マツダ・デミオ 13S(FF/4AT)【ブリーフテスト】
マツダ・デミオ 13S(FF/4AT) 2007.09.06 試乗記 ……155万1500円総合評価……★★★
フルモデルチェンジで見た目も中身も大きく変更された新型「デミオ」。先代比で約100kgのダイエットにも成功した。1.3リッターのスポーティモデルでその走りを試す。
「デミオでなければ」
「NEW TARGET」と高らかに謳い、きわめて存在感の強いスタイリッシュな姿で登場した新型「デミオ」。過去2世代から方向性を大きく変え、新たなコンセプトで生み出された。ざっくり言って、先代まではコンパクトなサイズで最大限のスペースユーティリティを実現したミニ「MPV」だったのに対して、新型は直球ど真ん中のコンパクトカーになった。これは、ひとえにヨーロッパでの販売を加速させるため。彼の地では、下手すれば商用車の仲間に入れられてしまった先代のコンセプトは、切り捨てなければならなかったのだ。
もちろん、単に形態を変えただけではない。ボディは全高だけでなく全長も縮小するという最近では本当に珍しいダウンサイジングを敢行。合わせてダイエットにも励み、車重は先代より100kg近く軽くなっており、走り、そして燃費の向上にしっかり反映されている。ディテールにはやり過ぎの感があるも、鮮烈なスタイリングのコンパクトカーとして、十分に存在感のある仕上がりと言えるだろう。
しかし「新型になって狭くなった」というのでは、先代ユーザーは納得しないはず。それが冒頭の「NEW TARGET」というコピーに繋がるわけだが、今年はこのクラスのベンチマーク「ホンダ・フィット」も一新される。今度こそ真っ正面からの対決となるその戦いに於いても、伝えられる好調ぶりを維持するためには、スタイリング以外にも「デミオでなければ」と思わせる強烈な魅力が欲しいのも事実だ。
ライバルとはひと味違った使い勝手やキャンバストップの設定、明るい雰囲気の内装色等々、先代にはそういう要素がいくつもあった。それと同じでなくても、何かそういう秀でた部分を身につけてくれれば、積極的に選びたくなる1台としての魅力がより高まるはずである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年にデビューしたマツダのコンパクトカー「デミオ」。2007年7月5日にフルモデルチェンジされ、3代目に生まれ変わった。世界戦略車として期待される新型は、先代から見た目も中身も大きく変わった。
スリーサイズは、全長×全幅×全高=3885×1695×1475mm。先代に比べて、40mm短く、15mm幅広く、55mm低くなった。ホイールベースは2490mmで変わらない。荷室は、底面674×1000mmで250リッターの容量。先代は640×940mmの280リッターゆえ、約1割の譲歩となった。
ボディの随所に軽量化が施され、各グレードは先代比で約100kg軽くなっている。パワーユニットは変わらず1.3リッターと1.5リッターの2本立てで、すべてDOHC。かつて「ユーノス800」で名を知られた「ミラーサイクルエンジン」が一部グレードに採用される。
組み合わされるトランスミッションは、4段ATと5段MTに加えて、軽自動車以外でマツダ初となるCVTを採用。軽量ボディと合わせて、23km/リッター(10・15モード)の燃費を実現した。FFのほか、4ATには4WDも用意される。
(グレード概要)
1.3リッターは、ベースモデルの「13C」、ミラーサイクルエンジン搭載の「13C-V」、スポーティ仕様の「13S」の3グレード。
テスト車「13S」は、ベースグレードの装備に加え、フロントエアロバンパーやサイドアンダースポイラー、リアルーフスポイラー、タコメーターなどが標準装備される。また、ベースに較べ1インチアップした185/55R15タイヤを履く。トランスミッションは、4段ATでFFのほか4WDも設定される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
曲線と曲面で構成されたデザインは意欲的ではあるが、ややオモチャっぽくこぢんまりとした印象でもある。正直言って「良いものを買ったなぁ」と、しみじみ思えるような空間ではないと思う。試乗車のようにオプションのカーナビゲーションシステムを装着すると、センターパネルのデザインがいかにも取って付けたようになってしまうのも、そんな印象を助長している。
プラスチックの質感が高くないのも雰囲気にはマイナス。このセグメントでは別に高級志向に走らなくても良いが、たとえばフィアット各車のように安くても安っぽく見せないデザインというのがあるはず。先代にあった、このクラスでは珍しいベージュ系などの室内色が落とされ、黒地にアルミ風塗装パネルのみという、今や新鮮味のかけらもないコーディネートしか選べなくなったのも残念だ。
一方、機能や装備についてはひと通り押さえられている。収納は充実しているし、円形の空調ダクトの使い勝手も良い。何とETCを天井のサンバイザー裏に埋め込んだのも良いアイディア。ただし普段ひんぱんに目が向くところではないとは言え、その配線が見えてしまっているのは、やはりどうかと思う。
(前席)……★★★★
全高が低くなり、それに伴って着座位置も下がっているのだが、それだけに取り回し性には大いに配慮されたようで前方や側方の視界は良好。低いベルトラインに大きなガラス、そしてやはり十分なサイズと視野角が確保されたドアミラーのおかげだ。そもそもボディサイズが小さいこともあるが、この良い意味での“小ささ感”は、狭い街中でも臆せずどこにでも入っていけて、とても気分が良い。
サイズはそれなりとは言え、シート自体の出来は悪くない。それほど窮屈感なく、それでいてコーナリング時にも心地良く身体を支えてくれる。ヘッドレストも余裕あるサイズで、万一の衝突時などにも頼れそう。硬めのクッションも、乗れば乗るほど疲れにくいとわかるはずだ。
(後席)……★★
室内の前後長が十分に確保されているらしく、膝まわりには余裕があり、窮屈な姿勢を強いられることはない。ただし、上に行くに従ってすぼまったルーフ形状のせいで、左右席では側頭部がルーフに触れそうになる。座面も前後長に余裕がなく、しかも見た目の広さ感を演出するためか前端がラウンドした形状とされているため、まさしくお尻の座りが悪い。前席ヘッドレストが大きいため、というより、そもそもは着座位置が低いせいだろうが、前方視界が悪いのは、このスタイリングからすれば仕方がないところだろう。
後席中央席にはヘッドレストも3点式シートベルトも相変わらず備わらない。コンパクトカーでも言い訳は無用。開発者の方は自分の一番大切な人をここに座らせられるのだろうか?
(荷室)……★★★★
ボディサイズ、そして後席の足元の広さを考えれば、250リッターというラゲッジスペースの容量は健闘している方だろう。奥行きもあるし幅も1000mmと十分に確保されている。
フロアがバンパーレベルより低いのは、重い物を積み込む時にちょっと気になるところかもしれないが、それも深さで容量を稼ぐためと考えれば納得できる。もちろん、先代ほどの使いではないのも事実だろうが、ユーティリティワゴンというより日頃のアシになるコンパクトカーとしてデミオを選んできた大半のユーザーにとっては、おそらくこれだけ積めれば大きな不満は出ないのではないだろうか。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
13Sが搭載するのは、リッター当たり23kmという好燃費を達成したミラーサイクルではなく、ごく普通の1.3リッターユニット。トランスミッションもCVTではなく電子制御4速ATだが、その走りっぷりには特に大きな不満はない。むしろこれで十分と感じた。始終ガーゴー言って決して静かではないのだが、エンジンは低回転域からレスポンスに優れるため、元気に走らせることができる。コンパクトカーなのだから、小さくまとまるよりやっぱりこうでなくては。
高速域でも結構伸びてくれる。これなら高速道路でも、追越し車線に出るのに躊躇する必要はない。燃費を重視してギア比は先代より高められているというが、車重を落としたことでそれが十分に相殺されているのだろう。実は件のミラーサイクルエンジンを積む13C-Vは試せていないのだが、僕がデミオを買うなら少なくともどちらかの1.3リッターにすることは間違いない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
あるいは、こちらは車重が軽減されたことのネガが出ているのか、走りっぷりは始終ヒョコヒョコと落ち着かない印象だ。これは13Sだけでなくスポルトなどでも感じること。新採用の電動パワーステアリングの中立付近が軽過ぎるのかもしれない。高速道路などの目地段差でフロアがブルッと震える感じもあり、全体にちょっと軽々しくなってしまった感は否めない。100kg前後軽量化したとは言っても、それでようやくライバル達と同等になったというだけなのだから、乗り味についてはもっと進化させられるはずである。
しかし、そうしたフィーリングの部分を除けば、走りの実力は決して低くない。ステアリングは先代のように急に切れ込むような違和感がなくなったが、それでも反応が鈍くなったわけではなく、要するに曲がりそうという演出ではなくクルマ全体で気持ち良く曲がってくれる。すくなくとも一般道を走行している限りでは、後輪のグリップ感も上がっていて走りの安心感は増している。つまりシャシーの実力は、明らかにひとつ上のレベルへと向上しているということ。乗り心地にしっとりとした味わいが感じられるようになれば、印象は大きくプラスになるはずだ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2007年8月1日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:1224km
タイヤ:(前)185/55R15 81V(後)同じ(いずれも、TOYO R27)
オプション装備:ドライビングコンフォートパッケージ(2万6250円)/アドバンストキーレスエントリー&スタートシステム&アドバンストキー×2+イモビライザー(4万2000円)/フルオートエアコン+アレルバスター搭載フィルター(3万6750円)/ディスチャージヘッドランプ+フロントフォグランプ(6万8250円)/SRSエアバッグシステム カーテン&フロントサイド(6万8250円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(8)
テスト距離:242.0km
使用燃料:22.13リッター
参考燃費:10.9km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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