フォルクスワーゲン・パサートTSIコンフォートライン(FF/6AT)【試乗記】
2リッターに引けを取らない 2008.03.19 試乗記 フォルクスワーゲン・パサートTSIコンフォートライン(FF/6AT)……358万4000円
VWパサートに新設定された1.8リッターシングルチャージャーTSI。従来の2リッターモデルに代わるという新グレードに試乗した。
シングルチャージャーのTSI
昨2007年来、低燃費とハイパワーを両立するTSIエンジンで話題を呼んでいるフォルクスワーゲン。「ゴルフ」からスタートし、その後、「ゴルフトゥーラン」「ゴルフヴァリアント」「ジェッタ」と、ゴルフファミリー各モデルにTSIを搭載して人気を集めているのはご存じのはず。その彼らが、今度は「パサート」のベーシックモデルである「パサート2.0/パサートヴァリント2.0」の後継として「パサートTSIコンフォートライン/パサートヴァリアントTSIコンフォートライン」を投入し、シリーズの販売拡大を狙っている。
パサートのTSIコンフォートラインに搭載されるのは、1.8リッター直噴ターボエンジン。これまでゴルフファミリーが、1.4リッター直噴にターボとスーパーチャージャーのふたつを組み合わせた“ツインチャージャー”を採用したのとはやり方が違うけれど、燃費を稼ぐために排気量を小さくしながら過給器でパワーを手に入れるという基本コンセプトは共通。導入当初はツインチャージャーを意味していたTSIが、途中から“シングルチャージャー”、すなわちスーパーチャージャーを持たない直噴ターボまでその範囲を広げたのは、この1.8リッターターボや今年2008年半ばにも導入が予定される1.4リッターターボの登場を見込んでのことだったのだ。
160ps/25.5kgmの実力は?
パサートの1.8リッター直噴ターボは、先代ゴルフやパサートに搭載された1.8リッターDOHC5バルブターボとは異なる新設計のエンジンだ。フォルクスワーゲンとしてはパサートへの搭載が最初になる。鋭い読者なら、「アウディA3 スポーツバック」に搭載されて、すでに日本に導入されていることに気づいているだろう。新型「アウディA4」のエントリーモデルにも搭載されるだけに、地味ではあるが重要な役割が与えられたエンジンである。
最高出力160ps/5000-6200rpm、最大トルク25.5kgm/1500-4200rpmのスペックは、従来の2リッター直噴NAエンジンに対して10ps、5.1kgmのアドバンテージ。
組み合わされるトランスミッションは、これまでどおりティプトロニック付の6段ATで、10・15モード燃費は10.8km/リッターとパサート2.0を0.2km/リッター下回るが、ヨーロッパのモードであれば数%燃費が向上するから、排気量ダウンの効果はなんとか確認できる。
さっそくセダンを試すことにする。走り出してまず感じたのは、低速でのマナーのよさだ。フォルクスワーゲン自慢の2ペダルMTである「DSG」が日々進化し、スムーズさに磨きがかかったとはいえ、発進の滑らかさではトルクコンバーター付きATには敵わない。加えてこの1.8リッターTSIは、ターボであることを忘れさせる自然なレスポンスを誇るとともに、2000rpm以下から2リッターNAよりも明らかに充実したトルクでクルマを前に押し出してくれるのだ。使い勝手を考えると、最高出力の数字よりも低回転での扱いやすさが大切なのはいうまでもないが、そういう意味で非常に実用性の高いパワートレインであることがわかる。
おすすめのエントリーモデル
スペックから予想されるように、常用する4000rpm以下の回転域では、アクセルペダルをどこから踏んでもそれに応えるべく豊かなトルクを生み出してくれる頼もしさに好感を抱く。多少こもったようなサウンドが気になるものの、エンジンはとてもスムーズ。高回転では5000rpmを超えたあたりからゆるやかに勢いが衰えるが、それでも高速の合流や追い越しでは十分な加速を見せる。2リッターNAに引けを取る部分は見あたらない。
一方、パサートTSIコンフォートラインの走りはその名のとおり快適で、重厚で落ち着いた挙動や、高速でのフラットさなど、パサート2.0が備えていた美点はそのまま受け継がれた。やや硬めの足まわりと215/55ZR16サイズのタイヤが路面の凹凸を伝えることもあったが、全体としては上々な仕上がりといえるだろう。
というわけで、エンジン、走りともに、とてもバランスよくまとまったパサートTSIコンフォートライン。上を見れば、さらにパワフルでスポーティなパサートの2.0TやV6 4MOTIONがあるが、ふだんの気持ちよさや燃費を考えると、このエントリーモデルがベストではないかと私は思う。願わくは、6ATをDSGに載せ換えて、さらなる燃費の向上を目指してほしいが、6ATならではの滑らかさも捨てがたく、それはともかく、誰にでも安心してお勧めできるクルマである。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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