ホンダ・オデッセイM(FF/CVT)【ブリーフテスト】
ホンダ・オデッセイM(FF/CVT) 2008.12.26 試乗記 ……307万3000円総合評価……★★★★
フルモデルチェンジで、さらなる正常進化を果たしたという「ホンダ・オデッセイ」。その走りは? 居住性は? 最も売れ筋のベーシックグレード「M」で試した。
まったく、ホンダらしい
低く身構える姿勢はミニバンらしくないが、室内空間の広さなど、中身はまさにミニバンそのもの。そんな「オデッセイ」独自のキャラクターづくりは大成功を納めてきたが、今度の新型は顔つきがインスパイアにも近く、こうなるとインスパイアのステーションワゴン版のように見えてしまう。ワルっぽい顔は意図的なものだろうが、幾分やりすぎの感もある。しかし外観に目をつぶって中に乗り込んでしまえば、なかなか快適なクルマである。
今回の変更はスタイリングよりも、中身の改良に主眼が置かれており、走行性はスムーズでパワフル。大柄なボディを持て余すことなくスイスイと都会の雑踏を泳いで行ける。細部の気になる点を徹底的にチェックし完成度を高めたうえで、時代のニーズに応えた低燃費性は見事。
一方で、背の高さをウリにするミニバンも依然としてあり、高い目線こそ優越感にひたれると思う人もいる。重心高は高くともロールセンターを高く採るなど、操縦安定性を確保する技術も今ではいろいろ考えられる。しかし、ホンダとしてはとにかくクルマは低い方がいいというスポーツ心を満足させるのが社是でもあるし、それを支持するホンダ・ファンもいる。クルマはそれぞれに個性的であってこそ面白い、オデッセイはホンダらしいミニバンとしての存在を確立している。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
オデッセイは、1994年10月にデビューしたホンダの7人乗りミニバン。スライドドアを持たない乗用車ライクなスタイルが特徴で、低床・低重心・低全高がもたらす(ミニバンにしては)シャープなスタイリングや走りをセリングポイントとする。
2008年10月のフルモデルチェンジで、4代目にバトンタッチ。デザインや寸法上は大きな変化がないものの、ドライバーの視界や3列目の居住性に配慮するなどし、さらなる正常進化=熟成が図られた。
エンジンは173psを発生するNAの2.4リッター4気筒(「M」「L」「Li」に搭載)をベースに、さらにハイチューンを施した206psユニットの2本立て。後者は、エアロパーツでエクステリアを飾ったスポーティグレード「アブソルート」に搭載される。全てのグレードに、FFと4WDがラインナップする。
(グレード概要)
試乗車は、ベーシックグレードの「M」。もっとも廉価であるものの、ディスチャージヘッドライト(HID)、電波式キーレスエントリーシステム、イモビライザー、ビークルスタビリティアシスト(VSA)などは標準装備。
FFモデルには、エンジン、CVT、エアコンを協調制御して燃料消費を抑える「ECONスイッチ」も備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
大きく寝かされたウィンドウを持つ最近のクルマにとって、ダッシュボードのデザインは腕の見せどころ。単に広大な面積を持て余す例もあるが、二段階構造をとるオデッセイの手法は、適度な広さで開放的に見せる成功例。凹凸が激しい意匠は、箱庭的で楽しい。メーターを遠くに追いやるなどの立体的な処理は老眼者対策にも通じ、若者だけでなく高齢者にも受け入れやすい。
(前席)……★★★★
エンジンフードはまったく見えないが、絶対的に低いものだし、鼻先にカメラも設置されているから前方視界は良好。三角窓周辺の処理も秀逸だ。
シートはサイズ、形状ともにたっぷりしており、サイドの盛り上がりも十分。背面横方向のサポートも上々。座面の後傾斜角はやや少なめで、もっとランバー部の張り出しは欲しい。センター部分の物入れが90度の可倒式で前後のウォークスルーを可能にするのは、アイデア賞モノ。
(2列目シート)……★★★★
ホイールベースの中間。3列シートの真ん中はミニバンにおける一等席である。前後スライドの量も大きいし、ノイズの発生源であるエンジンやタイヤからも遠いし、天井は高い。視界も悪くない。フロアは低めで段差も少ないから乗り込みも容易だ。ここが玉座でドライバーに下知をくだすか、籠にのって前後に従者を従える殿様気分が味わえる。
(3列目シート)……★★★
シートバックがやや寝過ぎているのが気になるが、座面後傾斜角はこんなもの。折り畳めるシートとしてはクッションの厚みもある方で、座り心地はまずまず。リアウィンドウがすぐ頭の後ろに迫るけれども、ルーフは高く横方向の空間もタップリしていて狭いという感覚はない。乗降に際しては2列目シートを移動させなければならず、閉じ込められた感覚はあるものの“閉塞感”は少ない。
(荷室)……★★★
写真でご覧のとおり、長いクルマの内容積のわりには荷室は狭い。しかし、そのフロアはバックドアの敷居よりさらに低く、窪みに落としこむ感覚でかなりの量が詰める。リアウィンドウ下まで積み上げれば、小型セダンのトランク容量と変わらないレベルだろう。使うかどうかもわからない荷室を大きく確保するなど、不確定要素に投資するくらいなら、室内の空間を有効に利用するほうがいいという考えには賛成。荷物なんか、いざとなれば座席の上にだって置けるのだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
4気筒2.4リッターエンジンはスムーズでパワフル。あえてV6を選ばなくとも十分期待に応える。加速時にはそれなりに雄叫びをあげるものの一定速の巡航状態に移れば静か。今回は神奈川県三浦半島の往復と、高速道路の走行比率は少なめだったが、燃費は2桁(10.0km/リッター)に達した。インパネシフトのレバー位置も適切で操作しやすく、この部分の無用の張出しが少ないので横方向へのウォークスルーも楽。路肩に停めたトライバーは、左側から直接歩道に下りられる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
大型重量級車に期待するゆったりしたおおらかな乗り味が魅力。姿勢はおおむねフラットでダンピングも良好。路面のゼブラペイントなど微小の連続凹凸ではややブルブル振動するものの、目地段差などのハーシュネスもよく抑えられている。見た目が低い割に爪先立ったロールをする、ホンダ車にありがちだった感覚ももはや影をひそめた。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2008年12月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:3887km
タイヤ:(前)215/60R16(後)同じ(いずれも、ダンロップ SP SPORT230)
オプション装備:マルチビューカメラシステム(8万4000円)/Honda HDDインターナビシステム+プログレッシブコマンダー+6スピーカー+ETC(33万6000円)/Hondaスマートキーシステム(6万3000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:221.7km
使用燃料:22.23リッター
参考燃費:9.97km/リッター

笹目 二朗
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