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第21回:さながら「日野スーパー羽村」?イタリアは地名ネーミングのパラダイス!

2007.12.15 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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第21回:さながら「日野スーパー羽村」?イタリアは地名ネーミングのパラダイス!

フェラーリご当地3連発

フェラーリは1990年代後半から今日まで、その故郷にちなんだネーミングを連発してきた。はじまりは、1996年の「550マラネッロ」だった。マラネッロとは、言わずと知れたフェラーリの現本社所在地である。
続く1999年には「360モデナ」が誕生した。モデナはマラネッロから18km離れたエンツォ・フェラーリの出身地である。また、県の行政区分でいって、マラネッロが属すのがモデナ県だ。

2006年には有名なテストコースの所在地にちなんだ「599GTBフィオラーノ」が登場した(日本市場では商標登録の関係上、フィオラーノの名前は使われていない)。

シエナにミラノにトスカーナ

イタリア各地の地名をクルマに使用しているのは、なにもフェラーリだけではない。
フィアットがブラジル、中国など世界各地で生産するワールドカーには、ボクが住む街の名を冠した「シエナ」というモデルがある。ちなみに、兄弟車はシエナの伝統的競馬の呼び名から頂戴した「パリオ」だ。

歴史を紐解いてみると、もっと例がある。
フィアットは1974年に3ボックスのファミリーカー「131」を発表した際、「ミラフィオーリ」をサブネームとして使っている。泣くも黙るフィアットの本社工場の名だ。ハイグレード版として「スーパーミラフィオーリ」というモデルも存在した。

アルファ・ロメオは1990年代初頭、「33」の特別仕様に「ミラノ」や「イモラ」といった名前をつけた。
イノチェンティは90年代後半「エルバ」の名前を使っている。ナポレオン流刑の地として有名な、トスカーナの島である。クルマ自体は「ウーノ」をベースにしたブラジル・フィアット製のワゴンで、残念ながらイノチェンティ史の最後を飾るクルマとなってしまった。

「フェラーリ599GTBフィオラーノ」
「フェラーリ599GTBフィオラーノ」 拡大
フィアットのワールドカー「シエナ」。
フィアットのワールドカー「シエナ」。 拡大
「フィアット131ミラフィオーリ」
70年代イタリア工業デザインの粋を感じる。
「フィアット131ミラフィオーリ」
70年代イタリア工業デザインの粋を感じる。 拡大

南部がNGの理由

このような車名には、会社の発祥地や所在地にちなんだ「ご当地もの」もあるが、そうでなくても使われる理由には、やはりこの国自体が持つお洒落・快活なイメージがあろう。
それを如実に表しているのが、外国車につけられたイタリア地名である。

プジョーは1996年、コンセプトカーに「トスカーナ」という名を授けている。イタリア中部の丘をイメージさせる草色のボディに、シエナの土の色からヒントを得た茶色の内装が施されていた。
2005年には、シトロエンのエントリーモデル「C1」に、ビーチリゾートの名にちなんだ「リッチョーネ」が、イタリア限定特別仕様として追加された。

ふたたび、歴史を紐解いてアメリカ系メーカーにまで目を向けると、シボレーには「モンツァ」が、フォードには「カプリ」というモデルが存在した。
ただし、闇雲にイタリアっぽい名前を付ければよいというものでもなさそうだ。総じて南部の地名は、あまり使われないことに気づく。

たとえ知名度が高くても「ナポリ」や「シチリア」といった地名からは、欧米人はマフィアをはじめとする犯罪組織の暗い影を感じるようだ。それは、俳優ロバート・デニーロがイタリア人を祖先に持ちながらも、イタリアの自治体からの接待を断ることからもうかがえる。

だから車名の最南端は、「フォード・カプリ」である。それもカプリ島は南部ではちょっと特殊なセレブリティのリゾートである。恐らく当時の社主ヘンリー・フォード2世が大のイタリア好きであったことと、関係がないとはいえないだろう。
それ以南の、特定の地名を冠したクルマは、量産車では見当たらない。

「フィアット131スーパーミラフィオーリ」
「フィアット131スーパーミラフィオーリ」 拡大
「イモラ」や「ミラノ」仕様があったアルファ33(写真は4駆のペルマネント・クアトロ仕様)。
「イモラ」や「ミラノ」仕様があったアルファ33(写真は4駆のペルマネント・クアトロ仕様)。 拡大
「イノチェンティ・エルバ」
筆者がホントにエルバ島で発見したもの。
「イノチェンティ・エルバ」
筆者がホントにエルバ島で発見したもの。 拡大

町起こしにいかが?

それにしてもイタリア語は、何げない名前でも良い響きに聴こえる。それも、ネーミングにたびたび使われてきた所以であろう。
たとえばジャンカルロ・ブロージやアンナマリア・ガッザーリといった具合である。おっと、店がどこにあるか、銀座や『NAVI』のファションページを探してはいけない。単にウチの近所のおじさんとおばさんの名前を列記しただけである。

考えてみれば、前述のとおり「リッチョーネ」は海岸の名前、「ミラフィオーリ」は工場の名前である。
そこから思えば、「日産・湘南海岸」とか「トヨタ高岡」「日野スーパー羽村」といったクルマがあるようなものといってよい。

町起こしに躍起になっているご時勢、自動車メーカーは自治体とこんなコラボレーションの特別仕様を企画してみてはいかがだろう? 日本で売れるかどうかの保証はしかねる。でも輸出仕様なら、前回の「マツダGINZA」同様そこそこイケるかもしれない。

(文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真=Ferrari/FIAT、Citroen、大矢アキオ)

「プジョー406トスカーナ」
「プジョー406トスカーナ」 拡大
「シトロエンC1リッチョーネ」
「シトロエンC1リッチョーネ」 拡大
リッチョーネの内装。若者に人気の海岸にちなんだだけにポッブだ。
リッチョーネの内装。若者に人気の海岸にちなんだだけにポッブだ。 拡大
「ric C1 one」と綴る。往年のアサヒビールのラベルを想像したのは筆者だけか。
「ric C1 one」と綴る。往年のアサヒビールのラベルを想像したのは筆者だけか。
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大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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