トヨタ・アリオンA20(FF/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アリオンA20(FF/CVT) 2008.03.05 試乗記 ……263万1300円総合評価……★★★★
トヨタのミディアムセダン「アリオン」に2リッターモデルが追加された。新技術バルブマチック機構を採用した新エンジンを試す。
パワーだけじゃない走りの楽しさが欲しい
性能の面では1.8リッターでも不足はないはずなのに、このクラスのセダンが結局は2リッターモデルをラインナップに加えることになるのは、ユーザーからの強い要望に拠るところが大きいという。この手のセダンの主たる購買層である、これまで何台ものクルマを乗り継いできた50代以上のユーザーにとって、1.8リッターは性能云々の前にイメージ的に物足りない。やはり2リッターじゃなければ、という思いがとても強いのだ。
アリオン/プレミオの2リッターモデルは、バルブマチックと呼ばれる吸気側の連続可変バルブリフト機構を採用し、吸排気連続可変バルブタイミング機構のデュアルVVT-iと組み合わせた最新のパワーユニットを搭載する。これは2リッターという額面で満足させるだけでなく、それに相応しい動力性能をもたらし、それでいて燃費や環境性能を犠牲にしないための選択である。
果たしてその走りっぷりは、期待値に十分応えるものだった。動力性能は必要十分というレベルを超え、活発と評せるものに。同時に、心地良さを感じさせるフィーリングも獲得している。
そういう意味で現状でも満足度はそれなりに高い。しかし、ここまで良く走るクルマに仕上がっていると、ステアリングはじめクルマとの対話に繋がる部分の手応えには、もう少し走りの実感を楽しませるような演出があってもいいとも思う。この手のクルマを買う人は、そんなところにこだわりはないというのは、たぶん、間違いだ。最初に書いたような、今この手のセダンを選ぶ人たちは、きっと若い頃、走りの楽しさに浸っていた人だろう。きっと彼らは、単に軽いだけの操作系よりも、それを歓んで受け入れてくれるんじゃないだろうか。
そんな期待は、新エンジンを得たアリオンA20が、思いのほかよく走ったからこそ涌き上がったものであることを強調しておこう。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行モデルは、2007年6月4日に発売された2代目。初代のシャシーを継承しつつ、新しい内外装が与えられた。オーソドクスな「プレミオ」、やや若やいだ「アリオン」といった違いを旧型以上に明確にした外観をもつ。ただし、内装、機関面は共通。
1.5もしくは1.8リッターの4気筒にCVTを組み合わせる。FFを基本に、後者には4WDも用意される。2008年1月8日、バルブマチックを採用した2リッターモデル(FF)が追加された。また、1.5、1.8リッターモデルには、装備を厳選した廉価仕様“スタンダードパッケージ”を追加設定し、ラインナップの充実を図った。
(グレード概要)
アリオンのグレード構成は、A15(FF)、A18(FF/4WD)、A20(FF)。さらにグレードによって“Gパッケージ”“Sパッケージ”“スタンダードパッケージ”装着車が用意される。
テスト車は、オプティトロンメーター、カラーバックモニターなどが標準装備される2リッターのベースモデル。ディスチャージヘッドランプや、SRSエアバッグなどはオプション設定となる。これは、上級グレード“Sパッケージ“では標準装備となり、本革巻ステアリングホイールや16インチタイヤが採用される。また、クルーズコントロール、プラズマクラスターは2リッターモデルのみの装備となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
デザインこそオーソドックスながら、全面にソフトなパッドが張り巡らされる。ウッド“調”ではあってもそれなりに見映えのするトリムが与えられたインストゥルメントパネルは、乗り込んだ瞬間、上質なクルマに乗ったという気分を盛り上げる。ちょっと凝った形状のドアハンドルも結構洒落ている。このくすぐりの上手さには、本当に唸らされる。
速度計と回転計の2眼をメインとしたオプティトロンメーターの間に各種インフォメーションを映し出す計器の視認性や、空調、オーディオなどの操作性にも文句の出る余地はほとんどない。クルーズコントロールやプラズマクラスター空気清浄機能付きエアコンも標準とされるなど、快適装備も十分揃う。
(前席)……★★★★
ミニバンのようにフルフラットになるのがセールスポイントの前席だが、スライドやリクライニング、運転席の上下アジャストなどの基本的な調整範囲も広く、適切なシートポジションを取りやすいのも美点だ。シート自体も、ソファのようにフカフカなのかと勝手に抱いていた先入観は覆される。適度に硬いクッションが身体全体を面で支える、非常に具合の良いものとなっているのだ。
同じくトヨタを代表するセダンであるクラウンなどは、今もシートポジションなどには昔ながらの不自然さが残るが、アリオンには(当然プレミオも)そんなことはない。前席周辺の環境は非常に真っ当で、故に快適である。
(後席)……★★★★★
2700mmのロングホイールベースを活かしてリアタイヤの張り出しを最小限に抑えたリアシートは、5ナンバーセダンとしては十分なスペースを確保している。頭部周辺や足元にも余裕があって、大人2名乗車なら十分寛げる。バックレストのリクライニング機構も備わるが、これについてはあまり必要性は感じなかった。
3点式シートベルトだけでなく、きちんとしたヘッドレストが中央席を含む3名分しっかり用意されている点も評価したい。法規云々、目先のコスト云々ではなく、本当にユーザーのことを考えれば自然にこうなるはずである。
(荷室)……★★★
大きな開口部をもつラゲッジスペースは広さも十分。ホイールハウスの出っ張りで横方向こそやや狭めとは言え、高さも奥行きもたっぷりしている。これだけの空間を使い切るのは容易ではなさそうだが、まだ足りなければリアシートをダブルフォールディングさせることで、更に容量を拡大することもできる。座面を前に起こしてから背もたれを前に倒すため、フラットな空間を生み出すことが可能だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1.8リッターでも動力性能は十分だっただけに、最高出力はそれより22ps増しの158ps、最大トルクは2.2kgm増しの20.0kgmを得たバルブマチック付きの新しいエンジンは、スポーティと表現しても良いほどの走りっぷりを見せる。日常域では、トヨタのCVTならではの巧みな制御によって、エンジン回転を低く抑えながら常に思い通りの加減速が可能。そして、いざ右足に力を込めれば、分厚いトルクを発生させながら気持ち良く吹け上がり、容易に流れをリードすることができる。
ヴォクシー/ノアで最初にバルブマチックが搭載された時には、回転が上がるにつれてパワー感が高まる一方でザラついたノイズが耳に飛び込んできたものだが、アリオンではそうしたネガは感じられなかった。新たに採用された高遮音性のフロントガラスの効果も大きいのだろう。これなら誰にでも積極的に勧められそうである。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
期待通りのしなやかさに仕上がっている乗り心地だが、決してフワフワと落ち着かないものではない。土台となるボディがしっかりしているせいかサスペンションがキレイに動き、柔らかな中にもしっとりとした味わいを感じさせる。16インチタイヤを履くせいか、路面の継ぎ目を越えた時などにはそれなりのショックを伝えてくることもあるが、全体的には結構気持ち良く走れるシャシーに仕上がっていると言っていい。
欲をいえば、最初に書いたようにパワーステアリングはもう少し手応えを出す方向にセットしてもいいのではとは思った。操舵力が軽ければ誰もが快適に感じるというものではないはず。クルマの動きを掌でもっと感じることができれば、クルマとの一体感が高まり、結果として今以上に快適に感じられるのではないだろうか。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2008年1月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:530km
タイヤ:(前)195/65R15 91S(後)同じ(いずれも、YOKOHAMA S70)
オプション装備:ディスチャージヘッドランプ(4万7250円)/前席SRSサイドエアバッグ&全席SRSカーテンシールドエアバッグ(6万3000円)/HDDナビゲーションシステム+音声ガイダンス機能付きカラーバックガイドモニター(31万1850円)/ETCユニット(1万4700円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:130km
使用燃料:9.5リッター
参考燃費:13.7km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.27 「ランボルギーニ・テメラリオ」がいよいよ日本の道を走り始めた。その電動パワートレインはまさに融通無碍(むげ)。普段は極めて紳士的な振る舞いを見せる一方で、ひとたび踏み込めばその先には最高出力920PSという途方もない世界が広がっている。公道での印象をリポートする。
-
アルファ・ロメオ・ジュニア イブリダ プレミアム(FF/6AT)【試乗記】 2026.4.25 世界的に好調な販売を記録している、昨今のアルファ・ロメオ。その人気をけん引しているのが、コンパクトSUV「ジュニア」だ。箱根のワインディングロードでの試乗を通し、その魅力をあらためて確かめた。これが新時代のアルファの生きる道だ。
-
ホンダ・シビックe:HEV RS プロトタイプ(FF)【試乗記】 2026.4.23 一部情報が先行公開され、正式な発表・発売を2026年6月に控えた「ホンダ・シビックe:HEV RS」のプロトタイプにクローズドコースで試乗。2ドアクーペ「プレリュード」と同じ制御技術「ホンダS+シフト」が移植された、新たな2ペダルハイブリッドスポーツの走りやいかに。
-
日産アリアB9 e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.4.22 「日産アリア」のマイナーチェンジモデルが登場。ご覧のとおりフロントマスクが変わったほか、インフォテインメントシステムも刷新。さらに駆動用電池の温度管理システムが強化されるなど、見どころは盛りだくさんだ。400km余りをドライブした印象を報告する。
-
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.20 本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは?
-
NEW
ディフェンダー110オクタP635(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.29試乗記「ディフェンダー」シリーズの旗艦「オクタ」が2026年モデルへとアップデート。メカニズム面での変更はごくわずかのようだが、その速さと快適さは相変わらず圧倒的で、それはオンロードでもオフロードでも変わらない。300km余りをドライブした印象をリポートする。 -
NEW
第110回:新型BMW i3(前編) ―BEV版「3シリーズ」のデザインはなぜ「ノイエクラッセ」から変節したのか?―
2026.4.29カーデザイン曼荼羅いよいよ登場した新型「BMW i3」。スポーツセダンのベンチマーク「3シリーズ」がついに電気自動車となったわけだが、そのデザインにはどんな見どころがあるのか? ショーカー「ビジョン ノイエクラッセ」から様変わりした理由とは? カーデザインの識者と考えた。 -
NEW
「シビック タイプR」は入手困難 北米生産の「インテグラ タイプS」はその需要を満たせるか?
2026.4.29デイリーコラムホンダが北米生産の「アキュラ・インテグラ タイプS」の国内導入を発表した。エンジンなどのスペックから、それが「シビック タイプR」にほど近いクルマであることがうかがえる。果たしてタイプSは入手困難なタイプRの代替になるのだろうか。 -
クルマの開発で「コストをかけるところ」と「割り切るところ」はどのように決まるのか?
2026.4.28あの多田哲哉のクルマQ&A車両開発において、予算配分は「顧客に最も満足してもらえるクルマ」をつくるための最重要事項である。では、それはメーカー内で、どんなプロセスで決まるのか? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
ケータハム・スーパーセブン2000(FR/5MT)【試乗記】
2026.4.28試乗記往年のスポーツカーの姿を今日に受け継ぐケータハム。そのラインナップのなかでも、スパルタンな走りとクラシックな趣を同時に楽しめるのが「スーパーセブン2000」だ。ほかでは味わえない、このクルマならではの体験と走りの楽しさを報告する。 -
第334回:親でもここまではしてくれまい
2026.4.27カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。先日試乗した「トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ」はすごかった。MTと縦引きパーキングブレーキの組み合わせを用意してくれるトヨタは、カーマニアにとってもはや神である。





























