スバル・インプレッサ WRX STI A-Line(4WD/5AT)【試乗記】
見た目は同じだけど…… 2009.03.30 試乗記 スバル・インプレッサ WRX STI A-Line……340万2000円
「インプレッサWRX STI」にATモデルが追加された。2.5リッターエンジンを組み合わせた新グレード「A-Line」に試乗。その走りとは。
排気量アップ、価格はダウン
スバルは、WRC撤退を決めたことで、いい意味で気持ちの切り替えができたのかもしれない。2009年2月「スバル・インプレッサWRX STI」のマイナーチェンジとともに追加された「A-Line」は、現行WRX系初の2ペダルであるうえに、水平対向4気筒の排気量をWRCのレギュレーションに準じた2リッターから2.5リッターに拡大していたからだ。
スポーツカーであっても2ペダルを用意するのは、世界的な趨勢である。ライバルの「三菱ランサーエボリューションX」もデュアルクラッチMTを導入している。だからAT追加は当然といえるけれど、そこに2リッターではなく、あえて扱いやすい性格の2.5リッターを組み合わせた点に好感がもてる。
実はこのエンジン、欧米向けのSTIに積まれているものだ。300ps/35.7kgmというスペックは、2リッターSTIの308ps/43.0kgmには及ばないけれど、昨年発売された「レガシィアウトバック2.5XT」の265ps/35.7kgmは上回る専用チューンである。
それ以外では、4WDシステムがDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)式から電子制御のVTD-AWDになるとともに、リアLSDはトルセンからビスカスに、フロントシートはアルカンタラ/本革からファブリック/合成皮革のコンビにチェンジしている。ブレンボ製ブレーキキャリパーやフロント・ヘリカルLSDが省かれるという違いもある。だけど、エクステリアは18インチのホイール/タイヤを含めて共通だ。
気になる価格は315万円で、大排気量エンジンとATを搭載しながら、2リッター(368万5500円)より50万円以上安い。これはお買い得だ! と多くの人が思っただろう。僕も同じ気持ちを抱きつつ、クルマをスタートさせた。
スポーツマインドはいまひとつ
スバルのターボはピーキーな性格の持ち主が多いが、この2.5リッターはアウトバック2.5XT同様、2500rpmあたりでおだやかに過給を立ち上げ、スルスルと速度を上乗せしていく。おかげで「SI-DRIVE」のモードが「I」のままでも速さに不満はない。そのぶん「S」や「S♯」を選んでも2リッターSTIみたいな切れ味は体感できないけれど、2.5リッター4気筒としては高回転までなめらかに吹け上がり、自然吸気エンジンのように回すにつれ力が沸いてくる。
ただし排気音の演出がないので、スポーツマインドはいまひとつ。またATはマニュアルモードを選んでも変速スピードは遅めで、6700rpmから始まるレッドゾーンの手前で自動的にシフトアップし、逆にシフトダウンはかなり回転が落ちないと受けつけないなど、STI用としては穏健派にすぎるんじゃないかという気がした。
現行インプレッサは新開発のダブルウィッシュボーン式リアサスペンションのポテンシャルの高さが印象的だった。おかげで1.5リッターのベーシックグレードだけでなく、STIでもハンドリングと乗り心地を高次元で両立していた。ところがA-Lineには少々違う印象を抱いた。
50万円の価値
2リッターSTIと共通の245/40R18タイヤに対し、バネやダンパー、ブッシュが役不足な印象で、足元のドタバタした動きが気になる。高速道路では揺れが収まり、フラットになるのだが、他のインプレッサが持つしっとりしたフィーリングには到達していない。違うメーカーのクルマに乗っているようだ。
もっともハンドリングそのものは悪くない。ステアリングは速度を上げると中心付近の反応が鈍く感じるものの、日常的なスピードではむしろSTI登場直後よりクイックになったような気がする。
その後の車体の動きはいままでどおり、スポーツモデルとしてはゆったりしているが、4WDのグリップ力と接地感にすぐれたサスペンションのおかげでロードホールディングのレベルは高い。ブレンボ製ではないブレーキの制動力にも不満はなかった。
でも僕がインプレッサWRX STIを買うなら、2リッターMTモデルにするだろう。MTのほうが楽しいから、という理由ではもちろんない。あらゆる性能を高度にバランスさせた2リッター版は、50万円以上のエクストラを支払う価値があるからだ。A-Lineは見た目こそ同じだけど、走りには明確な差が存在していた。
(文=森口将之/写真=峰昌宏)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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