく購入して家に帰った。
商品について解説すると、瓶詰めは、ごはんと混ぜるだけでライスサラダになる、という、昔日本で桃屋が一時期売り出していた炒飯の素「ちゃんとチャーハン」みたいなものだ。いっぽうの「ミートボール」は、つまり肉ダンゴ。揚げるだけの状態の冷蔵食品である。
抽選の方法はというと、「瓶詰め」は電話をかけて商品に振られた抽選番号を自動音声にしたがって入力するもの。
イタリアでは以前、こうしたクジの当確照会電話番号が、日本でいうダイヤルQ2のような高額課金システムになっていて、ボクも何度か思わぬ出費を強いられたことがある。その後そうした抽選方式はイタリアの民放バラエティ番組で問題となり、現在は最盛期より少なくなっている。
今回の「瓶詰め」の電話も普通の番号だった。ただし結果はハズレ。2等のクルーズ船も当たらなかった。
気を取り直して、「ミートボール」に挑戦する。こちらは会社のインターネットサイトでも抽選できるようになっている。電話番号と抽選番号を入力する。
こっちも残念ながらハズレであった。
ちょっと考えてみると、どちらの抽選も先方はボクの電話番号、つまり居住地域を獲得できたわけだ。商品に割り振ったデータと照会すれば、「どこで何が売れた」というデータベースができあがるのだろう。
少々悔しいので、「そんなヘンな料理は作りたくない」という、料理研究家の女房を説き伏せて出来上がったのが、写真の「500づくし」2品である。
コテコテのイタリアが生きていた!
500をタダでもらう作戦は、かくも惨憺たる結果に終わったが、涙モノだったのは、先日スイスで見つけたコカ・コーラのキャンペーンだ。プレゼント商品は、赤の「アルファ・スパイダー」である。なぜ涙モノか? といえば、イタリアで現行アルファ・スパイダーは歴代ほどの人気がないからである。
ボク個人としては、よくまとまったスタイリングと思うのだが、ボディサイズが大きくなると同時に重くなってしまったことが、小柄でキビキビしたクルマを好む最近のイタリア人に不評なのだ。
加えて、ここのところの景気低迷もマイナスに働いている。あまりに少ないのだろう、手元にある2009年3月のイタリア国内登録台数の統計表に、アルファ・スパイダーは出てこなくなってしまった。
参考までにスパイダーのカテゴリーで末尾にある「アウディA3カブリオ」の月間登録台数は103台だ。
またたとえイタリアで乗っているユーザーがいても、これまたイタリアの近年における流行ボディカラーであるブラックで無難にまとめていることが多い。
そうした中、アルプスを越えた隣の国では赤いアルファ・スパイダーが景品としての地位を保っている。ついでにいうと、2等は「ベスパ・スクーター」である。
コテコテのイタリア風情が、いまだステイタスを維持していることにホッと胸を撫で下ろしたボクであった。だが、気がゆるんだついでに、抽選方法が記されていたコーラの空きボトルをサービスエリアのゴミ箱に捨ててきてしまった(泣)。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第938回:さよなら「フォード・フォーカス」 27年の光と影 2025.11.27 「フォード・フォーカス」がついに生産終了! ベーシックカーのお手本ともいえる存在で、欧米のみならず世界中で親しまれたグローバルカーは、なぜ歴史の幕を下ろすこととなったのか。欧州在住の大矢アキオが、自動車を取り巻く潮流の変化を語る。
-
第937回:フィレンツェでいきなり中国ショー? 堂々6ブランドの販売店出現 2025.11.20 イタリア・フィレンツェに中国系自動車ブランドの巨大総合ショールームが出現! かの地で勢いを増す中国車の実情と、今日の地位を築くのに至った経緯、そして日本メーカーの生き残りのヒントを、現地在住のコラムニスト、大矢アキオが語る。
-
第936回:イタリアらしさの復興なるか アルファ・ロメオとマセラティの挑戦 2025.11.13 アルファ・ロメオとマセラティが、オーダーメイドサービスやヘリテージ事業などで協業すると発表! 説明会で語られた新プロジェクトの狙いとは? 歴史ある2ブランドが意図する“イタリアらしさの復興”を、イタリア在住の大矢アキオが解説する。
-
第935回:晴れ舞台の片隅で……古典車ショー「アウトモト・デポカ」で見た絶版車愛 2025.11.6 イタリア屈指のヒストリックカーショー「アウトモト・デポカ」を、現地在住のコラムニスト、大矢アキオが取材! イタリアの自動車史、モータースポーツ史を飾る出展車両の数々と、カークラブの運営を支えるメンバーの熱い情熱に触れた。
-
第934回:憲兵パトカー・コレクターの熱き思い 2025.10.30 他の警察組織とともにイタリアの治安を守るカラビニエリ(憲兵)。彼らの活動を支えているのがパトロールカーだ。イタリア在住の大矢アキオが、式典を彩る歴代のパトカーを通し、かの地における警察車両の歴史と、それを保管するコレクターの思いに触れた。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。
