トヨタ・カローラルミオン1.8S“AEROTOURER”(FF/CVT)/15G(FF/CVT)【試乗記】
「カローラ」を名乗るなら 2007.11.21 試乗記 トヨタ・カローラルミオン1.8S“AEROTOURER”(FF/CVT)/15G(FF/CVT) ……259万5600円/222万1000円四角い箱形デザインを特徴としたトヨタの新型「カローラ・ルミオン」。北米では「xB」として販売されるカローラシリーズのニューフェイスに試乗した。
これもカローラ?
筆者が物心ついたころの「トヨタ・カローラ」は、いわゆる30系と言われるモデル。当時のラインナップは2/4ドアのセダン、クーペ、ハードトップ、そして3ドアのリフトバックというものだった。なかでもあの頃惹かれたのがリフトバック。大きなリアゲートを開け遊び道具を積み込み走っている明るい色のリフトバックは、今風に言えばライフスタイル志向の洒落たクルマだったのだ。
あれからざっと30年。セダン=「アクシオ」、ワゴン=「フィールダー」の2つのラインナップとなっていたカローラに加わった新しい仲間が、この「ルミオン」である。一見すると「これがカローラ?」というスタイルだが、それもそのはず。この「カローラ・ルミオン」はアメリカでは先代「bB」(北米名:xB)の後継車として販売されている。
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四角い=広い
そんなシカクいスタイルだけに、たっぷりとしたサイズのシートに腰を下ろすと、今どきのクルマとしては立ったAピラーの向こうに、真っ直ぐ前方に伸びたボンネットフードがしっかり見えて、雰囲気はなかなか新鮮だ。ワイド感が強調されたインストルメンツパネルの造形だけでなく、1760mmのワイドな全幅、やはり垂直近く立ち上がったサイドウインドウなどの効果で、前席周辺の空間には余裕が感じられる。
その全幅に対して全長は4210mmに過ぎないが、室内前後長は十分で、後席スペースも想像以上に大きい。前後席間の距離は920mmもあるため膝の周辺もゆったり。背もたれも大きく肩までしっかり支えてくれるため、落ち着いて座っていられる。
ラゲッジスペースは5名乗車時で310リッター。さほど広くはないがフロアはフラットで、分割可倒式の後席を倒せば、大型液晶テレビも軽く飲み込めそうな空間が生まれる。トノカバーは標準では用意されず、ディーラー用品での設定となる。プライバシーガラスが装備されるため、大抵はそれで納得してもらえるようだ。
選ぶなら1.8
走りっぷりは、それほど強い印象をもたらすものではない。動力性能に余裕があるのは当然1.8リッター。1.5リッターは車重に対して非力な印象で、常にアクセル開度が大きめになってしまう。選ぶなら、ここは1.8。おそらく実燃費も差がない、もしくは逆転できるに違いない。
フットワークは、比較的ソフトなサスペンション設定にも関わらず、ワイドトレッドの恩恵でコーナリング中の安定感が高い。しかし、その柔らかさの割に大きなギャップでは突き上げも小さくなく、特に後席の乗り心地は今ひとつだ。
細かい点を拾えばそういうことになるが、印象が薄いのは更に、希薄なステアリングフィールや、アクセル操作に対するダイレクト感を欠くCVTの味付けといったことから、要するにクルマを走らせる歓びをあまり感じさせてくれないことにも原因がありそうだ。別にスポーティであれと言うわけではない。しかし、せっかく電車ではなくクルマに乗ろうというのだから、ドライバーにも他の乗員にも、もう少し「クルマって楽しいな」と思わせてくれてもいいのではないか。
若いユーザーはまず見た目。そして道具としての使い勝手の良さに愛着を感じてくれれば……というような話をチーフエンジニア氏はしてくれたのだが、それだけではファッション家電なんかと一緒だ。クルマは道具だとしても走らせる道具である。そこに歓び無くして、どうして積極的に思い入れをもって選ぼうと思うだろうか。
もっと夢をみせてほしい
ぼやけた印象になってしまうのは、幅広いレンジのユーザーを相手にしようとしているからでもあるのかもしれない。いわゆるクルマ離れをしている若いユーザーにも買ってほしいし、40歳代以上の、大きなクルマの要らなくなったダウンサイジング志向のユーザーもトヨタは相手にしたいと考えている。
しかし、それは逆にターゲットが絞り切れていないとも言える。しかも最初に書いた通り、これはカローラでありながら同時にアメリカで「サイオンxB」としても売られるのだ。
誰からも愛されたい……というほど強い気持ちでもなく、誰からも嫌われずそこそこ好かれたい。ルミオンに限らず今のカローラにはそんな雰囲気がある。しかし、大きな不満はないが物凄く惹かれるところもないというのでは、クルマに対する目の肥えたダウンサイジング層に選んでもらうのは簡単じゃないし、若いユーザーを虜にするのも難しいだろう。百歩譲ってセダンはそれで良いとしても、ルミオンのようなモデルはもっと積極的な提案を以て、クルマに夢を抱かせてくれる存在であってほしい。
筆者が子供だった頃のカローラは、そんなクルマだったはず。その名にはまだまだ期待したいのである。
(文=島下泰久/写真=峰昌宏(M)、高橋信宏(T))

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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